yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『鳶娘亀甲組』in たつみ演劇BOX @朝日劇場 6月17日昼の部

これは以前にみたときにはたしかもっと長い芝居だった。口上で、たつみさん自身がそれを認めていた。一部のミニショーを入れたので、芝居を極限まで短くしたのだという。ところどころ、「ちょっと無理だな」と思うところもあったが、これはこれで巧くまとめられていた。

この劇団ならではの最強の女優、たつみ座長の姉上、小龍さんが主演である。去年観た『明治一代女』でもそうだったのだが、こういう江戸前の気風のよい芸者をすれば、彼女の右にでる者はいないだろう。上方出身なのに、江戸の台詞回しが板についている。

亀甲組の大工の棟梁、勘左衛門は浅草寺の五重塔の再建を依頼されたのだが、落成間近になって塔は火付けによって焼失、彼も何者かに殺されてしまう。後を継いだのは息子の仙吉(ダイヤ)だが、彼はまだ若く、気も強くない。一方、姉娘のお吉(小龍)はバリバリの江戸っ子。まるで男にしたいような生きのよい女である。亀甲組の二代目になった挨拶回りに、亀甲組の競争相手の成瀬組棟梁、源三(宝)のところへ出かけた仙吉は、源三から亡父が借金をしていたと聞かされる。父が書いたという証文までみせられ、挙げ句の果てに掌を千枚通しで貫かれる。そこへやってきたのが、お吉。証文は偽物だと破り捨て、小判を源三に投げつける。その金は、こういう仕儀になることを予想して、彼女が自らを芸者に売った金子だった。感謝する弟の仙吉。源三の傍には勘左衛門の後妻だったおくにが納まっていた。そのおくにと源三に格好よく見得を切って、二人はそこを後にする。このときのお吉のきった啖呵(「五条のなんたらかんたら」というのですが)、実に胸のすくものでした!

ところ替わって、場所は大きな料亭。同心の山田が源三の接待を受けている。山田が源三に袖の下を渡すが、それというのも焼失した五重塔の建築を請け負わせてもらうよう、奉行に頼んでもらうためである。そこへ新しく赴任した奉行の津川護(たつみ)到着。源三はなんとか取り入ろうとするが、奉行に仕事の話は遊興の席ではしないと、にべもなく撥ね付けられる。困った源三。芸者(愛飢男)を呼び寄せる。なんでも「当花柳界一」との評判だと言うことである。ただ「一番」というのは、年齢だと分る。この愛飢男さん扮する芸者、すごいメークでしたが、それでもどこかカワイかった。そしていつものように(?)座長のつっこみが入ります。滑舌があまり良いとはいえない飢男さん、なんども「注意されて」、可笑しいやら、ちょっと気の毒やら。でもおなじみのシーンなので、どこかホッとしたり。これ、まちがいなく「たつみ演劇BOX」の売りの一つなんですよね。

そこへ芸者姿のお吉登場。部屋を間違えたと言って出て行こうとするが、飢男芸者に呼び止められる。きちんと挨拶しろという訳である。見とがめた奉行の津川、彼女に自分の酌をするようにという。怒った飢男芸者、意地悪を言うが、あっさりとお吉にいなされてしまう。彼女が気に入った様子の津川、部屋を替えて飲み直すといって、お吉をつれて出て行く。怒り狂う飢男芸者。困った源三と山田も部屋を後にする。

そこへ顔に火傷の痕のある男が殴り込みをかけてくる。成瀬組の男たちが必死で押しとどめようとするが、「成瀬を出せ!」と叫びながら料亭の奥へ駆け込んで行く。

再びもとの座敷へ戻ってきた奉行とお吉。そこへ仙吉がお吉を尋ねてくる。お吉が接客中と知って、退出しようとするが、奉行に「おまえは仙吉じゃないか?」と、呼び止められる。驚く仙吉。奉行は昔近所に住んでいた武家の息子、それも一緒に遊んだ少年だったことが分る。お吉ともども、懐かしさで胸が一杯になる。津川は長崎に赴任した父に同伴して、挨拶もできないままに江戸を発ったのだと、二人に言訳をする。五重塔の再建を弟に任せてくれないかと、津川に頼むお吉。もともと腕のよい亀甲組に任せるつもりだったと奉行の津川。

お吉と夫婦になりたいので、仙吉に仲を取りもってくれと頼む津川。ここで押したり、引いたりのやりとりが幕間劇的に挿入されました。ほどんどアドリブだったのでしょうが、さすが三兄弟、その応酬に瑕疵はほとんどありませんでした。

津川はお吉の身請けの金も用意し、また父母に話をしてくると、退出。お吉、仙吉も座敷を出ようとしたその折、二人はなにやら書き付けてある紙を拾う。それは「勘左衛門を殺し、五重塔に火をつければ、娘をお前にやる」と認めてあった。差出人は成瀬源三になっているのを確認した二人。直ちに仇討ちに向かう。

料亭から出ててくる成瀬を待ち伏せしたお吉と仙吉、みごとに仇討ちをし遂げる。そこへやってきた奉行の津川。「仇討ち」ということで「お咎め無し」とすると二人に告げる。舞台にダイヤ、小龍、たつみと三兄弟がうち揃っての幕。美しい三人の様子、一幅の絵になっていました。