yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)』 in 十二月大歌舞伎@歌舞伎座12月25日昼の部

近松半二 作のながーい狂言。これはそれの一部の「十種香」の場。全体がわかっていないと、内容が追いづらい。同様のことは『妹背山婦女庭訓』にもいえる。夜の部ではこの『妹背山』の通しがかかるのは、その意味で、非常に意味があると思う。見れなくて残念だけど。いずれの演目も三角関係が重要なキーとなっている。「十種香」では八重垣姫と濡衣の蓑作(実は武田勝頼)をめぐる恋のさや当てが展開する。「十種香」はよくかかるので、以前に数回みているのだけど、このブログ記事にはしていない。前に見たときは誰が八重垣姫を演じたのかを、帰宅してから確認するつもり。
以下が「歌舞伎美人」からの今回の配役。そして「みどころ」。

<配役>
八重垣姫   七之助
武田勝頼   松也
腰元濡衣   児太郎
白須賀六郎  亀寿
原小文治   亀三郎
長尾謙信   市川右近

<みどころ>
◆姫の一途な恋心を描いた一幕
 越後の大名長尾謙信の息女八重垣姫は、許婚の武田勝頼が切腹したと聞かされ、館の一間で弔っています。実は勝頼が切腹したというのは計略で、花作りの簑作に姿を変えて、腰元濡衣と共に長尾家に奉公していました。二人の目的は、謙信が預かる武田家の重宝諏訪法性の兜を奪い返すことだったのです。八重垣姫は勝頼と瓜二つの簑作を見て一目で恋に落ち、濡衣に仲立ちを頼みますが…。
 時代物の中でも屈指の名場面です。八重垣姫は女方の大役で、気品の高さと一途な恋心の激しさを表現するのがみどころの一つです。

幕が上がるとそこには真ん中に蓑作を、そして左に腰元の濡衣、右に八重垣姫を配した舞台。三角関係をそのまま視覚で示している。前に見た時にも同様だったのか、記憶になし。でもこの舞台配置はよくできた趣向。蓑作だけ御簾に囲まれていず、女性二人は小部屋にいる。だから互いの様子は知らない。深層心理的演出法。狂言自体、そういう読みをさせるようなもの。だからこの三人の構図が意味を持つ。最初から感心してしまった。

最近の松也にはがっかりすることが多かったけど、この役に関してはよくできていた。特に声。よく通っていたし、「使用人」に姿を変えていても高貴の生まれだというのが滲み出ていなくてはならないこの蓑作という人物を、きちんと造型できていた。うれしかった。というのも1月の浅草歌舞伎で彼がリーダーだから。ここしばらくがっかりすることが多かったので、うれしい。

感心したのが、七之助のぶっとびぶり。今までみた八重垣姫とはあきらかに違っていた。過激に。あんなにあからささまに自身の恋心をぶちまけるなんて!そのぶっとびぶりに、場内からも笑いが。さすが七之助!

予想外だったのが児太郎。驚いた。だって以前はあまりぱっとしなかったんですもの(失礼!)。お父さま(福助丈)がご病気?なんてこともあるのか、今月公演の児太郎、有望な若手の出現を目撃できたのだから。

『二十四孝』なんていう、ある意味苔の生えたような古い演目が、若い演者によって新鮮なものとして蘇った場に立ち会えたことの、好運を思った。