yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

映画『グリフ・ザ・インビジブル』(Griff the Invisible) @Ritz Bourse 9月6日

今日は朝から嵐のような天気で、一挙に秋がきた。昨日までの暑さが嘘のような寒さで、たまたまH&M で買っておいたコートが役立った。ペン大の図書館が先週末の土、日、そしてレーバーデーの月と閉館で、今日が新学期になって初めての開館日ということで朝から出かけたけれど、中はコートをきても寒いくらいで2時間で退散。そのあとTDBankで口座を一つ閉じた。

明日帰国なので、せっかくの機会を逃すまいと、インディペンデンスホール傍のRitz BourseというRitz 系の映画館で映画をみた。以前にも書いたが、この系列映画館はすべてがいわゆる「芸術系」の映画で当たり外れがない。気分が少し滅入り気味だったので、チケット売り場の女性にどれがコメディかと聞いてみた。「コメディというより、funny」と彼女が薦めてくれたこの映画をみたのだが、まさしく大当たりだった。ぜひもう一度観たいけれど、日本では未公開だし今後も公開は未知数のようなのでアメリカのアマゾンから送ってもらうしかなさそう。

主人公のグリフはあの『スタートレック』の船長のような化粧をしていて(自然にみえるようにはしていても、あきらかにアイラインを引いていた)、そしてなんと!私のゼミの学生でアニメオタクの吉田(仮名)君に面差しが瓜二つだった。見た瞬間におもわず笑ってしまった。グリフの偏執狂的オタクぶりはそのまま吉田君のそれと重なった。吉田君の場合は知らないマンガ、アニメはほとんどなくて、他学生が発表等で誤った説明をすると即座にそれを訂正、ついでに蘊蓄を垂れるので、ヒンシュクをかうのだけれど、本人は至って大真面目、親切なのである。その点もグリフとそっくりだった。この映画を後期のゼミクラスでみんなで観て、吉田君の感想も聞きたいと、楽しみができた。

オーストラリアの映画で、作者、監督、そして俳優もすべてオーストラリア人。
以下が英語版Wikiからの引用

Griff the Invisible (2010) is an Australian romantic comedy-drama film written and directed by Leon Ford.
The story is about Griff (Ryan Kwanten) a socially awkward office worker who spends his days being bullied by his workmates. At night he is Griff the Invisible, a superhero who roams the streets of his local neighbourhood, protecting the innocent. Griff has his world turned upside down when he meets Melody (Maeve Dermody) a beautiful young scientist who shares his passion for the impossible.
Griff the Invisible had its world premiere at the 2010 Toronto International Film Festival (TIFF), where it was well-received by audiences "who seemed charmed by this offbeat tale".The film also screened at the 2011 Berlin International Film Festival in February 2011 in the "generation" sidebar where it was well received by a predominantly teenage crowd.


Directed by Leon Ford
Produced by Nicole O'Donohue, Jan Chapman, Scott Meek
Written by Leon Ford

Ryan Kwanten as Griff
Maeve Dermody as Melody
Toby Schmitz as Tony
Patrick Brammall as Tim

そして以下がそれを参考にした日本語の説明。*1

【ストーリー】
夜間にスーパーヒーローとして活躍する内気なグリフは美人科学者のメロディーに恋し、 自分が置かれている特異な境遇を見つめなおす...
【スタッフ・キャスト】
[監督]リオン・フォード [出演]ライアン・クワンテン/ミーヴ・ダーモディ/ マーシャル・ナピアー

「美人科学者」(英語サイトもそうなっているけど)というのは間違い。「夜間にスーパーヒーローとして活躍」というのも間違い。多分これを書いた人は映画を観ていない。

以下映画の筋で、ネタバレがあります。

内気で世間から完全に浮いているグリフ。昼間は会社員として働いているが(このあたり『マトリックス』のネオ)、夜は世の悪(実際は近所のちんぴらの犯罪)と闘うスーパーマン(ウルトラマン)に変身する。アパートには近所の通りを監視する装置が完備していて、事件があると即現場に駆けつけるようになっている。この部分、スーツを脱ぎ捨てて、例の体に張り付いたつなぎのスイミングスーツルックになるのだから完全に映画の『スーパーマン』そのまま。会社では女性の同僚からの受けはいいのだが、一人彼を目の敵にしてハラスするのがトニーである。

友人のティムはイタリアから帰国したところだが、グリフのあまりにものオタクぶりを心配して、彼のアパートを頻繁に訪ねてくる。彼は気に入ったガールフレンドができたと、彼女をグリフのアパートへ連れてくる。そのガールフレンドのメロディというのもパラレルワールドが存在することを科学的に「証明」しようとしている一風変わった超俗的女性で、彼女の両親は引きこもりがちな娘になんとか相手を見つけようと必死である。

メロディはグリフに会った瞬間から「仲間」だと察知、一人でグリフを訪ねてくるようになる。グリフは浴室での自分の実験——「不可視スーツ」を作るという実験——がメロディにばれてしまうことを恐れて、最初は歓迎しない。グリフの気持ちにはおかまいなしにメロディは彼のところにやってくるようになり、やがて二人は自分たちの「実験」の内容を共有するようになる。

ティムはメロディがグリフに惹かれていることを知り、メロディをあきらめようとするが、やはり二人の非現実的な生き方が心配で訪ねてくる。グリフは夜中に勤務先で「不可視スーツ」を着てうろうろしていたのがばれて(見えないというのはあくまでも彼の幻想。実際には可視スーツでしかない)、職場を首になった。その彼をトニーが襲って半殺しにする。また、夜に怪しい人間がスーパーマンルックでうろうろしていることを気味悪がっている近所の通報で刑事が張り込むようになり、グリフは捕まって、説教される羽目になる。

彼の同調者はいまやメロディ一人になる。ティムがグリフを心配して訪ねてくるが、グリフとメロディはコミッショナーの要請により(これはMission Impossible, 『スパイ大作戦』もどき)再び事件が起きた現場へ「出動」する。怒ったティム。大人になれとグリフを諭す。

ある日の夕食時、「大真面目」な表情のグリフがメロディの家で夕食を彼女、そしてその両親ととっている。両親は娘がついに落ち着いてくれると喜んでいるが、メロディはグリフをなじる。帰宅したグリフをアパードまで追ってきたメロディはミッションを忘れたのかとグリフを責める。グリフは「大人にならなきゃ」という。それをようやく受け入れるメロディ。

英語のWikiにあるようにトロント国際映画祭とベルリン国際映画祭提出作品で、とくにベルリンでは青少年部門で高い支持を得たようである。当然といえば当然。とても自然な感じのそして有機的な感じの作品に仕上がっているから。硬質のアニメとは全く違うアプローチであり、フューチャリスティックなファンタジーとは逆のベクトルを志向している。観客に挑戦してくるのではなく、むしろほっとさせる作品である。それでいて、きわめてペダンティックで、よくみれば歴史上のマンガ、アニメ作品のコラージュなのである。

ゼミの吉田君が、そして彼の仲間がどう反応するか、とても楽しみである。