今朝のBBCはもっぱら今日23日の国民投票に向けてのレポートになっていた。「本土」のみならず、スコットランド、アイルランド、北アイルランド、そしてウェールズからのレポートもあった。大半が残留に賛成しているスコットランドを除き、他地域は「本土」と似たような状況。いわゆる「南北問題」の様相を呈している。
地域のみならず、本土内でもそれがいえる。去年11月にロンドンに行った折に痛感したことでもある。移民の数が圧倒的に多かった。二十年前にロンドンに旅行した折、中東から移民が多いのに驚いた。もちろん英国が宗主国だったインド系の人はそれまでにすでに多かった。その後、訪れる度にその数が増えているように感じた。地方都市は多少違っていたのかも。直近の11月に驚いたのは、ヨーロッパ内からと思われる人が増えていたこと。キム・ロッシ・ステュワート似イケメンだったホテルのフロントのお兄さんも多分スペイン、もしくはイタリアからの人。英語のなまりが強いので、すぐに分かる。ことほど左様に、カフェなどの従業員も圧倒的多数がいわゆる外国人労働者。医療などの社会保障が他国に比して、格段に手厚い英国。旅行中病気になった折に、私もお世話になったことがある。これがアメリカだと、マイケル・ムア監督の『シッコ』(2007)にあったように、事情はまったく違ってくる。その上イギリスは、EU中でも優等生。経済はドイツに次いで良い。中東からだけでなく、EU他地域からの人の移動が多くなるのも当然かも。
でも、イギリスの労働者の多くは移民を快く思っていない。ここには明らかに階級差が。南北問題だと思う所以。シティで働く人に聞けば、ほぼ全員が残留に賛成と答えるだろう。EU離脱すれば、経済がこけるのは目に見えている。実際、その可能性があるというだけで、世界の株は下がっている。日本株が最も下がっているけど。EUにとどまる限り、移民を一定枠受け入れなくてはならない。となると、すでに彼らに奪われている労働市場がより一層彼らに奪われる。それでなくても平均給与は下がっている労働者にとって、それは深刻な打撃になる。
最近になって離脱派が増えたけれど、それが16日、残留派の労働党下院議員、ジョー・コックスさんの射殺事件以降、逆転。ただ、今のところ再び離脱派が巻き返しているらしい。
アメリカで起きていることと照らし合わせると、強い近似性を感じてしまう。今回の大統領選でのトランプ氏の隆盛。「移民流入を止める」というプロパガンダをぶって、多くの労働者階級の支持を集めている。自身はいわゆるエリートではあるけれど、打ち上げる争点はほとんどがアメリカの白人労働者に訴えるもの。
それにしても、日本はなんとものどか。移民の問題はまるで他人事。格差、格差というけれど、世界の他地域と比べると、それだって「微細」に見える。世界全体で見て、経済が上手く回っているはずの他国、英国であれ、アメリカであれ、ドイツであれ、そこに足を踏み入れると否応なく迫ってくるのは、肌身に感じるのは、それ。
あと数時間で投票が始まる。その結果がどちらに出ても、おそらく英国国内は二つに分断されるだろう。その意味で、今度のこのイベントは一つの分岐点なのかもしれない。英国のみならず、世界の他地域に大きな影響を及ぼすような気がする。