yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『任侠甲州鴉』、伍代孝雄劇団 10月26日昼の部

オリジナル脚本は悲劇だったのかもしれないが、今日のものは悲劇ではないように演出されていた。ホッとした。ハッピーエンディングのみを是としている訳ではないが、やみくもに救いのない「悲劇」にもってゆく九州系劇団の「方針」にはうんざりなので、このように「軽め」のお芝居は大歓迎である。喜劇の方が悲劇をやるよりはるかに役者の力量が問われる。

ヤクザ同輩の伝次(信之)の諫言で、女房、お峰(諒)が幼なじみの伝法院仁吉(孝雄)と間男したと勘違いした橋場の弥助(沢田ひろし)、仁吉を待ち伏せして斬りつける。しかし、逆に弥助は仁吉は弥助に斬られてしまう。仁吉は峰打で避けたつもりだったのだが、はずみで斬ってしまったのだ。もともとこういう仕儀になったのも、伝次の悪巧みに乗ってしまった酒癖の悪い弥助の身から出た錆。伝次はお峰を自分のものにするつもりだったのだ。伝次は『オセロ―』のイアーゴーを思わせる。ただし、かなり間抜けなイアーゴーである。

評定で「所払い」になった仁吉は江戸を離れる。伝次とその仲間、それにお峰は、仁吉を追う仇討ちの旅に出て来ていて、今はさる旅籠に逗留中である。同宿を良いことに、お峰に言い寄る伝次。お峰にこっぴどく撥ね付けられる。このシーン、諒さんと信之さんのがっぷり四つに組んだ「相撲」が見られました。二回戦とも諒さんの勝ち。「ひとりで生きてる女をなめんじゃないよ」と、威勢の良い啖呵も聞けました。

すごすごと引き下がった伝次だが、耳寄りな話を聞き込んでくる。それは近くの旅籠に仁吉が逗留しているというものだった。なんでも昼間は寝て、夜に旅をしているのだという。伝次と仲間はその夜、峠で仁吉を待ち伏せることにする。その話を聴いたお峰。旅籠の女中に手紙を託す。仁吉宛てのもので、伝次達の計画を知らせる内容だった。文の最後には崇徳院の有名な歌、「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢わむとぞ思ふ」が添えられていた。

女中が届けたお峰の文を読んだ仁吉。お峰の思いを知る。峠で仁吉を待ち受けていた伝次とその仲間だが、あっけなく仁吉に斬られてしまう。そこへ駆けつけて来たお峰。二人は互いの思いを初めて確認しあう。

芝居終了後の口上挨拶。伍代座長は「あの二人はあの後どうなるんでしょうね。はじめは上手く行っても、そのうち喧嘩別れしてしまうんじゃないでしょうか」と、例によって例のあの「お姉さま口調」での言及があった。芝居の後日談を話題にするのを聞くのは初めてだった。たしかに、どうなったのか興味があるところ。座長の私生活が被さってくるから特にそうだったのでは。

<舞踊ショー>
第一部
諒  立ち  「海ぶし」これを単独でしかも女性が踊るのをみたのは初めて。そのアンドロジナス的な設定が魅力的だった。

孝雄 立ち  「木更津くずし」 切られ与三の頬被りが粋だった。踊り自体も格式の高さを窺わせるものだった。

孝雄 立ち  「暖簾」 これもしみじみとよかった。これで辞められるのは残念。彼にしか表現できない世界があることを、よく分からせてくれた。

第三部
孝雄 立ち  「男吉良常」

沢田ひろし 女形 「お吉」 物語が浮かんでくる臨場感。

孝雄 歌  「瞼の母」 こちらもまけずに情景が浮かんで来た。

瑞穂 立ち  「りんご追分」 めずらしく全編三味線バージョン。

孝雄 女形  「雪深深」 白い着物がステキだった。