yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

荒城真吾座長の男気が匂い立つ「劇団荒城」@ホテル三光 8月4日夜の部

芝居と舞踊ショーの二部構成。ここでは夜にもお芝居が入る。池袋から乗った東武東上線の勝手がつかめず、お芝居には10分遅刻してしまった。張り出してある芝居リストは翌日からのもので、この芝居のタイトルがわからず。パターンとしてはよくある筋。 

大店にやってきた旅鴉(和也)、ヤクザから足を洗う決心をする。真面目に働くうち、主人(姫川豊)にも気に入られ、また一人娘(月太郎)とも恋愛関係になる。二人の祝言も間近というところまでになっている。

ところが、土地のヤクザ一家の親分(勘太郎)が娘に横恋慕。子分たち(姫川祐馬、蘭太郎、虎太郎)を連れて店に押しかけてくる。この親分、面白化粧で笑いを取ります。娘を自分に渡すように「交渉」するが、断られる。そこに娘の許嫁が出先から戻ってきて、親分との一騎打ちになる。といっても辛い冷麺(唐辛子で真っ赤)を最後まで食べきれるかの競争。勘太郎さんが後で解説されるには、元のバージョンでは相撲の取り合いだとか。いつも同じでは面白くないからと、今回初めて激辛バージョンにしたとか。この一騎打ち、許嫁の勝ちで終わる。一応その場は引き上げる親分一行。明日のトイレが怖いと愚痴る親分。

 この親分たち、卑怯にも再び戻ってきて、娘を無理やり連れて行く。この時、月太郎さんを散々いじり倒して、挙げ句の果てに彼の鬘が飛んでしまう。頭を押さえ、着物の裾をなんとか合わせようと頑張る月太郎さん。 

一家に帰った親分、娘の許嫁が殴り込みに来ることを想定。一家に泊まっていた侍(真吾)に助っ人を依頼し、1両渡す。許嫁が殴り込んで来るのを迎え撃とうとする侍。許嫁からことの次第を聞いて、彼に同情する。彼の側の助っ人に寝返ってもいいが、それには1両以上出さなければダメだという。許嫁は5両はずむということで、侍は許嫁側に寝返る。

ここで許嫁、親分一家、侍を交えての立廻り。寝返った侍のおかげで、許嫁の勝利。親分一味はことごとく殺される。許嫁が娘を取り返して、めでたし、めでたし。

 

どうでもいい(?)筋書き。最後にちょろっと出てきて、見事な立ち廻りを魅せる真吾さんのための芝居だった?際立った剣さばきでした。最後に全部さらって行ってしまった感じ。猛烈にかっこいい!

このパターンはありがちなものだけれど、本当はもっと長いはず?それを短くしてしまい、さらに単純化しているので、喜劇味がかなり薄まっていた。四兄弟の中で最も背の高い月太郎さんが娘役だったこといい、勘太郎さんの面白メイクといい、これって喜劇だったんですよね、たぶん。私は2年前に木馬館で見た(荒城ならではの)「江戸前芝居」を期待していたので、少々肩透かしを喰った思いがした。あの時は照師さんという芸達者もおられたので、雰囲気がだいぶん違っていた。

「関東では実力、人気共にナンバーワン」ということを、前回見た折に確認していたので、今回は残念だった。大阪にきて欲しい劇団の最右翼。ただ、大阪ではコメディをブラッシュアップしないと、客受けは難しいかもしれない。

舞踊ショーでは、女性が一人も登板なしなのに驚いた。勘太郎さんは以前に鈴成座でみた折よりも立ち、女形共に良かった。蘭太郎さん、月太郎さん、虎太郎さん、それぞれ身長が180cmを超えていて、しかも男前なので、舞踊も見応えがありました。しかし、なんといってもお父上のあの男っ気には太刀打ちできない。真吾さんは2曲、立ちで踊られて、両方とも見ほれてしまった。男の色気が匂い立っていた。上方の優男とは縁遠いかっこよさ。舞台両サイドのタペストリー、今回は宇梶剛士さんのものでしたが、木馬では猿之助さんからの寄贈でした。「男が惚れる男」の典型でしょう。

劇団後見の和也さんは芝居、舞踊ともに手堅く、さすが年長と思わせられた。でも若手で最も上手いと唸ったのは、姫川祐馬さん。九州系の舞踊のエッセンスを凝縮して持っておられた。お父上の姫川豊さんの弁慶舞踊もとても良かった。劇団荒城の舞踊ショー、全体的に粒ぞろい、きちんとした舞踊でまとまっている。そこに一点、真吾さんという江戸前華が咲き誇っているという印象だった。

この日は昼は銀座で息子一家に会って、その後両国のホテルに移動。休む間もなく川越にやってきたのだけれど、遅刻。帰りは西武新宿線で両国まで帰ったのだけれどやたらと時間がかかった。ホテル着は真夜中だった。ロンドンから帰ったのが2日。この川越遠征の翌日(5日)の歌舞伎、「NARUTO」を見ている間、(時差ボケもあり)10分くらい居眠りをしてしまった。

 

<追記>

非常に重要なことを書きそびれていた。真吾座長の矜持を強く感じたのが、芝居、舞踊ショー、送り出しの写真掲載の禁止だった。劇場壁面に「写真をSNSにアップするのはご遠慮ください」という貼り紙がしてあった。また、勘太郎さんも口上で、「送り出しでは過剰なサービスをしません」という旨のことを、仰っておられた。大阪エリアでは、「ファン」たちが「過剰なサービス」を要求するのを度々目撃してきている。うんざりしていたので、この劇団方針は非常に明朗、妥当な感じがした。適度な応答、応酬はいいにしても、それが行きすぎると、色々と支障が出るだろう。ましてや劇団員が若いイケメン男性だとそれに拍車がかかる。写真は宣伝になるからいいとはいえ、やっぱり劇団員と客との変な癒着を煽る可能性が高い。それでも多くの劇団は「我慢して」ファンサービスをしているのだろうけど、そのバランスを取るのは至難の技であろうことは、想像に難くない。いっそのこと、やめてしまえばいいと思ってきていた。まあ、ほとんどの人はそうは思わず、役者との「交流」を当然の権利として要求している。ここに座員と客との馴れ合いが生じる。客のレベルが高いとは言い難い大衆演劇。真吾さんのこの方針は、彼のプライドをよく表している。変な客(残念なことに、こういう人が多い)を遠ざけるには、これしか手段はないだろう。劇団荒城が他のどの劇団よりも優れて屹立しているのは、ここにあると思う。