yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『菅原伝授手習鑑』国立文楽劇場開場30周年記念
七世竹本住大夫引退公演
4月10日昼の部

通し狂言 『菅原伝授手習鑑』
第1部
<初 段>  
大内の段
 
加茂堤の段
       
筆法伝授の段
       
築地の段
 

<二段目> 
杖折檻の段
       
東天紅の段
       
丞相名残の段


国立文楽劇場へはここ20年近くの間、年に5、6回以上は来ているが、こんなに多い人は初めてだった。住大夫さん引退公演ということで、地方からも駆けつけた人がけっこういたようである。これだけ観客が多いと、演じる側もやりがいがあるのだろう。大夫も、三味線弾も、そして人形遣いも生き生きとして、楽しげだった。観客は相変わらず年配者が多いものの(つまり全体にくすんだ感じ)、いつになく華やいだ雰囲気だった。舞台と客席の息が一体となっていた。これもこの文楽劇場では初めての経験。東京の国立小劇場公演の際には何回かあったけど。あちらはだいたい満席のことが多いから、ある意味当然なのだが。

住大夫さんは第二部で出られるので、今日は拝見していない。25日に第二部を聴きに来るので、それも楽しみである。

『菅原伝授手習鑑』は文楽傑作の一つ。歌舞伎でもよく乗るが、たいていは一段のみ。文楽でも通しでみたのは初めて。今日前半を通して観て、今まで観てきた断片が一つに繋がり、腑に落ちた。それも収穫。

チラシの表にあった公演案内は画像で貼付ける。配役表も明日写真にとってここに貼付けるつもり。

良かったもの。
「筆法伝授の段」の津駒大夫さんの語り。住大夫系列に相応しく重厚だった。

「築地の段」の清志郎さんの三味線。彼の三味線ファンとしては先日「杉本文楽」でも聴いた清澄な音を聴けて満足。

そしてもちろん呂勢大夫さん。今回は「杖折檻の段」を語った。高い声が大分渋くなっていて、以前よりずっと重厚感があった。

「東天紅の段」の咲甫大夫さんの艶のある(独特のうなり節の)語りもよかった。三味線の宗助さん、あいかわらず手堅い演奏。

極めつけはやっぱり「丞相名残の段」の切語り、咲大夫さんだろう。山城少掾から彼のお父上の先々代の綱大夫へと。そして綱大夫から彼へと連なる系譜をきちんと埋められ確かなものにされた。1時間に及ぶ長い語り。観客を感動の渦へと巻き込みながら、最後まで務められた。すばらしい語りだった。三味線燕三さんも、語りに負けないレベルの高さだった。咲大夫さん、一時病気をされたこともあり、大丈夫かと心配したこともなかったわけではないけど、これで完全に先輩の切語りたちのあとに続くことになったのでは。お父様の綱大夫さんの演奏は聴いたことがないけど、彼の芸談を読んだことがある。謙虚で勉強熱心なのがわかる楽しい芸談だった。

若手、といってもみなさん30代後半から40代だけど、が育ってきていて、文楽の未来は明るいと信じれる公演だった。先日、「杉本文楽」にひどく失望したあとなので、余計そう感じた。

以下チラシの表。語る住大夫さんの姿に胸が熱くなる。