yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち』@シネリーブル神戸8月17日

18日に終了と聞いて慌てて行ってきた。原題はBackstage。こちらの方が内容をよく伝えていると思う。では公式サイトからの情報を。

監督: マレーネ・イヨネスコ
出演: マチュー・ガニオ、アニエス・ルテステュ、ウリヤーナ・ロパートキナ

燦然と輝く華麗なるバレエの歴史は、彼らと共に──

“夢を継ぐ者たち”の中心に立つのは、2013年にエトワールを退いたアニエス・ルテステュ。“ニジンスキーの再来”と称えられたルドルフ・ヌレエフから直接指導を受けた最後の世代だ。彼の教えを注目のエトワールのアマンディーヌ・アルビッソンや、ニュージーランド人の父と日本人の母を持つプルミエール・ダンスーズのオニール八菜に託そうとする姿が映し出される。

さらに、主席エトワールとして、パリ・オペラ座を代表する存在となったマチュー・ガニオが出演した、マリインスキー劇場の『ジゼル』の舞台も披露される。今や人気・実力共にトップを誇る彼のダンサーという職業に対する本音も聞くことが出来る。また、コンテンポラリー・ダンスの最先端を走る振付家ウィリアム・フォーサイス、前芸術監督でナタリー・ポートマンの夫のバンジャマン・ミルピエも登場する。そして、自身のドキュメンタリー映画を監督したイヨネスコと特別な信頼関係を結んだ、マリインスキー・バレエプリンシパル、ウリヤーナ・ロパートキナも特別に出演。現代最高のオデットと称えられるダンサーとして、驚くほどにストイックなリハーサル風景を見せてくれる。

恐れを知らない革新の積み重ねこそが伝統を維持すると教えてくれる、発見と感動のドキュメンタリー!

ひとこといわせていただければ、最後のフレーズ、「発見と感動のドキュメンタリー!」は不要です。あえてBackstageにした意味がなくなり、ぶち壊しになります。

全編の半分以上はアニエス・ルテステュへのインタビューから成り立っている。また彼女の稽古の様子、また後進の指導の様子にも随分と時間が割かれていた。各舞台の核になるダンサーの練習風景に焦点を合わせ、それを映し出していたのだけれど、映画監督が必要と見做した人物は多少長めだった。おそらくルテステュ談の裏付けを取るという意味もあったのだろう。退屈なところもあったし、「えっ、なんでこの人なの?」っていぶかしむ箇所もあるにはあった。ドキュメンタリーだからある程度「客観化」する作業は必要だったはずだけど、監督の「意思」は、結構あからさまに見えていた。

練習風景で最も印象的だったのは、なんといってもWilliam Forsytheが実際に振り付けていたIn the Middle, Somewhat Elevated。なんと斬新な!と何度も(心のうちで)叫んでしまった。古典的な動作をまず否定したところから始めるって、ダンサーたちはさぞ苦労したことだろう。動きを自身で工夫しなくてはならないんだから。身体能力もそうだけど、芸術的センスも試される。まるで死闘。それを黙々とまるで聖人のように務めるダンサーたち。緻密な動きとそれが作り出す流れ、それを切り刻むかのような、イレギュラーな動作。そう、サイボーグを連想してしまった。でも、それら一つ一つが象徴的である点で、能にも通じていた。動と静と何を極限まで追求するかとういう違いはあるにしても。

死闘といえば、マリインスキーのウリヤーナ・ロパートキナの稽古もすごかった。鬼気迫っていた。舞台では多分(見たことがないので)世にも美しい「白鳥」なのに、裏ではこの研鑽だったんだと、改めて当たり前のことを確認したりした。

ガニオファンにはよだれが出そうなほど、喜ばしいことだっただろうけど、彼の練習風景は丁寧に映し出されていた。インタビューでも彼の優しい人となりがよくわかって、これはとてもよかった。

でも、ミルピエが時折映っていたのに、まったく正面からは取り上げられなくて不満。ほぼ「無視」に見えた。稽古風景に映り込んでいたのだけど、他の振付師と違い、なんとも美しい身体と動き。群集の中にいてもすぐにピンポイントでわかる。この後、彼はパリ・オペラ座を出ていったんですよね。保守的な場にはそぐわなかったんでしょう。あの才能を空間に括りこむのは無理だったということ。

こういうところに監督の思惑を感じてしまった。『ラ・バヤデール』の稽古風景で、オニール・八菜さんにやたらと執心している感があったのもそれ?もちろん当方も日本関係者が注目されるのは嬉しくないわけではないけど、でも「なんで彼女が?」って思った。自己主張の強いフランス人に比べて大人しいから?

ともあれ、いろいろな裏がわかるという点で、見ておいてよかった。