非常によくできた映画。原作は百田尚樹による同タイトルの歴史経済小説。原作は読んでいなけど、きっとこちらもバランスの取れた小説なのだろう。「歴史経済小説」なるジャンルがあることも初めて知った。百田尚樹氏の名は、大ベストセラーになった『永遠の0』の作者として夙に有名だけど、残念ながら読んでいない。また映画も見ていない。なんと2014年の邦画興行収入ランキング一位だったという。これを機にDVDで見てみようかと思っている。
先日、アニメ映画『艦これ』に失望したので、映画はしばらくやめようとは思ったのだけど、見る価値は十二分にあった。充実した2時間だった。Wikiに載っている作品情報が以下。
<あらすじ>
1945年(昭和20年)8月15日。世界中を敵に回した、日本の戦争は終わった。東京をはじめとした主要都市は徹底的に爆撃されて瓦礫の山となり、海外資産のすべてを失って莫大な賠償金が課せられようとしていた。これから日本はどうなっていくのだろうかと、全員が途方に暮れて失意に包まれているとき、毅然と店員を集めて話す男がいた。国岡商会の国岡鐡造店主である。
わずかに残った店員を前に、鐡造は「愚痴をやめよ、愚痴は泣きごとである。亡国の声である」「日本には三千年の歴史がある。戦争に負けたからと言って、大国民の誇りを失ってはならない。すべてを失おうとも、日本人がいるかぎり、この国は必ずや再び立ち上がる日が来る」と訓示を述べた。だが、失望から立ち直り武者震いする店員たちに、売るべき商品「石油」がそもそもないという現実が襲いかかる。「店主、このままでは、国岡商店は潰れます。涙を呑んで人員整理を」という進言に、鐡造は「馘首はならん!」と解雇を断固拒否する。戦後、住処も食糧事情もままならない情勢下で、日本の復興に向かって闘う男たちの物語が始まった。<主要キャスト>
• 国岡鐵造 - 岡田准一
• 国岡ユキ - 綾瀬はるか
• 東雲忠司 - 吉岡秀隆
• 長谷部喜雄 - 染谷将太
• 武知甲太郎 - 鈴木亮平
• 柏井耕一 - 野間口徹
• 藤本壮平 - ピエール瀧
• 甲賀治作 - 小林薫
• 国岡万亀男 - 光石研
• 盛田辰郎 - 堤真一
• 木田章太郎 - 近藤正臣
• 鳥川卓巳 - 國村隼
• 小川初美 - 黒木華
• 小松保男 - 須田邦裕
• 黒川 - 飯田基祐
• 大崎 - 矢島健一
• 小田 - 小林隆
• 榎本誠 - 浅野和之
<スタッフ>
• 原作:百田尚樹
• 監督・脚本・VFX:山崎貴
• 音楽:佐藤直紀
• 製作:中山良夫、古川公平、市川南、藤島ジュリーK.、藪下維也、永井聖士、加太孝明、堀義貴、島村達雄、前田義晃、弓矢政法、阿部秀司、安部順一、永山雅也、永野道訓
• エグゼクティブプロデューサー:阿部秀司、門屋大輔
• プロデューサー:佐藤貴博、守屋圭一郎、藤村直人
• 企画協力:奥田誠治
• 撮影:柴崎幸三
• 照明:上田なりゆき
• 美術:上條安里
錚々たる面々。主人公の国岡鐵造を演じた岡田准一を初めて見た。20代から90歳までの役を見事に演じ分けていた。当時30代の彼なら20代を無理なく演じるのは当然かも。でも、鐵造が刻々と変化してゆく様を実にリアルに演じて見せた。彼の演技力が長けていたのはもちろんだけど、特殊メイクの技術にも感心した。顔や手のしみ、しわが特にリアルだった。また岡田准一の老け役の役作りが完璧だった。それがリアルでなくては、この「海賊」と恐れられる男の器の大きさ、怪物ぶりが生きてこない。そこを「理解した」上での徹底ぶりに、頭が下がる。
周りを固めた俳優陣も良かった。妻を演じた綾瀬はるかはその儚い感じが良かった。怪物ぶりを謳われた国岡鐵造。その彼が最期のときに思い返していたのが最初の妻だった彼女だったのではと思わせる設定。ほぼ男性しか登場しない内容に、唯一華を添える女性を入れ込むという、この演出のにくさ。ハードな内容にさりげなく挿入されたラブロマンス。
ある時は国、そしてその官僚制度と、ある時はイギリス等の外国と闘わざるを得なかった。苦難に満ちた、困難を極めた国岡鐵造の闘い。その男の闘いの中ではみ出さざるを得なかった女。ちょっと目線を変えれば、「男社会からはじき出された女の悲劇」となるだろう。でもそうは描かれずに、「美しいもの」として描かれている。でもそれが切ない。
ことほど左様に、男社会の闘いを描いてはいるのだけど、もっと前に出したかったのは男同士の連帯、友情に違いない。これも美しいものとして描かれている。おそらく現代のビジネス社会では希薄になっているもの。インターネットの普及、それによるモノのネットワーク化。戦う相手が人間ではなく限りなくモノになってゆく「IoT」なるもの普及。この電子化、電脳化した社会の中で、人が恋しく思うのは、自らのレゾンデートルを見出すのは、やっぱり人そのものなんだろうと思わせられる。人の人を恋うる心情が、この作品の通奏低音になっているように感じた。