新白鸚と新幸四郎の「高麗屋襲名興行」。新染五郎の金太郎君はおそらく学校があるので、欠席。ちょっと残念。とはいうものの、高麗屋襲名興行はすでに京都南座で昨年11月に、また歌舞伎座では今年1月に見ている。それらに比べるといかにも貧相だった感は否めない。
今月は東京遠征をしないので、そのかわりということでチケットを取った。一ヶ月も前にサイトに入ったのにすでにほぼsold out状態。巡業があるのは近畿圏ではここだけだからだろう。何年か前の浪切ホールでの播磨屋の歌六、又五郎襲名興行も満席だったことを思い出した。大阪松竹座にも年に2、3回しか歌舞伎はかからないから、近畿圏の人たちは歌舞伎渇望症なんでしょうね。歌舞伎を見たければ東京に行くという選択肢しかない。
普段歌舞伎座で演じられている歌舞伎の半分くらいの量。「口上」が15分、『菅原伝授手習鑑』が30分、「奴道成寺」が40分と上演時間も短い。夜の部は5時に始まって7時45分に終了。岸和田は遠いので、これはこれで助かったのだけれど、充足感がなかった。歌舞伎座では昼・夜共に4時間超えなので。ということで、筋書きは購入せず。ほとんどの客が購入していましたけど。
以下、歌舞伎美人からお借りした配役と解説。
『菅原伝授手習鑑』
<配役>
桜丸 梅玉
桜丸女房八重 宗之助
松王丸 白鸚
梅王丸 幸四郎
杉王丸 廣太郎
藤原時平 錦吾
<解説>
加茂堤・車引の二場
歌舞伎の三大名作の一つである『菅原伝授手習鑑』は、菅原道真の伝記を中心とした時代物で、道真(菅丞相<かんしょうじょう>)に仕える白太夫の三つ子である松王丸、梅王丸、桜丸が活躍します。この三兄弟が朝廷の権力争いの波に巻き込まれて敵味方に分かれた末、それぞれの悲劇に見舞われます。
加茂堤で、帝の弟の斎世(ときよ)親王に仕える舎人(とねり)の桜丸が妻の八重とともに、親王と菅丞相の養女の苅屋姫の恋仲をとりもち、二人は逢瀬を楽しんでいます。そこへ菅丞相と対立する左大臣藤原時平(ふじわらのしへい)の家臣が登場し、親王と苅屋姫は恋仲を隠すために出奔します。菅丞相は、これが原因となって、時平の譫言により、流罪となります。
吉田神社にて、菅丞相に仕える梅王丸と菅丞相の流罪の原因をつくった桜丸が互いの境遇を嘆く中、時平の参詣の話を耳にし、行く手を阻みます。そして、これを制する時平の舎人の松王丸や杉王丸と争います。やがて、壊れた牛車から現れた時平を成敗しようと息巻く梅王丸と桜丸でしたが、逆にその威勢に身がすくんでしまいます。
『加茂堤』では、斎世親王と苅屋姫の淡い恋や、桜丸と八重夫婦のみずみずしい様子を描く牧歌的な風情に包まれた前半から、二人を探す敵方の登場により緊迫感あふれる後半へと緩急ある展開がみどころとなります。『車引』では、松王丸と梅王丸の勇壮な荒事、桜丸の柔らかな和事、三兄弟の隈取に時平の公家荒の隈といった独特の化粧など、歌舞伎の醍醐味を満喫できる華やかな一幕をお楽しみください。
舞踊「奴道成寺」
<配役>
白拍子花子実は狂言師左近 幸四郎
所化文珠坊 高麗蔵
所化不動坊 宗之助
所化西念坊 廣太郎
<解説>
紀州の道成寺で行われる鐘供養に現れたのは、白拍子花子。舞を奉納する花子ですが、そのうちに烏帽子が外れて、狂言師の左近が変装していたことがわかります。所化の勧めに応じて、鮮やかな踊りを披露する左近ですが、やがて鐘への執着を見せて、鐘に上がって周囲をにらみつけるのでした。
歌舞伎舞踊の大曲『娘道成寺』の立役版といわれる『奴道成寺』。冒頭、白拍子花子の姿でしとやかに踊りながらも、途中で狂言師であることを見破られてからの左近の舞踊が眼目です。特に「恋の手習い」では、おかめ、大尽、ひょっとこの3つの面を次々と取り替えて、巧みに踊り分けるクドキがみどころです。舞踊の面白さをご堪能ください。
高麗屋一門に梅玉が加わった布陣。やはりおとなしい感じ。『菅原伝授手習鑑』ではやはり白鸚の松王丸が見応えあった。以前に見た「寺子屋」での松王丸がかぶった。梅王丸の幸四郎もニンにあっていた。桜丸の梅玉も遠目には若く、初々しい桜丸がはまっていた。とはいうものの、こういう古典はどうやっても大人しめになるのだから、ちょっと冒険をして見ても良かったように思った。幸四郎が指揮するならそうなっただろうけど、そこはお父上を立てたのでしょう。
幸四郎の「奴道成寺」にはいささかがっかり。ちょっと前に猿之助のものを見ていたからかも知れない。「奴」がついていてもやはり「道成寺」。白拍子花子が憑依して行く様を見せる、つまり女方舞踊がベースにある。幸四郎は女方役者ではないので、こういう役はやはり無理があるように感じた。