yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

ワキで魅せた『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』in 「新春浅草歌舞伎」@浅草公会堂 1月10日

「歌舞伎美人」からの配役一覧、そしてチラシは以下。

曽我五郎時致    尾上 松也
曽我十郎祐成    中村 歌昇
小林朝比奈     坂東 巳之助
大磯の虎      坂東 新悟
鬼王新左衛門    中村 隼人
化粧坂少将     中村 梅丸
工藤左衛門祐経   中村 錦之助 

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ひとことでいうなら、「華がなかった」。正月の出し物としては恒例になっている「曽我対面」。その時々の最も勢いと華のある役者を揃えるのが常のはず。でも今回は、役者が揃っていなかった。とても残念だった。

でも、巳之助はその中でも光っていた。小林朝比奈の女性版は、まさに歌舞伎座で児太郎が同時進行で演じている。道化役だけれど、狂言廻しとして重要な役割。滑稽味と正統派の矜持とをうまくまとめて表現する難しい役でもある。巳之助はそれをよく分かっていたのだと思う。力まず、かといって引っ込み思案 (subdued) すぎず、ちょうど良い加減で演じていた。もっとも、彼は朝比奈を2015年2月、歌舞伎座演じている。もちろん私も見ているので、その時よりもずっと自信を持って演じているのが分かった。 

大磯の虎役の新悟も危なげがなく、安心して見ていられた。曽我兄弟に酒をつぐ場面は、清楚な中にも傾城の色気があって、しみじみと美しかった。こういう押し出しが重要な傾城役は、梅丸では少し弱い。彼には未だに「遠慮」があるのかもしれない。串田版『四谷怪談』の折には、もっと前に出ている感じがしたから。

歌昇は松也の「ムラな出来」を懸命に補おうとしていた感じがした。松也の不出来を無視して、彼の個性を強力に発揮すべきだったのでは。ちょっと気の毒だった。松也にはただ、「もっと精進してください」としか言えない。とくに声!発声がいまだに女役だった時のまま?力むと余計に甲高くなるのが、聞き苦しかった。

かなり失望したのだけれど、見方を変えればそれは伸び代があるということ。来年に期待したい。