昨日、今日と二日間にわたってのワークショップが終了した。
英語教員対象の研修で、一年生に使用するテキストが則っている教授法、"Communicative Approach"の主旨と実際の教え方、使い方を分かってもらうためのものだった。前の記事に書いたように、旧態依然とした「文法・訳読」に依存した教え方をやめない英語教師に、「コミュニケーションのための英語、生きた英語」とはどういうものかを理解してもらうためのものだった。彼ら自身が英語を使ってのコミュニケーションが得意ではないという問題もあって、英語のみで授業することができないという、笑い話のような本当の話がある。こういう状況をなんとか打破したいとずっと以前から思ってはいたが、多勢に無勢、なかなか実現できなかった。だから今回の研修はとにもかくにも一歩は前進したことになる。
私の出身中学・高校は神戸女学院だったので、中学に入学してすぐから英語の授業はすべて英語で行われていた。"Direct Method"という教え方だったのだが、これは女学院の英語教育に貢献したアメリカ人宣教師が編み出した教授法で、残念ながらどの学校にも適用できるものではない。でも"Direct Method"という教授法は有効である。その後、YMCAで"Direct Method"の一派のGDM(Graded Direct Method)に出会って、その有効性を確認した。ただこれもあまり一般的な教授法ではなかった。
その後、大学で教え始めたころに"Communicative Approach"に出会い、これも優れた教授法だと認識した。これはアメリカでも外国語教育に広く採用されている教授法だった。私がアメリカの大学でTAとして日本語を教えた際もこの教授法に則ったテキストを使った。これはアメリカの出版社、McGraw-Hillのものだった。
そして、今回このMcGraw-Hillが全面的にこのワークショップをサポートしてくれた。無料でこの機会を提供してくれたので、感謝の言葉もないくらいである。ほんとうにありがたい!
今回の講師の方は30年以上も英語教育に携わってこられた方で、英語教師対象の研修についても長年の経験がおありである。イギリス人で、現在はメキシコ在住である。
今日の研修は一から十まで感動の連続だったのだが、なかでも「学習者が間違っても直さない。するなら次の機会にする」、「学習者をおびえさせない、間違いをどんどんおかさせる」、「学習者にしゃべらせ、教師が喋る機会を最小限にする」、「英語を話すのが楽しいと思わせる」、「文法はできるだけ教えないで、オーラル中心にする」etc.
非常にパワフル、エネルギッシュな人で、そのパワーに感染して、出席している英語教師たちも生き生きと常になく楽しげだった!「教師は役者でいなさい、道化師でいなさい」という彼のすすめは、出席者にどう聞こえたのだろう。私などはいつも道化師を演じているから、これほどしっくりくる助言はなかったけれど。とにかく今まで出会った「教師」の中でももっとも優れた教師のお一人だった。
はたしてこの4月から、研修の成果が出るかどうかは微妙だけれど、諦めないで前向きに考えたいと思った。これも彼の楽天主義とポジティブさの影響だろう。