yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

菊之助と梅枝の『与話情浮名横櫛』三月花形歌舞伎@京都南座 3月2日初日昼の部

以下「歌舞伎美人」のサイトからの引用。

木更津海岸見染めの場/源氏店の場

<配役>
   
与三郎:菊之助
お富:梅枝
蝙蝠の安五郎:團蔵
鳶頭金五郎:松緑
和泉屋多左衛門:彦三郎


<みどころ>
◆ 若旦那の一目惚れから生まれた、しがねぇ恋の行く末は・・・
 
「木更津海岸見染めの場」
大店伊豆屋の若旦那与三郎が鳶頭の金五郎に連れられて浜見物をしていると、木更津界隈の顔役である赤間玄左衛門の妾お富と出会い、浜辺で互いに一目惚れします。
 

「源氏店の場」
2人の仲を知った赤間により、与三郎は瀕死の重傷を負い、お富は身投げをしたところを和泉屋多左衛門に救われました。それから3年が経過。今は、多左衛門のところで囲われ者となっているお富のもとに、時折たかりにくる蝙蝠安が、相棒をつれて訪れます。頬被りで傷だらけの顔を隠したその相棒こそ…。
 

「しがねぇ恋の情けが仇」の名ぜりふが有名な世話物です。

御存知、『切られ与三』。
かなり「問題だ」と感じたのは、二幕目の「赤間別荘の場、木更津浜辺の場」を端折ったこと。一幕目の「見染め」から三幕目の「源氏店」に飛ぶのはかなりの無理がある。いくら観客があらかじめ筋を知っているにしてもである。あまりにも唐突な感じがする。特に「赤間別荘の場、木更津浜辺の場」で与三郎の顔に傷をつけたお富の旦那、赤間源左衛門の仕打ちが後に与三郎とお富を「復讐」という目的で結びつけるわけで、それはこの狂言の軸にもなっている。端折るなら、よくあるようにむしろ「見染めの場」の方が差し支えはより少なかったのでは。

菊之助が与三郎というのも、ニンに合っていない気がした。やっぱりお富をやって欲しかった。彼が捨て鉢になった与三郎を演じるにはかなりの無理があった。どこまでも「品の良い」坊ちゃま然が消えない。与三郎の人物造型の面白さは、一重に以前の大店の坊ちゃん的風情が「源氏店」ではゆすり、たかりを平気でするならず者になるという、そのギャップにあるわけで、その意外性が描ききれないと、失敗ということになる。今日の彼にはそのギャップの妙味が描ききれていなかったように思う。

梅枝のお富も、『GOEMON』の石田局、『暗闇の丑松』のお米役に比べると、物足らなかった。お米が彼のニンにぴったりだったのは、お米が鉄火タイプの女ではなかったからかもしれない。丑松の陰になるどちらかというと控え目な女性である。一方お富は、お米よりずっと複雑なキャラクターである。受け身ばかりでない、かなり積極的な面もある。それに何よりもその色気、色香である。これを出すには、やはりそれ相応の年齢と「修行」がいるのかもしれない。

手許にある映画版の『切られ与三郎』では、与三郎を市川雷蔵、お富を淡路恵子で、この配役はそれぞれのニンに合っていた。DVD版の「歌舞伎名作選」では与三郎を十一世團十郎、お富を六世歌右衛門のようである。この配役以上の配役はないでしょう。いつか入手して観たいと考えている。