yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『静岡土産』たつみ演劇BOX @浪速クラブ 5月29日夜の部

<お芝居『静岡土産』>
以前に一度観たお芝居。喜劇だったのは覚えていたけど、今日のはオカシサ三割増し。27日のお誕生日公演以来、声が出なくなっているたつみ座長。それでも無理をしてのごり押し発声。その上、生来のサービス精神で、当意即妙のアドリブ連発。お芝居の時間が超過してしまった。

イントロの音楽は新派の人情劇のときにかかるものと似ていた。それが予測させるように現代劇、それも喜劇。

大工の棟梁(たつみ)の事務所。まるで孫悟空のような頭をした三ちゃん(愛飢男)が店番をしている。そこへけいちゃん(瞳太郎)が傘を借りにくる。三ちゃんは「傘を貸さないように」と、親方に言いつけられているのだと断るが、女の子を紹介してくれるというのに負けて、親方の大事にしている番傘を渡してしまう。親方は「貸すな」と言っていたけど「やるな」とは言っていなかったから、言いつけにそむいたことにはならないという理屈をつけて。借りるものだけ借りて、けいちゃんはさっさと帰ってしまう。騙されたと気づく三ちゃん。

親方が奥から出て来て、何があったのかと尋ねる。このときのたつみさんの仰天鬘に、客席の笑いがしばし収まらず。前に見たときには普通の白髪頭だった。もちろん顔は多少のオモシロメークだったけど、それほどの違和感はなかった。ところがこの日の鬘、凝っていた!今思いだしてもおかしくて、笑い転げてしまう。一番上には茶髪の洋風ヘアーピース。その下から黒いアフロヘアがはみ出しているというもの。たつみさん、その黒いくるくるカールをときどき(ちょうど女の子がよくやるように)指に巻き付けて遊ぶ。三ちゃんの愛さんも笑って台詞がまともに言えず。で、ここでお決まりのたつみ座長の愛さんいじり。

さて、事務所。傘をあげてしまったと聞いて、怒る親方。「断るのは難しい」という三ちゃんに、断わり方の手本をみせるという。それが以下。

「貸してやりたいのはやまやまなれど、去年の梅雨に濡れたままにしておいたので傷んでしまった。骨は骨、皮は皮でバラバラにして、裏の納屋に放り込んである。修繕したら貸しまっさー」。

つぎにやって来たのは米屋の手代、優君(ライト)。「ねずみが増えて困っているので、猫をかしてくれ」というのが依頼内容。そこで三ちゃん、はりきって親方伝授の口上を述べる。何度言っても同じ返事しか返ってこないのに腹を立てた手代、「お前のところには二度と米を売らん」と悪態をついて帰ってしまう。店先の騒ぎをききつけた親方が出て来る。「米を売らん」と言われたと聞き、最初は腹を立てた親方だが、よーく経緯を聞きあきれかえる。で、今度は猫を借りに誰かがきたときの言訳を伝授。「貸してやりたいのはやまやまなれど、夕べねずみを食い過ぎてペストになり、犬猫病院に入院中」。

親方が奥に引っ込んだあとに、今度は不動産屋の久保社長(大蔵祥)が来訪。三ちゃんに、「親方に『ちょっと顔貸して』と言ってきて」と頼む。で先ほどの親方伝授の言訳をする三ちゃん。驚いた社長、「ペストやって!これは大変。どこの病院や」と聞く。駅前の病院と聞いて社長が飛び出したあとに、親方が奥から出て来る。事情を聞いて、これは大変とこちらも社長の後を追いかけて連れ戻す。三ちゃんには「おまえ、もういらんわ。奥に行っておけ」という。ついでに「首や」とまで言い渡す。ここで三ちゃんならぬ愛さん自身の「身の振り方」を巡る楽屋落ちがありましたが、それは省略。でもお腹を抱えて笑いました。

久保社長の用件とは駅前の二坪の土地(!)に十階建てのビルを建設してくれというもの。引き受ける親方。

社長が帰ったあとに、親方の女房(小龍)と娘(花)が連れ立って帰宅。このときの小龍さんの出立ちが、腰脇に深いスリットの入ったチャイナドレス!頭は白髪の鬘。花さんはTシャツにジーンズ。でも顔は真っ白けの化粧。「つれあい」の姿をみた親方、「やあ、ピン子!」。爆笑でした。花さんも化粧をネタにさんざんいじられていました。

