yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

テーマ「風(ふう)と色」という着眼が面白いin「TTR能プロジェクト 企画公演」@神戸湊川神社神能殿 2月20日

小鼓の成田達志師と大鼓の山本哲也師が企画・運営する「TTR能プロジェクト」、何回か見てきているけれど、今回のものが最も面白かった。主たる演者は京都勢、そこに大阪から大槻裕一さんが加わっている。上方というと大阪をさしてしまうけれど、こちらは上方でもかなり「風」「色」ともに大阪とはかなり異なる京都の演者を揃えたのが斬新な企画。

能を本格的に見始めて4年あまり、東京、地元の神戸・阪神間と見てきて、やはり京都が頭抜けて企画力が優れているし、それを実行できる優れた演者が揃っていると確信するようになった。まあ、私見に過ぎないのですけれどね。斬新な企画も京都発のことが多いように思う。このTTR能プロジェクトもその一つである。こういう企画が可能になるのは、京都・大阪の特に京都勢の仲がいいからだと感じる。派閥争いはあるのかもしれないけれど、それを超えて「まことの花」を追求する気概に満ちている。バラバラ感が少なく、どこか底流でつながっている感がある。これも私見ではあるのですが。つまり「風」と「色」が共通していたり、違っていたりしても、どこかで通底しているのが京都と大阪ということになる?

今回の公演で面白かったのが舞比べ、弾き比べの企画。舞囃子も囃子演奏も全てが2本立てになっていた。中でも「実験演奏」として延年の舞」と「勧進帳」の小鼓・大鼓の弾き比べは興味深かった。今まであまりなかった企画だと思う。

素囃子「延年の舞」x 2  大鼓の流儀による手組の違い検証

① 笛:左鴻泰弘 小鼓:成田達志 大鼓:河村大(石井流)

② 笛:左鴻泰弘 小鼓:成田達志 大鼓:山本哲也(大倉流)

これは①と②の演奏を併行させてのもの。普段は気づかない大鼓手組みの違いがよくわかる。

独調 「勧進帳」x 2  小鼓の流儀による手組の違い検証

①  謡:浦田保親 小鼓:吉阪一郎(大倉流)

② 謡:浦田保親 小鼓:成田達志(幸流)

こちらも演奏を併行させていて、手組みの違いを際立たせていた。

最後の「実験演奏」の一つ目は『乱』を取り上げて、小鼓方二人、大鼓方二人の競演形式になっていた。

シテ:大槻裕一

地謡:林宗一郎;浦田保親;河村晴道

笛:左鴻泰弘 太鼓:前川光範

小鼓:吉阪一郎;成田達志

大鼓:河村大;山本哲也

続いての居囃子「獅子」はお囃子肩全員による大競演。「獅子」はお囃子のみで演じられるハイライト曲。大好きな曲である。ここでも競演によって、それぞれ小鼓、大鼓の微妙な違いが浮き彫りにされていた。

笛:斉藤敦  太鼓:前川光範

小鼓:吉阪一郎;成田達志

大鼓:河村大;山本哲也

楽しかった。おそらく来場者も同じ想いだったと確信している。何よりも成田師と山本師のトーク兼解説が親切かつ啓発的だった。加えて当日いただいたパンフレットが大傑作!全演者へのQ-Aが載せられていて、思わず笑ってしまったり、考え込まされたりした。永久保存するつもりである。