たつみ座長曰く、「現代劇でめちゃくちゃな九州弁をしゃべります」とのことだったので、一体どんなお芝居だろうと興味津々だった。ところが、以前に観たことのあるお芝居だったことに一幕目に気づいた。その折にも可笑しかったのは覚えていたが、今回の方がはるかにバージョンアップしている。若手が力を付けて来たからだと思う。たつみさんの演技も「バカバカしさ度」が二割増しだった。おかげで10分以上も時間オーバー。ミニショーをつぶしての芝居だったのにも拘らずである。たつみさん、「昨日からテンションが変に上がっているんです」。なんて、喜劇のときは毎度のような気がする。
先日の『石松』で保下田の久六を演じたときにも「話を聴いて欲しければ、芸をしろ」ナンて言って、瞳太郎さんに絡むは絡むは、大変だった。「昼の部では『千の風に乗って』だったから、夜では違った曲を使え」というご注文。挙げ句の果てに自分で歌い踊り出す始末。それも曲は「女々しくて」!このときのメークがオモシロ顔で、それにお腹に詰め物(毛布だったそう)をしてで、笑い転げてしまった。主役の石松のダイヤさん、かなり持て余し気味だった。「どちらが主役か分からん」っていう感じ。このときも時間オーバー。
そして本日の『友情断片録』。お父様のお芝居だったそうである。時は明治の初め、薩摩出身の二人の男、本田五郎(たつみ)と桑田義彦(ダイヤ)の「友情」を描いたもの。
立身出世を夢見て上京した親友の義彦が結婚するというので、鹿児島から東京に出て来た五郎。義彦の相手は華族、伊集院家の娘しず(満月)だということで、伊集院家を訪ねる。風体が悪いということで、しずの叔父、松山(宝)から出席を拒まれる。立て板に水でしゃべりまくるたつみさん。博多弁、長崎弁、薩摩ことばをとりまぜての大奮闘。ときおり大阪弁が混じるのがご愛嬌。九州弁がおかしいとつっこむ宝さんに、「鹿児島からここまで来る間に、(色々な方言が)うつってしまった」。気づいた義彦が割って入るが、松山はさんざん悪口雑言を吐き、結局怒った五郎はその場を去る。このときたつみさん、松山役の宝さんに散々絡みます。宝さんも持て余し気味。ダイヤさんもたつみさんの「暴走」を止めようと必死。オカシカッタ。
松山の罠に嵌って、義彦は殴る蹴るという仕打ちを受けた上、結局伊集院家を追い出されてしまう。行き倒れた彼を助けたのは、彼がしずと結婚するということで郷里鹿児島に残して来たよね(小龍)だった。その後、彼女は兄(龍子)を慕って上京、芸者になり今では米若を名乗っている。太鼓持ちの愛さんと小龍さんのかけあいもオカシカッタ。
で、米若の家で暮らし始めた義彦。そこに五郎が訪ねて来て、しずが亡くなったことを告げる。伊集院家の財産を自分のものにするため松山が毒殺したのだろうと、彼の憶測を語る。米若が奥から出て来る。五郎と米若も旧知の間柄だった。再会を喜び合う三人。牛鍋で祝おうということになる。言い出したのは五郎だが、その本人が文無し。結局は米若がお金を五郎に渡し、それで牛肉を買ってくるようにという。ここの阿吽の息もぴったりだった。米若も酒を買って来ると言って出かける。
米若の兄、大工の辰がやってきて、義彦にけじめをつけろと迫る。彼は酔っぱらっていて、いうだけのことをいうと、その場に寝てしまう。それを聴いた義彦はなにやら巻紙の書き置き(長々と何メートルにも及ぶもの)を兄の枕元に残し、短刀を手に飛び出して行く。
帰ってきた米若。その書き置きを読み、義彦のあとを追う。目を醒した辰、「けじめをつけろといったのは、結婚しろということだったのに」と慌てる。これまた大変と二人のあとを追う。そこへ戻ってきたのは五郎。ただし、肉の包みは微小(まるでミニチュア。笑わせます)。だれもいないのを不思議がりながらも、置いてあった食事を食べる。お櫃からご飯をよそうのだが、この場面が芝居最大の見せ場?6、7膳もおかわりをし、その合間にナガーイ手紙を端から読んで行く。「ご飯を食べる」、「手紙を読む」をくり返す一人芝居。「決闘高田馬場」の堀部安兵衛を思わせます。演じる方はなかなか大変。でもお客さん、大喜び。たつみさんが口上で、「オヤジがやっていた通りやっています」と仰っていた。
最後は松山とその一味を義彦、五郎、辰、米若で討って、めでたし、めでたしとなる。
このところ、口上はたつみさんのことが多いようである。ダイヤさんが座長になってからは、交替ということだったようなのに、この呉服座ではたつみさん率が高いような。この口上がこれまた「ケッサク」で、やっぱりこれも楽しみのひとつ。上方のサービス精神満載で、聴かなきゃ損である。
以下舞踊ショーの良かったもの。というか、デジカメの写真がマシだったもの。下手なので載せるのは失礼になるかと憚られるのだが、あえて。
観客は比較的若い女性が多い。平均年齢は他の劇団より低めだと思う。華やいだ雰囲気。