yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

エキゾティシズムにあふれた『ラ・バヤデール』La Bayadère in 「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2018/19」@TOHOシネマズ西宮 1月18日

 

以下、公式サイトからの情報。サイトもリンクしておく。 

ラ・バヤデール | 「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」公式サイト

  • 【振付】マリウス・プティパ
  • 【追加振付】ナタリア・マカロワ
  • 【音楽】レオン・ミンクス
  • 【指揮】ボリス・グルージン
  • 【出演】

ニキヤ(神殿の舞姫):マリアネラ・ヌニェス
ソロル(戦士):ワディム・ムンタギロフ
ガムザッティ(ラジャの娘):ナタリア・オシポワ
ハイ・ブラーミン(大僧正):ギャリー・エイヴィス
ラジャ(国王):トーマス・ホワイトヘッド
マグダヴェーヤ(苦行僧の長):アクリ瑠嘉
アヤ(ガムザッティの召使):クリステン・マクナリー
ソロルの友人:ニコル・エドモンズ

【第1幕】
ジャンベの踊り
マヤラ・マグリ、ベアトリス・スティクス=ブルネル
パ・ダクシオン
エリザベス・ハロッド、ミーガン・グレース・ヒンキス
アナ・ローズ・オサリヴァン、ロマニー・パジャック
クレア・カルヴァート、金子扶生
マヤラ・マグリ、ベアトリス・スティクス=ブルネル
リース・クラーク、ニコル・エドモンズ

【第2幕】
影の王国(ヴァリエーション1): 崔 由姫
影の王国(ヴァリエーション2): ヤスミン・ナグディ
影の王国(ヴァリエーション3): 高田 茜

【第3幕】
ブロンズ・アイドル

アレクサンダー・キャンベル

<みどころ>

婚約式で繰り広げられる華麗な踊りの数々には酔わされ、影の王国で白いチュチュの群舞が一糸乱れぬ動きを見せる静謐で幽玄な世界にはクラシック・バレエの美の極致がある。戦士ソロルのダイナミックな踊りは男性バレエダンサーにとって高難度で、超絶技巧の限りを尽くしたもの。ソ連から亡命後国際的に活躍した偉大なバレリーナ、ナタリア・マカロワによる演出は、よりドラマ性を重視しており、『ラ・バヤデール』の決定版と言われている。

<あらすじ>
古代インド。神殿の舞姫ニキヤと、高貴な戦士ソロルはひそかに永遠の愛を誓う。しかしラジャが娘ガムザッティとソロルを結婚させることを決め、ソロルもガムザッティの美しさに惑わされて誓いを忘れる。ニキヤに横恋慕をしている大僧正から、ニキヤとソロルの関係を聞いたラジャは、ニキヤを始末することを思いつく。ガムザッティはニキヤにソロルを諦めることを迫るがニキヤは逆上し、ガムザッティもニキヤを亡き者にしようと決意。ガムザッティとソロルの婚約式でニキヤは踊るが、ラジャ親子の策略で花籠に仕組まれた毒蛇に噛まれて息絶える。
阿片に溺れるソロルは、影の王国で踊るニキヤの幻を見る。ガムザッティとの結婚式で再びソロルはニキヤの幻影に取りつかれる。神の怒りにより神殿は崩壊。天に上ったニキヤとソロルの魂は永遠の愛の中で結ばれる。

『マダム・バタフライ』の比ではないほど、ちょっと斜め上のエキゾティシズム。ツッコミどころ満載ではある。古代インドが舞台になっているとのことだけれど、「インド人も真っ青」かもしれない。インドというより、仏像や衣装はタイ国の産に見えた。でも、バレエ作品としてはとてもよくできていた。

フランス人振付師のマリウス・プティパがマリインスキーバレエにいたときに振り付けた作品。1877年が初演なので、141年前のもの。「西欧」世界へのお披露目は1941年のキーロフバレエ団公演を待たなくてはならなかった。その後、1980年にナタリヤ・マカロワNatalia Makarovaが、アメリカン・バレエ・シアター(ニューヨーク)で最初に全編を上演した。シネマ版ではこの経緯を二人の解説者(お名前がわからない)が明らかにしている。また、舞台と出演者やマカロワへのインタビュー、談話等で演出、上演上の苦労、工夫も明かされている。シネマ版が実際の舞台を見るより有利な点があるとしたら、まさにこれらのバックステージ的な話が聞けるところだろう。

もっとも興味深かったのは、今回の舞台演出家へのインタビュー。なんと主役二人—ヌニェス/ オシポワ—は日替わりで役交換をしているとか。最近のバレエ界での「流行」に乗ったんだと、冗談めかして話しておられた。これは『白鳥の湖』でのオデットとオディールを連想させる。この場合は一人のダンサーが演じ分けるのだけれど。『ラ・バヤデール』での主役交換も「ダブル」を表出しようとする目論見なのかもしれない。正と邪、善と悪が表裏一体になっていることを示している?この辺りは、古典バレエの世界が例外なく立ち上がらせるサイコアナリティカル深層でもある。

舞台で印象的だったのは、やはり例の「闇の王国」でのcorps de ballet部。24人の若いダンサーたちが一糸乱れなく踊る。単調な振りを何度も繰り返す。もちろん個々の緊張感がビンビンと伝わってくるのではあるけれど、全体として見ると催眠的(mesmerizing)効果が絶大だった。これもサイコアナリティカル。

さらに、結末の付け方も『白鳥の湖』に似ている。『白鳥の湖』では王子が邪にハマったため、オデットは死んでしまうのだけれど、『ラ・バヤデール』でもソロルは邪悪なガムザッティの計略にはまってしまい、その結果ニキヤは死ぬ。でも最後は魂と魂が「結ばれる」という設定。ロマン派の典型的なパターンを踏襲しているように感じた。ロマン派の衣を着せて、内実は怖〜い世界を描き切っているのかもしれない。

私はどうもロイヤル・バレエとの(特に主要ダンサーたちとの)「相性」が悪いようで、2013年の来日公演『不思議の国のアリス』での主役交替にがっかりしたのを皮切りに、現地ロンドン、コベントガーデンでの二度のバレエ公演も、また2017年の来日公演も、失望とまではいかないけれど期待はずれだった。唯一感心したのは、シネマ版『白鳥の湖』。リアム・スカーレットの斬新な演出だった。理由の一つが不揃いなcorps de balletではあった。でも最近は揃っていないことが、ロイヤル・バレエの個性かもしれないと思い始めていた。ただ、極めてよく揃っていた今回のcorps de balletには感激した。『ガーディアン』をはじめ現地紙の評もいいようである。

個別のダンサーで言えば、やはりワディム・ムンタギロフ。第二幕での回転しながらの高い跳躍、それも立て続けてなんどもには、思わずため息が出た。羽生結弦さんの華麗なジャンプを想起してしまった。ナタリア・オシポワは、さすがロイヤルを代表するプリンシパル!彼女が(準)主役を張るのを見るのは、多分初めて。肉感的なところが、いかにもロイヤル好みだなと思った。対照的だったのがマリアネラ・ヌニェス。彼女はシネマ版も含めて数回見ている。「血を吐きながら練習しているのでは?」と思わせる生真面目さを感じる。最高峰の技術と表現力を維持するのは、並大抵のことではないだろう。

ロイヤルとの「相性」が良くないといったのは、アジア系を多く使うところ。その一員としては喜ぶべきなのかもしれないけど、体型的にやはりハンディがあるような。見ていると、いつも居心地わるさを感じてしまう自分がいる。