yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『銀のかんざし』都ゆかりお誕生日公演@明生座11月28日夜の部

ゆかりさん、お誕生日おめでとうございます。掛け値なく大衆演劇界でナンバーワンの女優さんであることを証明された公演だった。若丸座長との阿吽の呼吸のお芝居、絶品でした!

『銀のかんざし』、私には初めてのお芝居。松竹新喜劇自体を最近になるまで実際の舞台では観ていなかったので、当然かも。観ておけてよかった。渋谷天外原作ということから判る通り、もとは松竹新喜劇の持ち狂言だったよう。

おおまかな筋は以下。

ところは京都。髪結のおかつ(ゆかり)の亭主、清之助は腕の立つ大工だが、今では「髪結の亭主」の典型のような男。働かずにおかつに食べさせてもらっている。というのは表向きで、実際はおかつが清之助が他の女に「盗られる」のを怖れ、家の中に半「幽閉」状態にしている。

街の人たちはおかつのあまりの清之助への偏執、独占欲に辟易し、井戸の周りに集まって文字通りの井戸端会議。さんざん笑いものにしている。田舎から出て来た清之助の母親までがおかつに追い返され、清之助の元の棟梁のところに泣きついたという。

おかつの髪結床も最近はめっきり客が減っている。というのも、おかつが本業そっちのけで清之助にかかりっきりなため。この場面のおかつ役のゆかりさんの嫉妬心丸出し、なりふり構わない清之助への執着ぶりは鬼気迫るものがあった。と同時にその過激さがどこかオカシクて、ゆかりさんが「演技」としてやられているのがよく分かった。役になりきるように、一生懸命なゆかりさん。ホント、いっしょうけんめい。

梳き子のおさよ(はるか)の兄、土田(あきら)がやって来ておさよを連れ戻すという。親不孝を平気でする髪結のところに妹は置けないというのだ。客が減ったため、給金も払ってもらっていないという。土田に同伴した家主の本田(剛)も家賃を四ヶ月滞納されているという。それを聞いて驚く清之助。おかつもしぶしぶそれを認める。家主の本田は一計を案じていた。清之助を元の棟梁のところでふたたび働かせ、さらには彼を母のもとに戻すというもの。もちろん清之助とおかつにはそれを隠し、表向きは二人が一ヶ月だけ離れて暮らすことを「提案」。清之助は土田のところで働くということにしておく。おかつも折れる。亭主の「『預かり証』を取る」というおかつ。オカシイ。本田と土田の反応も、なんとものどか。こんな時代があったんだと思える。悪人がいないんですよね。こういうほんわかとした世界、もうないですよね。これって、松竹新喜劇的?善/悪が凄まじい対立を演じる西洋の演劇とはまったく違う世界。四世南北、黙阿弥が描く世界とも違っている。

清之助はそういう「企み」を知らずにおかつと別れ、土田のところに行く。というのは表向き。実際は元の棟梁のところに戻る。棟梁は清之助がおかつと一緒になるのに反対だったので、おかつが無理に清之助を辞めさせたのだった。

減っていた客も戻ってきて、おかつの髪結床は繁盛している。あれから一ヶ月経ち、清之助が戻ってくるのを楽しみにしているおかつ。ところが実際には清之助が元の棟梁のところで働いているという情報を、豆腐屋(星矢)が漏らす。そんなはずはないと打ち消すおかつだが、心配になる。彼女が出かけたところに梳き子のおさよがもどってきて、もう一人の梳き子、おみつ(ゆきか)に、兄と家主との共謀を打ち明ける。それのみならず、家主が清之助を別の女と結婚させようとしていると伝える。おかつの狂暴な怒りを怖れた二人、逃げ出そうとしたところにおかつが戻る。問いつめられて、おさよは兄たちの「共謀」、そして清之助に縁談が持ち上がっている白状。それを聞いたおかつ、一升瓶にどんぶりでやけ酒をあおる。酔った勢いで剃刀を持ち出し、土田のところへと飛び出して行く。

そこへ家主の本田と清之助が戻って来る。おかつが剃刀を持ち出して「なぐりこみ」をかけたと聞かされた清之助。本田に抗議する。そこまで深く深く惚れられた男の冥利を説く。ここのところ、本来なら滑稽な箇所なんでしょうが、今思いだしても泣いてしまいます。若丸さん、この役者魂。なんの衒いもなく、「惚れられた男の冥利」を演じ切れる役者なんて、そういませんよ。

おかつが土田たちに連れ戻される。ここからが最大の魅せどころ。嘆き悲しむおかつに向かって、清之助は「おまえだけがわしの女房や」と愛の告白をする。その清之助にすがって大泣きするおかつ。ここでのお二人の演技、迫力200パーセント。男と女が惚れ合うことの不条理とでもいうべき激しさ、そしてそれがゆえのいとおしさ。美しくもなく、穏やかでもなく、とにかく憑かれたかのような激しい情愛。人情劇でここまで人の情愛の深さを描けるなんて!フロイト的に解剖したくなってしまうのが、私の性ですが、そんな野暮は止めましょう。でもこのリアリティが歌舞伎芝居とは一線を画した近代性なんですよね。ゆかりさんがすばらしいのはもちろんですが、若丸座長もスゴイ役者。

忘れてならないのが剛さんを始めとする座員さんたちの演技。毎日の公演の合間を縫っての稽古。どれほどきつかったか、想像に難くありません。特にはるかさん、ゆきかさんがカワイク、リアリティがありました。

舞踊ショー  主要なもののみ。まちがいあればご容赦。

第一部 
若丸  立ち  「終りなきわが歌の道」
黒地に白い模様の入ったお着物に白い袴で。渾身の思いを込めて。

第三部
星矢  立ち  「俺たちの夜明け」
赤地にゴールドの牡丹の裾模様の着物で。

若丸  女形  「ひゅるひゅる橋」
赤と白とのコントラストが上品。きらびやかな刺繍の白い帯で。

中舞踊 剛、ひかる はるか  「夜桜挽歌」
赤い布が効果的に使われていた。廓の華やかさが偲ばれる艶やかさ。

ゆかり  「大阪で生まれた女」
白いお着物に佐賀錦の黒/ゴールドの帯で。お誕生日の喜びを全身で表現されていた。

中舞踊  「途中下車」
若丸さんとゆかりさんを中心にして。

あきら   「千曲川
いつも古典的に折り目正しい舞踊を踊られるあきらさん。地味目の紫のお着物に同色の羽織で。姿勢が美しい。千曲川辺リの光景が目に浮かんだ。

剛  立ち  「鶴の舞橋」
黒地に白い総模様の入ったお着物に白い帯をしめて。扇子の舞がしなやかだった。

若丸  立ち  「男と女のバラード」
下から赤が透けてみえる黒のお着物で。赤い帯、赤草履で。小田純平さんの深くしみじみした歌声とも完璧にマッチ。

ラスト  「百花繚乱」
衣裳は奈良時代(?)、あるいは唐風?のどかで優雅。文字通り百花撩乱。