yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)』夏休み文楽特別公演@国立文楽劇場7月21日第2部

『生写朝顔話』の構成は以下の6段。

 宇治川蛍狩の段/真葛が原茶店の段/岡崎隠れ家の段/
 明石浦船別れの段/薬売りの段/浜松小屋の段

第2部全部と第3部の後半で「通し」になっていてる。残念ながら第3部は観ていない。ただ第3部の「嶋田宿笑い薬の段」から「宿屋の段」、「大井川の段」は以前に観ている。でも若返った演者でみておきたかった。かなり残念。

以下にサイトに掲載されてたチラシを。

それにしてもこの若返り!大夫も三味線弾きも、そして人形遣いもすべて若返っていた。それにつれて観客も若返った印象。第一、観客数が数年前とは比べるべくもなく増加している。いくら休日であっても、お昼の部で満席なんて、以前では考えられなかった。この観客数の飛躍的増加で、ネットで良席が取れなくなった。私がいつも取っていた席は前から5列目までの上手の床のすぐ傍の席。千秋楽までためしたけど、ネットでは取りたい席が取れないことが分かり、仕方なく直接劇場へ。やっぱりありました。前から3列目の右端席が。

この日の朝、新聞で源大夫さんが亡くなられたことを知った。ずっと体調がお悪く、去年引退されていた。文楽を見始めたころ、彼の芸談にいろいろ教えられた。ご子息の藤蔵さんは第3部、『生写朝顔話』の「嶋田宿笑い薬の段」で文字久大夫さんの語りで「次」を弾くことになっていた。

今までは出番がほとんどなかった演者さんたちがこの狂言を支えているのをみるのは、こちらまでその若い清新なパワーが迫ってくるようで、うれしくなる。「岡崎隠れ家の段」の「中」担当の大夫三味線ともに若手。でも上手い。この段の「奥」の三味線は私の大好きな富助さんで、これにも顔がにやけてしまう。語りの千歳大夫さん、この段の萩野の祐仙の滑稽さを生き生きと語られて、上手い!この「ずっこけ」が第3部の「笑い薬の段」へと引き継がれることになる。悲劇の中で唯一のコミカルなところ。

次の「薬売りの段」の咲甫大夫さんと錦糸さんの組み合わせも安定感抜群。このお二人はずっと以前から頭角を現しているお二人。

第2部最後の「浜松小屋の段」は胸が苦しくなるような悲惨なもの。主人公深雪は落ちぶれ盲目の乞食になっている。彼女の苦悩を綿々と語って聞かせるのは呂勢さん。今まで聴いて来た中でもっとも渋かった。嫋々を謳い上げるのだけど、思わず涙が。ハンカチを目にあてている観客もおられた。三味線は人間国宝の清治さん。淡々と弾かれるさま、一幅の絵のように静謐感に満ちあふれている。「情熱的な」富助さんといつも比べてしまう。

出がけに、観客が口々に「良かった!」と言い合っていた。これも今までの文楽公演との違い。充実した気が劇場に満ちていた。