これには驚いた。私の知る限りこういう「禁止令」は初めてである。例のロンドンに端を発し英国全土に広がった若者による暴動と同じような事態になるのを危惧しての処置かもしれない。記事もそれを示唆している。
フィラデルフィア市では最近、若者グループがソーシャルメディアなどを使って特定の場所に不意に集まって住民を襲う事件が頻発し、対応に苦慮したナッター市長が外出禁止令を打ち出していた。
1日で未成年者50人が拘束されたという。
センターシティとよばれるフィラデルフィアのダウンタウン、夜は未成年者とおぼしき子供たちがうろうろしているのが常態だったので、市民自体が驚いているかもしれない。ペンシルベニア大学のあるユニバーシティシティは彼らがたむろする遊興施設がない分、未成年者がかたまってなにかすることはありそうにもなかったけど。でも何年かに一回は殺人事件がおきたりしていた。でもそれはこういう「暴動」とは質のちがった犯罪である。
ペンのキャンパスはダウンタウンの西、徒歩でも15分程度の近いところにあり、もともとあった居住区(ほとんどが黒人の住む)をどんどん大学が買い取っていた。さらに学生、教員を含む大学関係者が家を買えるよう低金利ローンを提供していた。だからもとの住人たちは西へ西へと追いやられる格好になっていた。もちろん不満も高まっていたはずで、大学も委員会を作って住人とミーティングをもったり、共同で都市計画を練ったりしてはいた。
アメリカの大学はどこでもそうだろうけど、キャンパスポリスが常駐、キャンパス内を自転車でパトロールしていたし、特に夜間は事件がおこらないよう見回りが強化されていた。夕方6時ころから夜中2時ごろまで「ペンシャトル」というバンがキャンパス内、周辺の停留所から行く先に合わせて学生を拾い、それぞれの目的地まで(文字通り玄関まで)送り届けてくれた。「ペンバス」というバスサービスもあり、ダウンタウン行き、キャンパスの北方面行き、西方面行きと3種類あって、これは決まった停留所で止まるのだが、学生は夜遅くなっても帰りの交通の心配をする必要がなかった。だから私自身、危険を肌身で感じたことがない。
ダウンタウンでも危険を感じたことはなく、アメリカの他の大都市、例えばLAやらサンフランシスコ、シカゴといった街の方がはるかに肌に感じる恐ろしさがあった。唯一の例外がフィラデルフィアの北の地域にあるテンプル大学のキャンパスだった。研究会があって行ったのだが、キャンパス内にも学生以外のティーンエイジャーが入ってきていてちょっとひやっとしたことがある。キャンパスを一歩出れば、そこは麻薬売買の地として全米でもノトリアスな場所だった。でも最近はテンプル大もペンと同じように大学が地域を買い取る計画を促進しているようである。ずいぶんと安全になったと聞いた。
今月30日からフィラデルフィアである。でも心配はまったくしていない。