女房は娘に好きな人ができた。結婚させてやりたいという。しかも相手は親方の弟子、新吉だという。新吉の腕を買っている親方は良い話だと喜ぶ。娘と新吉が一緒になれば、この金田組のあとを継がせるという。女房はまず新吉の気持ちを聞かなくてはいけないと言うのだが、親方は、「自分の言うことはなんでも聞く新吉だから大丈夫。もしダメなら、腹を切る」と請け合う。

そこへ新吉(ダイヤ)が帰ってくる。さっそうといい男前。さっそく話しを切り出す親方。新吉はきっぱりと断る。この間、ずっとはみ出た黒のアフロヘアを弄っているたつみ親方。ここからがちょっとした幕間劇。といってもたつみさんの独り舞台のようなもの。たつみさんの鬘頭を真っ正面からみて、笑いを堪えきれないダイヤさん。そこでたつみさん、例のすっとぼけた顔で「わしの頭な、ホンマはな、テンパやねん。それに鬘やねん。知っているのは、女房と娘だけや。でもな、そろそろカミングアウトしよかなと思てる」。それを聞いたダイヤさん。「もう、バレバレですやん。(ここで客席を向いて)みんな知ってます」。

奥から三宝に乗せた出刃包丁を持ってくる小龍さん。「さ、腹切ってもらいましょ」。「観念」して、辞世の句を詠む親方。この句が珍妙でした。着物の前をはだけて、出刃をお腹に突き刺すそぶり。さすがに驚いて止める女房、新吉。その度に「まだ突いてへん」と、親方。そうこうするうちに、はずみで頭のヘアピースが落っこちる。段取りが狂って慌てるたつみさん。オカシカッタ!ハプニングもなにかの演出にみえるくらい、喜劇がサマになっていた。

とうとう観念して、新吉は親方の娘と結婚することに同意し、仕事に出て行く。でも引っ込みの時、「もうめちゃくちゃや」とひとこと。芝居中で「結婚させられる」ということより、ハプニングの続くドタバタをさしたんでしょう。たしかに。

奥へひっこんだ親方、妻、娘。そこへ、若い娘が訪ねて来る。親方が応対する。彼女はなんと新吉の許嫁の清子だと名乗る。慌てる親方。新吉は「シラメ病(!?)で死んだ」と嘘をつく。墓はどこですかと聞かれ、「吉祥寺の五番」と苦し紛れの返答。静岡から来たというその娘、今から墓参りに行きますと言い、静岡土産だといってわさび漬けを親方に渡す。

帰りかけた娘、事務所を出たところで帰ってきた新吉と出くわす。新吉が死んでいなかったことを喜ぶ清子。その清子に新吉は親方の娘と結婚することになったと告げる。あきらめて静岡に帰ると応える清子。でももう一つの用件があったのだという。それは自分の父親を探すという用件だった。芸者をしていた母が大阪からやって来た若い大工と良い仲になって生まれたのが自分で、その大工は大阪に呼び戻されたまま、静岡に戻ることはなかったという。そのとき、母のお腹には自分がいたのだが、男はそれを知らない。いまわの際に母はその男の写真を清子に握らせ、父を探すようにと言ったという。ただ、父の名を告げるところで、亡くなってしまった。その写真をみた新吉、それが親方棟梁だと気づき、一計を案じる。清子に待つようにと言いおき、事務所に帰る新吉。

奥から親方、妻、娘が出て来る。このときにたつみさんのヘアピース、今度はぐっと後退して、額が思いっきり広くなっている。ズッコケタ。客席爆笑。親方に、清子から預かった写真を渡す新吉。そのときに清子の母の話を自分の話に置き換えて話す。写真が(まだ毛のあった頃の)若い自分自身と気づいた親方、新吉が「自分の子」だと「判る」。それじゃ、娘とは結婚できないと、妻と娘に告げる。

新吉は清子を中に呼び入れ、「この人が自分の女房になる人です。だから、親方、しっかりと抱いてやって下さい」という。「エー、お前の嫁を抱くんか」と「勘違いする」たつみさん。その親方に、妻と娘が見えないようにサインを送るダイヤさん。ようやく事の次第に気づいた親方、本当の娘をしっかり抱きしめる。

口上はたつみさんだったのだが、声が出ないということだった。でもお芝居で、あんなにがんばられて、大丈夫かと心配になる。お父様の代からの芝居だそうで、お父様はハゲ鬘を被っていたのに、それが見つからなくて、しかたなくアフロヘアの上半分を(テープで)潰してつるつるにし、その上にヘアピースを乗せているとのこと。あいかわらず、オモシロトーク全開の口上だった。

残念だったのはこの口上のときの写真を撮っておかなかったこと。