yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring songはまさに「伝奇ロマン」の傑作だった

「今年最高のアニメ映画」とYouTubeに絶賛投稿が多数あったので、一体どんな作品なのだろうと興味津々で出かけた。映画館で劇場版アニメを観るのは『マクロスF〜サヨナラノツバサ〜』と『艦これ』以来である。これらは開映前から入り口に長蛇の列だった。今回も予約サイトに入ったら、なんと残りわずか。初日以来毎日4回上映でこの混雑。見終わっての感想は、「了解です!」。

ネットに掲載された紹介文が以下。

www.4gamer.net

概要をお借りする。

2020年8月15日(土)より全国156館にて公開した劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」III.spring song。公開週末の動員・興行収入ランキングでは1位を獲得し、これにて三部作すべてにおいて1位獲得という記録に。そして8月28日(金)時点で第三章は動員65万人、興行収入10億6千万円を突破しております。

イントロダクション
手にした者の願いを叶えるという万能の願望機「聖杯」をめぐる物語を描いた、ヴィジュアルノベルゲーム『Fate/stay night』。劇場版アニメ三部作として紡がれる最終ルート[Heaven’s Feel](通称・桜ルート)が、ついに完結する。
アニメーション制作を担当するのは、2014年にTVアニメ版[Unlimited Blade Works]を手掛けたufotable。キャラクターデザイン・作画監督として数々のTYPE-MOON作品のアニメ化を手掛けてきた須藤友徳が第一章、第二章に続いて監督を務める。

第三章は「聖杯戦争」の真実と、少年と少女の物語の結末が語られるエピソード。全三章で贈る[Heaven's feel]がたどり着く場所とは──第三章[spring song]は咲き誇り、奏でられる。

正式サイトは以下。

www.fate-sn.com

「聖杯」をめぐるゲームからのアニメ作品。ヨーロッパの「聖杯伝説」特に『アーサー王物語』中の「ランスロット伝説」を素にしているアニメ作品が結構あるのは、ずっと以前にゼミの学生の発表で知ったのだけれど、このアニメにもランスロットが使われていた。*1

ちなみに歌舞伎や江戸戯作では、聖杯ならぬ伝家宝刀を悪者から取り返すという筋書きになる。宝刀奪還を軸にして物語が展開する歌舞伎作品は多々ある。南北の『天竺徳兵衛韓噺』では波切丸、『伊勢音頭恋寝刃』では青江白坂、『祇園祭礼信仰記~金閣寺』では倶利伽羅丸というように。とはいえ、中でも有名なのは馬琴作『南総里見八犬伝』の村雨丸かもしれない。

なんでも原作者、奈須きのこ氏の作品は「新伝綺」と呼ばれるジャンルらしいのだけれど、江戸読本の集大成たる長大伝奇ロマン『八犬伝』の伝統を引き継いでいるように思った。Wikiの紹介によると、奈須きのこ氏(1973年生)は法政大学大学院人文科学研究科修士過程修了とのこと。原作のレベルが高いことがなるほどと納得できた。その続きは以下。 

(奈須きのこ氏は)伝奇と新本格ミステリの融合を目標に執筆活動を続けている。高校時代に殺人鬼を中心にした物語を書きたいと思っていたが、彼の倫理観が殺人鬼を主人公にした作品を許容できなかった。そこで笠井潔の『哲学者の密室』という死の哲学をテーマにした推理小説を手にし、死生観・倫理観に大きく影響を与えた。

久しぶりに懐かしい名前、『テロルの現象学』の著者「笠井潔」に出会った。Wikiに当たると、なんとミステリーの分野に「進出」していたとは。なんと、「美少女ゲーム」にも関心があったとか。

そう、「美少女」なんですよ、おそらくこのアニメ(ゲーム)のキモは。かって斎藤環氏の『戦闘美少女』に啓発されて、「サイボーグ系アニメ作品における美少女」というテーマでプロジェクトを立ち上げたいと考えたことがあった。ずいぶんと日本及び海外の資料を集め、何本か論文も書いたけれど、中途で頓挫。この作品で懐かしい顔に出会った感があった。涼宮ハルヒといい綾波レイといい、日本のアニメ、漫画の一大潮流は「美少女」なんですよね。そういや、この主人公、衛宮士郎は碇シンジを連想させる。また名前の「士郎」は『攻殻機動隊』の作者、士郎正宗氏へのオマージュですよね。 

色々な古今東西の物語、人物の断片を継ぎ合わせ、時代も背景も日本であるような香港などの海外であるようなコラージュ作品としたのだろう。趣向が非常に面白いし、それらが美しく統合されて一大ロマンを形成しているのは、素直にすごいと思った。

*1:聖杯伝説は他の伝説と結びついて複雑な発達をする。アーサー王物語においては、ときに危難の席と結びつく。もっとも複雑な形はトマス・マロリーの『アーサー王の死』において見出される。ここではランスロット伝説と聖杯伝説が融合しており、パーシヴァルは登場こそするものの、その役割は小さくなっている。聖杯の騎士は、聖杯城の王の娘エレインと騎士ランスロットの息子であるガラハッドであるが、アーサー王の円卓の騎士すべてが探索に向かう。そのうちガラハッドを含む3人が聖杯城で聖杯を見ることができる。ほかは探索の過程で脱落し、あるいは挫折して去る。ランスロットは聖杯城に到ることが許されるものの、グィネヴィアとの不義の愛が原因で、聖杯を見ようとした瞬間に倒された。ガラハッドは聖杯を奉じて聖地に至りそこで天に召される。