yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『乙女与三郎』劇団花吹雪@京橋羅い舞座11月26日第一部

ずっと以前、新開地劇場で見て、笑い転げたお芝居。その時は『お富与三郎』というタイトルだった。DVDを持っているので、何度も見直し、その度に笑い転げている。

とにかく桜春之丞さんのぶっ飛びメークが強烈。出てこられたとき、どなたか判らなかったほど。梅毒にやられて、鼻がもげているという設定。新開地で見たときとはメークを多少変えておられた。長〜い付けまつ毛!それもラメ入りの。ものすごい顔。着物は同じ。ゴザを持って登場するのも同じ。このお芝居も歌舞伎の『切られ与三』のもじり。お笑いになっている。パロディだというものの、原型を留めないほどの改編が施されている。

『切られ与三』では囲われ者のお富と通じ合ったがため、その旦那から顔を滅多切りにされ川に投げ込まれた与三郎。なんとか命だけはとりとめた。お富は旦那の成敗を逃れて入水するが助け出される。数年経ち、与三郎は偶然にもお富と再会する。お富にはまたもや旦那がいた。それは彼女を助けた男だった。あとでこの人が実は彼女の実の兄だとわかる。自分の妹と知って、面倒を見ていたのだった。それを知らない与三郎は怒りと嫉妬が収まらない。それがあの有名な「しがねえ恋の情けが仇・・」で始まる与三郎の恨み節となって、吐露されている。

で、この『乙女与三郎』では顔が「変形」したのはお富ならぬ乙女(春之丞)。
それも当然、彼女は実は芸者、お富の「代理」。お富(かおり)は三年前に将来を約束し合った与三郎(京之介)の真意を確かめようと、梅毒で顔の崩れた乙女を代理として送り込んだのだった。つまり『切られ与三』の人物関係を逆転させているわけ。また、偶然出会うわけではなく、わざわざ家を訪れるというのも、元の『切られ与三』とは違えてある。また『切られ与三』ではお富を囲っているのは和泉屋の大番頭多左衛門だけど、こちらは与三郎の両親(寿美、京誉)がそれに当たるのかも。さらに、重要な狂言回し役の蝙蝠安は花吹雪版では健之助さんが務められた。前回見た折は梁太郎さんだった。この蝙蝠安、歌舞伎ほど重要な役回りではない。また幇間役は愛之介さん。最後、与三郎と本当のお富が一緒になるという設定にしてあった。

終始抱腹絶倒の喜劇。でも最後、乙女さんがちょっと気の毒になったりして。このおかしさの中にもホロリとさせる終わり方、秀逸だった。

どの役者もそのニンにあった役が振り当てられていて、安心して見ていられる。ニンがあっているというだけではなく。実力があるからどんな役でもこなすことができるんだろう。この日は3回公演。芝居、ショー共に時間短縮が施されていた。舞踊ショーは女方大会と称して全員女方で登場。普段女方をあまり見ない愛之介さんのものには、特に唖然呆然だった。梁太郎さんの女方、とても色ぽくて見直した。素敵だった。