yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

大川興業暗闇演劇「The Light of Darkness」@神戸アートビレッジセンター 10月9日(日)昼の部

以下、本公演のサイトから。

大川興業 第40回本公演
作・演出:大川豊
出演:大川豊、寺田体育の日、鉄板■魔太郎、Jonny、牛越秀人、俺はゴミじゃない
特別出演:小椋あずき

光が生きている!!
暗闇演劇で100円ライターの閃光が舞台、客席に飛び、日頃は使い捨ての光が心に突き刺さった。その時、光が線にも見えたり、粒にも見えた。光は物理学では粒子でもあり、波でもある。暗闇の中での光は、色々な表情をする。怒ったり、泣いたり、笑ったりしている。考えてみると、月や星の光にみんな語りかけるのは、光が生きているからではないか?光が主役の演劇を是非観に来て、語りかけてみてください。

<物語>
スキーブームで建てられた一万戸以上のリゾートマンション。所有者高齢化で使用せず維持できず、わずか10万円で売られる。そこに数人が、過去の思い出の場所、現在の生活場所、未来の希望の場所、それぞれの時間軸で住む。ある日、一瞬にして同時に暗闇となる。太陽が消えたのか、同時に目が見えなくなったのか?光が止まり、それぞれの時間軸が動き出す。時間が進まない分、過去へのタイムトラベルが始まる。過去を変えるのか、追体験するのか、過去は振り返らず遠きにありて思うものなのか。それぞれの時空の旅が始まる。

2時間の間、休憩なし。ほぼ真っ暗闇の中で劇は進行する。開演前に「長時間暗闇が続きますので、暗所恐怖症の方、心臓の弱い方、妊娠中の方はご遠慮ください。」とのアナウンスが数回流れる。それも既に劇の一部なのだろうけど、不安をかき立てられる。そこからして、すでに敵の掌中。長丁場。身体に異常をきたす人もいるかもしれない。私の後ろの年配の女性がずっと溜息をつき続けているので、具合が悪いのかとずっと心配だった。一緒に行った連れ合いによると、「たぶん来るところを間違えて、溜息をついていただけ」とのこと。高齢者は後ろのカップルのみだったのだけど、全編ギャグで成り立っている2時間ものこの芝居、きつかったでしょうね。

「暗闇演劇」なるものは、大川興業の特許なんだとか。そうチラシに明記されているのだけど、それもすでに演出の一部なんだろう。どこまでが実際なのか、というか本気なのかが判然としないのは、芝居内容にも言える。上の概要にあるように、問題を抱えた人たちが廃墟と化した元リゾートマンションに集まってくるという設定自体が、嘘っぽい。嘘っぽいと同時にあの世っぽい。暗闇が冥界を表象しているようにも思える。

タイトルの「The Light of Darkness」は、コンラッド(Joseph Conrad)の『闇の奥』(Heart of Darkness)を想起させた。アフリカ奥地という「闇」で主人公のマーロウが出会ったクルツの心の闇を。これは英文科の学生が必ず授業で読まされる作品。当時、あまりにも若すぎて、その暗さ、重さがよく理解できなかった。ずっと後年映画で見て、衝撃を受けたっけ。

アリュージョンといえば、廃墟になった小学校を使って撮った映画で「After Life」をも連想させられた。この映画はアメリカで大学院の学生だった頃に見たもの。是枝裕和監督の作品。今調べたら、邦題は「ワンダフルライフ」というらしい。亡くなってから「永遠の死」の刻印を押されるまで、死者が一週間の間滞在するという「場所」が舞台。その舞台が廃墟の小学校。そこで準死者(?)たちは生涯で最も大切だった記憶を蘇らせ、それによって初めて永遠の旅路に出ることができるというストーリーだった。

この芝居の登場人物は一人を除いて死者ではない。ただ過去の記憶に翻弄され、それと格闘し、なんとかなだめることに成功する(あるいは失敗する)人間たちである。このあたりがあまり明確にはわからない。一体何がどうなってんだろうと。何しろ全て暗闇に覆われた中で進行するんですからね。その明瞭でないところがミソなんだろう。常に「狐につままれた」感があるところが。

目を凝らしても何も見えない。ただ蛍光塗料を塗った服の一部が見えるだけ。観客は耳を最大限研ぎ澄まして何が起きているのかを「知ろう」とする。舞台の上では言葉のバトルが全開。ギャグに次ぐギャグ。古くは30年以上も前の社会事象やらテレビ映画やら漫才やらアニメ/漫画やらのありとあらゆる素材がブチ込まれている。理解する必要はない。ただわかった箇所だけに反応すればいいのだろう。でもやっぱりおかしい。限りなくおかしい。

楽しかったのだけど、2時間はやっぱり長かった。途中ちょっとダレ気味だった。でもこういう斬新な試みにはエールを送りたい。帰りには新開地のヱビスビヤホールでビールで乾杯した。暗闇異次元から昭和レトロの世界にトリップ、ちょっとホッとしたりして。