yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「嘘」を入れ子構造のパロディにした映画『嘘八百』(Amazon Video)

関西風の洒脱で魅せた作品。「嘘」を入れ子構造的パロディに使うなんて、いかにも上方喜劇。本来なら宝塚ソリオホールで見る予定が叶わず、Amazonのプライムビデオで鑑賞。

「映画.com」からお借りした情報が以下。

<スタッフ>

監督    武正晴

脚本    足立紳 今井雅子

<キャスト>

<解説>

中井貴一と佐々木蔵之介がダブル主演を務め、「幻の利休の茶器」をめぐって繰り広げられる騙し合いを軽妙に描いたコメディドラマ。千利休を生んだ茶の湯の聖地、大阪・堺。大物狙いだが空振り続きの古物商・小池則夫は、腕は良いのに落ちぶれてしまった陶芸家・野田佐輔と出会う。大御所鑑定士に一杯食わされた2人は、仕返しのため「幻の利休の茶器」を仕立て上げて一攫千金を狙う。そんな彼らの行動が、家族や仲間、文化庁までも巻き込む大騒動に発展し……。共演にお笑い芸人の友近、「渇き。」の森川葵ほか。「百円の恋」の監督・武正晴と脚本・足立紳が再タッグを組み、NHK連続テレビ小説などを手がける脚本家・今井雅子も参加。

詳しいストーリー展開を知りたい方は、「モンキー的映画のススメ」さんのサイト「映画「嘘八百」感想ネタバレあり解説 劇中にウソが800個出てくる話です。嘘です。」をご覧ください。

堺といえば、中世から貿易で発展、繁栄、「東洋のベニス」と呼ばれたとか。ベニスが都市国家として栄えたのと同じく、堺も時の権力から独立性を持った自治都市として栄えた。千利休の出身地でもあり、茶の湯が盛ん。文化的にも京都と並ぶくらいの高さを誇った。イタリアのベニスは、今でも昔の面影そのままに、高い文化を誇っている。片やこの映画中の堺は、文化とはおよそ関係ない。とことん関係ない。悲しいくらい関係ない。

「堺」と言っても広うござんす。歴史的な相貌を残すところも確かにあるだろうけれど、無縁としか思えない地域の方が多い?私が知っている「堺」は、非常勤講師をしたことのある大阪女子大学(2005年に大阪府立大学に統合)周辺、それに大衆演劇の小屋のある堺東駅前近辺のみ。なんというか、典型的な南大阪の雰囲気の漂う、およそ茶の湯文化と縁がなさそうな界隈が多かった。

でもね、まさにこの堺こそが、映画『嘘八百』のキモである「ウソとマコトのdefinitionの曖昧」を、象徴しているように思えるんですよね。そして、ベニスとはまるで異なるこんな今の堺を、この映画はおちゃらけ満載で描き切る。

この映画を見て、「これぞ、今の堺」と納得する筋も多いのでは。香具師もどきの人間が蠢いている。でも大阪のエグさはない。どこかおっとり、のんびりしている。扱うのが「千利休の茶碗」なんて、悠長の極み。骨董の真贋を巡る「きつねとたぬきのばかしあい」をストーリーにすること自体、いささか時流に乗れていない感じ。登場人物も、したたかなようでいて、どこか抜けている人ばかり。ストーリーの悠長な流れと、主役二人を含む登場人物の「のんびり」が相まって、一種独特の脱力感を醸し出している。

ただ、脱力感の流れが、緊張で凝固する場が二つある。一つは野田佐輔が贋作茶碗を製作するところ。もう一つはその茶碗のオークションの場面。この二つがあるので、残りの緩みっぱなしの場面が生きる。「嘘を暴く」という「真摯」なことなんて、所詮は無駄骨(?)かもしれない。「人生、そんなに白黒はっきりさせることに目くじら立てなくてもいいんじゃない?」と、バックから声が聞こえたような。

そうそう、リアルと非リアルの間もことさら曖昧にされてしまっていたような。「リアル」だったのは、なんといってもあの古びたアパート一階の一室。ドンキ、コーナンのポリ袋が壁からぶら下がり、スーパー玉出のチラシが冷蔵庫に貼ってある。これ、きっと関西以外の人にはわからないんでしょうね。そういう「いちびり精神」に満ちていた。

「非リアル」の方は、ストーリーの想定そのものがそう。極め付けが最後の場面。主人公二人が関空から大阪に入るあの長〜い道路を走らせている後ろを、二羽のカモメが飛んでるなんて、あり得ない。また、キャストで、佐々木蔵之介の息子が30半ばの前野朋哉だなんて、到底リアルじゃない!

これはリアルに入るのかどうかわからないけど、野田佐輔(佐々木蔵之介)が小池親子に振るまったお菓子が気になった。あの感じから、絶対にたねや(クラブハリエ)のバウムクーヘンだ!と思い、ビデオを(Amazonのプライムビデオで視聴していたので)一旦止めて検索したら、やはりたねやのものだった。野田佐輔(佐々木)の実態からして、あの焼き菓子を用意するとは考えにくいんですけどね。たねやは滋賀にある(ハイブラウな)和菓子屋さん。京都出身の佐々木蔵之介、もしくは近藤正臣の発案だった?

 キャストのほとんどが関西出身者。あのほんわかズッコケタ感じはまさにゆるキャラ。それが成功の理由だと思う。ただ、かっこいい蔵之介サマがあんな親父に化けるとは!さすが役者さんですが、個人的にはちょっとイヤかも。