yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

梅若玄祥師の『一角仙人』in「山本能楽堂90周年記念特別能楽公演」@山本能楽堂6月11日

人間国宝梅若玄祥師。来年には梅若実襲名予定とネットニュースで知ったばかり。彼と山本章弘さんとはかなり親しいとお見受けしている。山本能楽堂での公演でシテをされることもよくあるよう。「能楽堂90周年記念公演」ということで、玄祥さんが招かれたのだろう。この日は公演後に「懇親会」と称して乱囃子「舎利」が予定されていて、玄祥さんはそこでは小鼓を担当されるとプログラムにあった。他のアポがあったので見ることが叶わず、残念。でもまた近いうちに機会があることを念じて。普段の担当とは違った役になったり、楽器を使って演じるのが「乱」の趣向。めっぽう面白かったに違いない。どなたかレポして下さらないだろうか。

さて本題の『一角仙人』。途中で、「なんだ、歌舞伎の『鳴神』じゃない!」と気づいた。予習していなかったので。いただいたパンフにもその旨の記載が。迂闊。『鳴神』にもドギマギする「色っぽい」場面があるけれど、なんと能でもその趣向は同じ。演出は違っていますけどね。これ、いかにもお茶目な玄祥さん!おめでたい席にあえてこの演目ですからね。舞台に華やぎが増していた。

さて本題へ。今回は大槻能楽堂能楽事典より、『一角仙人』のあらすじを引用させていただく。

■あらすじ
鹿の胎内より生まれ、一本の角を持つ仙人は、一角仙人と呼ばれた。勢力を争いの末、龍神たちを岩屋へ封じ込めてしまった。それにより天竺波羅奈国では雨が降らなくなったため、困った帝は策を練り、仙人の神通力を奪おうと、美しい旋陀夫人を仙人の元へやった。

道に迷った旅人として仙人の元へやってきた官人と旋陀夫人は、まんまと仙人に酒を飲ませ、酔いつぶして神通力を奪う。すると岩屋が鳴動し、封じ込められていた龍神たちが飛び出した。驚いて目を覚ました一角仙人は、龍神を制しようとするが、叶わず倒れ伏す。龍神は嵐を起こし、その中を飛び去って行った。

この日の演者一覧は以下。

シテ(一角仙人) 梅若玄祥

前ツレ(旋陀夫人)山本博
後ツレ(龍神)  山本麗晃  林本大
ワキ(官人)   福王茂十郎
ワキツレ     是川正彦  喜多雅人

大鼓  守家由訓
小鼓  荒木賀光
笛   杉市和
太鼓  上田悟

後見  梅若猶義  赤瀬雅則
地謡  山下麻乃 前田和子 井戸良祐 今村一夫
    今村宮子 羽多野晋 山本章弘 松浦信一郎

まず、大きな布がすっぽりと被せられた作り物が二つも運び込まれた。それぞれに人が入っている(らしい)。舞台上手に設えられた作り物、布を取るとそれは竹で編まれた大きなケージ(?)中には一角の面をつけたシテが。これが仙人の住まう庵になっている。

ワキとツレに請われて姿を現すシテ。訝しく、また怪しんでいるものの、美しい旋陀夫人に目を奪われる。さらに、彼女が酌をするに至って、その色香に抵抗できなくなっている。彼女に迫る仕草。こちらもドキッとしてしまう。この場での仙人の舞が美しいし、色っぽい。

面を付けた玄祥さんは思ったより小柄な感じ。ツノがついている面なので、勇猛な感じがするはずが、それはあまりない。後場女人にたぶらかされるのも、彼の「弱さ」ゆえなんだろうけど、それを予測させる? ちょっと暗めの雰囲気の仙人が、夫人の美しさに迷うサマがとてもリアルに感じられた。歌舞伎ほどの露骨なエロティシズムはないけれど、それでも十分にエロチック。こちらの方が逆により官能的かも。

やがて一角仙人は、『鳴神』の鳴神上人と同じく、前後不覚に酔いつぶれてしまう。これを見届けてから、夫人はこっそり去ってゆく。ここで、舞台正面に置かれていた作り物の布が払われる。中から龍の面を付け、荒々しい姿の龍神がおどり出る。橋掛りからももう一体の龍神が。二体の龍神が仙人に挑みかかり、ねじ伏せる。もはや抵抗不能の仙人。龍神は雲を穿ち嵐を呼びこんで、やがて勇ましく龍宮へと飛び立って行く。

龍神のお二方は、若さが立っていた。山本能楽堂は小じんまりしている上に、ワキ側前の真ん前席だったので、龍神がグッと迫ってくるたびに膨大なエネルギーが直に押し寄せてきた。このギンギラギンのパワー体が二体ですからね。すごい迫力。しかもそれが、酔いつぶれてヨレヨレになっている仙人のパワーレスな状態と対比されている。ドラマチックな場面。飽きない。人気演目というのも頷けた。