yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「工芸・温故知新!」日曜美術館 6月3日放送

かってあれほど楽しみにしていた「日曜美術館」を最近は放送時刻をめがけて観るということがなくなった。今日はたまたま食事をしているときに放映されていた番組ということでみたのだ。そして衝撃を受けた。

新しい潮流が工芸に生まれていることの紹介番組だった。以前から日本の日常使いの道具が機能性と美しさを兼ね備えているということは知っていたのだが、それが「芸術作品」として広く認知されてきていることを、知らなかったから。

以下がサイトの本日のプログラムの内容紹介である。

工芸・温故知新!

秋元雄史さん(金沢21世紀美術館長)
井浦 新さん(俳優)
*井浦さんは葉山有樹さんの工房を訪ねてリポート

今、これまでに見た事のないような工芸作品が生まれている。
外国人の注文に応えて作られた蒔絵の聖杯。カラフルな色とユニークな形の美濃の茶碗(わん)。極細密で3Dアニメーションを思わせる有田焼。一見すると、奇を衒(てら)うようなインパクト。しかし作家たちはみな、古典に範を取り真摯に工芸と向き合っている。

そんな工芸の新しい動きをとらえ、金沢21世紀美術館で展覧会が開かれている。キュレーターをつとめる館長の秋元雄史さんは、2007年に「工芸の町・金沢」の美術館館長に就任して以来、作家たちの新しい動きを実感してきた。
「作家が作りたいものを作る」のではなく、使い手の注文を受けてやりとりしながら制作する作家がいる。
伝統的な技法をそのまま受け継ぐのではなく、「そもそも、自分がやっている技法はどういうものなのか」を一から知った上で制作に当たろうとする人も。
「作家の多くは、一旦日本文化が壊れたあとで育った世代。外国人が見るような自由で新鮮な目で工芸を見ているのではないか」(秋元さん)

番組では、その展覧会「工芸未来派」に選ばれた3人の作家の創作の現場を取材。
漆芸家・北村辰夫(石川・輪島)が復活させた、江戸時代のような分業制度。
陶芸家・桑田卓郎(岐阜・土岐)が大胆に翻案する、茶陶の世界。
陶芸家・葉山有樹(佐賀・武雄)の超絶技巧の有田焼を支える、古今東西の“文様”に関する研究。
工芸の最前線で続けられている挑戦に迫る。

私が一番魅せられたのは葉山有樹さんの「四神・白虎鉢」という大皿だった。なんとも形容し難い文様である。細やかでいるようで大胆、大胆でいるようで繊細の極みといった両極端をみごとに具現化している。それだけで文字通り一つのミクロコスモスを顕すのに成功しているのだ。なんという挑戦!そしてなんという冒険心!葉山さんのお皿をサイトから転載させていただく。


俳優の井浦さん(私はこの人をまったく知らなかったのだが)が陶芸家の葉山さんの工房を訪ね、そこで葉山さんの制作現場に立ち会い、彼が生み出す「芸術作品」の真髄に迫るという趣向だった。葉山さんの制作風景もさることながら、彼がどういうことにインスパイアされて、それを自身の作品に反映させるのかということがよく分かった。とりわけ、彼がそもそも陶芸作品を芸術として自らの内面の表現として意識したのが、陶器に描かれた絵、紋様に必ず由緒があることを知ったからだという。ストーリーが陶器に描かれた模様にあることを知るのに、彼はありとあらゆる資料を集め、独学で勉強したようである。

なによりもその挑戦に脱帽だけれど、才能がなくてはその挑戦も独り相撲に終わったことだろう。彼のゆたかな才能が陶器に描かれた絵を通すことで開花したのだ。それが分って感動した。

機会があれば、ぜひ作品の実物をみてみたい。「買う」と言いたいところだが、私の懐具合ではちょっと無理な気がする。