yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

必見! 能『融』[渡邊守章追悼企画] by京都芸術大学舞台芸術研究センター

素晴らしい動画をあげてくださっている。渡邊守章氏による解説とシテ方の観世銕之丞師、小鼓方の大倉源次郎師、そして大鼓の亀井広忠師からの追悼メッセージ、さらに能『融』が映像になっている。1時間弱だけれど、いつまでも見ていたい。消されないことを強く願う。リンクしておく。シテを銕之丞師、小鼓、大倉源次郎師、大鼓、亀井広忠師、太鼓を前川光範師、そして笛を藤田六郎兵衛師!である。渡邊氏が当代最高の演者たちとおっしゃっていた通りである。

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渡邊守章氏が今年4月亡くなられていたことを最近になって知った。迂闊だった。最後に守章氏のお話を伺ったのが、2020年2月の春秋座での能『井筒』への解説(プレトーク)だった。当ブログ記事にしている。

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数えると実に14本もの記事を守章氏について書いてきていた。もうこのような卓越した鑑賞力、分析力を誇るかつ実舞台での演出もされている演劇評論家、研究者は出ないだろう。実に惜しい。彼が京都造形美大の教授兼舞台監督になられた折に、学生になって彼の講義を聞きたかった。この『井筒』の時もやや暴走気味で、鼎談相手の天野文雄氏がなんとか軌道修正しようとされるのがおかしかったっけ。あの暴走が楽しいんですけど、時間制限がありますものね。

彼の演出で三島由紀夫の『サド侯爵夫人』を見たのがパリ公演の凱旋巡演公演(吹田メイシアター)での舞台だった。全元宝塚ジェンヌの役者陣で、主演のルネを演じたのが剣幸、モントルイユ夫人を峰さを理だった。「なんで宝塚?」って少々バカにしていた(ファンの方、ごめんなさい)のだけれど、なんの、なんのフランスで高評価を受けたのが納得できる舞台だった。

けっこう隙間が見える客席の後ろの方に座ったのだけれど、横に座っておられたのが演出された渡邊氏と後で知って驚いた。素敵な方だと思った。このことがきっかけの一つとなり、アメリカの大学院で三島の演劇で博士号をとろうと決意した。

そういう経緯もあり渡邊守章氏には勝手に親近感というか、近さを感じていた。もちろん観世寿夫さんの盟友であり、「冥の会」を一緒に立ち上げて日本に置ける演劇のあり方に新しいアプローチを試みられたことは知ってはいた。しかし、能を真剣に見るようになるまでは、能を媒介にして寿夫さんといかに強い絆を、同志とでもいうべきそれを持たれていたかは実感としては理解できていなかった。

非常にユニークな方、研究者、批評家の縛りを飛び越えたある意味奔放な方だった。「だから舞台なんだよな」って改めて思う。

最初にあげた動画で亀井広忠師が泣きそうになるのをこらえながら追悼の言葉を述べておられるのが印象的だった。そういえばこの舞台演者さんたち、皆さん美形ぞろいですね。守章氏の好みが出ているようで、「くすっ」とおかしかった。