yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『赤い陣羽織(あかいじんばおり)』十二月大歌舞伎@歌舞伎座12月25日昼の部

以下は、『赤い陣羽織』の「歌舞伎美人」からの「配役」と「みどころ」。

木下順二
坂東玉三郎 演出

<配役>
お代官     中車
お代官のこぶん 亀寿
女房      児太郎
お代官の奥方  吉弥
おやじ    門之助

<みどころ>
お代官とおやじたちの笑いあふれる痛快な舞台
 ある村に、派手な赤い陣羽織を着たお代官がいました。この村には、姿形がお代官と似て、見かけは悪いながら人のいい百姓のおやじと、美人で気だてのいい女房が仲よく暮らしています。女房に惚れているお代官は、口実をつくりおやじを捕らえると、その隙に女房をわがものにしようとします。やっとの思いで逃げ出したおやじが家に戻ると、そこにはお代官が着ている赤い陣羽織が脱ぎ捨てられていました。実はお代官のたくらみは見事失敗していたのですが、女房を手籠めにされたと早合点したおやじは自分とそっくりなお代官のふりをして仕返しをしようと、赤い陣羽織を着て、代官屋敷に乗り込みます。お代官は慌てて屋敷に戻りますが…。
 劇作家木下順二の民話劇をもとにした舞台です。痛快な物語をお楽しみください。

ほのぼのとしていて、ずっとその余韻が残る。

中車のあのゲジゲジ眉の風貌、忘れられないほど強烈だった。「中車」って聞いたら、これからはあの顔が思い浮かぶかも。もちろん、それは彼の卓抜の演技力にも負っているだろう。こういうモダンな役柄には、他の役者が及ばないほどはまっている。それは彼の歌舞伎界外での俳優としてのキャリアが反映しているのは間違いない。今年5月明治座での『あんまと泥棒』にもその経歴の「成果」は遺憾なく発揮されていた。あそこでは猿之助を喰ってしまう場面すらあったくらいだから。

この狂言では助平な代官役。百姓の女房に言い寄るのだけど、すべて手のうちは曝け出されている。挙げ句の果てにさんざん虚仮にされ、自分の女房にも嗤われる始末。なんとなく「のどか」感のあるこの狂言、まさに狂言の笑いそのものを思いださせる。また、『今昔物語集』に出て来るあの貪欲な受領のことも思いださせる。地方の役人の民衆泣かせの勝手ぶりをこういう風に風刺し、嗤うという劇作法。それはいかにも木下順二の「民話劇」らしいとも思う。江戸の芝居というより、やっぱり中世風の劇。

玉三郎が演出したというのも、面白い。彼の胸を借りて、歌舞伎っぽくないカブキを舞台化したということかも。

おどろいたのは、児太郎。『十種香』の濡衣にも感心したけれど、この女房はそれ以上に感心した。百姓の女房でありながら、かっては茶屋勤めをしたことがあるという想定。だから代官が目をつけるだけの色香をもっていなくてはならない。それでいて夫想いの愛情深い女性。児太郎はそんな女の色香と純真・朴訥とを上手くバランスをとって演じていた。

おやじ役の門之助も良かった。あまりに若々しいので、最初彼とは気づかなかった。あの『天守物語』の舌長姥の強烈な印象があるので、余計そう。でも役にしっかりと入り込んで、どうみてもちょっとボーとした人の良い百姓にしかみえなかった。