yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

チューリヒ・バレエ団『冬の旅』with マウロ・ペーター(テノール)@チューリヒ歌劇場(スイス) NHK BS 9月19日放送

録画していたものを今頃になって見ている。

先日池田のマグノリアホールで『冬の旅』全曲をテノールの谷浩一郎氏が歌われるのを聞く機会があった。『冬の旅』といえばディートリヒ・フィッシャー=ディースカウのものを毎日のように聞いていたことがあり、バリトン専用?だと思い込んでいたので、テノールの方が歌うのに驚いた。素敵な歌声だったし、ドイツ語も完璧だったのだけれど、やはりこの曲独自の陰影を表現するにはバリトンがふさわしいのではと感じた。

この録画のバレエ団と歌曲の組み合わせは実に斬新だった。テノール歌手だったけれど、情緒たっぷりの感じで歌っていて、曲調と合っていた。舞台にバレエダンサーたちと共に立って歌うというのもより緊迫感がありよかった。

内容は以下の通りである。

<演目>
 バレエ「冬の旅」
 音楽 : フランツ・シューベルト
    ハンス・ツェンダー
 振付 : クリスティアン・シュプック
<出演>
 チューリヒ・バレエ団
 テノール : マウロ・ペーター
 管弦楽 : フィルハーモニア・チューリヒ
 指揮 : ベンジャミン・シュナイダー
収録 : 2021年2月12・13日 チューリヒ歌劇場(スイス)

まず男女ダンサーたちが12人と多い。女性はスリップ状の黒ドレス、男性は上黒、下も黒タイツ姿。彼らが組みつつ、ほぐれつつ縦横に舞台を踊り回る。動きはクラッシックバレエと違い、肉体の生々しさを際立たせる動きで、どちらかというと「BUTOH」のそれを思わせた。すっきりと一列に並んで立っている場もあるけれど、ほとんどが動の限りを尽くしたぐねぐねした動き。

それが突然破られ、勢いよくパッと放たれる。舞台中央上手にはセリ状の穴が空いていて、ダンサーたちはそこを出たり入ったりする。黄泉の世界からの復活を思わせる。暗いというのではなく、地の底からのエネルギーを感じさせるもの。『冬の旅』の曲調は暗く重い。それが時として解放される瞬間がある。緊張と緩和との繰り返し。それをダンサーの動きで表現しているのだろう。振り付けのクリスティアン・シュプックの挑戦の気概を感じた。ネット検索をかけたところ、彼は2023/24シーズンからチューリッヒを去ってベルリン国立バレエ芸術監督に就任するとのこと。

テノール歌手のマウロ・ペーターについては音楽評論家の長谷川京介氏のブログ記事(2013年1月29日)に紹介されていたのを、ウンウンと同意しながら読ませていただいた。リンクしておく。

マウロ・ペーター・テノール・リサイタル フリッツ・ヴンダーリッヒの再来か。 | ベイのコンサート日記

記事によると、マウロ・ペーターは『美しき水車小屋の娘』を日本で歌ったことがあったらしい。とても甘く、温かみのある声を絶賛されておられる。確かにこの『冬の旅』でもそれは際立っていた。

そうそう、YouTubeにもこの舞台が上がっていた。こちらもリンクしておく。いずれ消されるかもしれないけれど。

www.youtube.com

1日の始まりに刺激的な映像を視聴できて、気分がいい。