yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「SWITCHインタビュー 達人たち 藤原竜也 長谷川穂積 」NHK Eテレ10月5日

昨晩、たまたまこの番組に行きあわせた。藤原竜也のファンという訳でもないので、みるつもりはなかったのだけど、「藤原が、彼がもっとも会いたい憧れの人に会いに、神戸を訪れた」というフレーズが気になって、そのまま観てしまった。神戸のボクシングジムに入るところで、とても緊張しているのが伝わってきた。相手というのが「元WBC世界バンタム級・フェザー級の2階級制覇王者」の長谷川穂積だった。もっとも、こういう方面に疎い私はその名を初めて聞いた。そういえば、通勤時の車中で前の男性の読んでいたスポーツ紙でその名前をみたような記憶もある。藤原が長谷川を「もっとも会いたい憧れの人」に選んだのは、幼い頃プロボクサーになりたかったからだという。たしかに、長谷川穂積はとても魅力的な人だった。

最初はおずおずとジムに入った藤原、いっときもすると、二人の距離が急速に近づいているのがよく分かった。藤原は実際に練習にも参加させてもらい、ご満悦だったけど、その厳しさも肌身で感じたようだった。長谷川が淡々と説明するサマに「世界王者」になった人の器の大きさを感じた。ボクサーと役者の共通点を確認し合っている二人のやりとりから、彼らがとてもナイーブかつ繊細な人たちだというのが伝わってきた。そして「勝負」にかける男の気迫も。

藤原への「返礼」として、今度は長谷川が藤原の『ムサシ』(井上ひさし原作)の舞台稽古を見にやってきた。途中から蜷川も参加して、指導にあたっていた。そういう稽古、あるいは舞台裏を初めてみたという長谷川、いろいろと質問するのだが、それがとても的を射ていて、勝負に命をかける人たちの共通点が浮き彫りになった。サスガ!その業界でトップ、「一流」とは、真剣に今を生きている人たちなんだと、改めて納得。

蜷川の演出には巷間でいわれているような高評価がホントにそうかどうか懐疑的で、いままであまり食指は動かなかったのだけど、藤原竜也が主演ということなら観たいと思った。そういえば、彼を先日の歌舞伎座の『陰陽師』公演で見かけた。私は二階桟敷席だったのだが、そのちょうど目の前にお連れの女性と座っていた。私の隣席の女性が教えてくれた。彼女は蜷川作品を多く観てきたということで、それがすぐに藤原だと分かったそうである。「勘九郎に招待されたんじゃないかしら」と仰っていた。藤原と勘九郎は親しいそうである。

藤原竜也の映画作品でみたことのあるのはたった一本、深作欣仁監督『バトル・ロワイヤル』(2000)のみ。映画自体が強烈だったので、個別俳優はタケシ以外はよく覚えていない。あの作品は海外でも有名らしく、留学生(男子)が口頭発表中にスクリーニングしたのだが、女子学生がとても厭がった。たしかに女性向きではないかもしれない。

華奢でまるで女の子のような風貌だけど、藤原の中には嬉々としてこういうバイオレンスに満ち満ちた作品を好んで演じる性向があるのかもしれない。だから長谷川穂積に憧れを抱いたのだろう。彼は自分のことを「ドロドロしたものに満ちた」人間だと分析していた。長谷川が自身もそうだと同調していた。そういうドロドロの中でとことんもがき苦しみながら自身と闘う、そういう人にしか到達できない域に、限りなくこの二人が手を差し伸べているのだと思う。