コロナ禍を機に投資に関心をもつ若い人が増えたというけれど、先日読んだ記事では「若い人の投資先トップ」が定期預金だった。定期預金は貯蓄でしょう?定期といえど、金利はつかないも同然。開いた口が塞がらなかった。 投資教育が全くなされていないことが原因だろう。
アメリカでは小学校から投資についての授業がある。私がアメリカからの帰国後2002年に入ったのが大学の経営学部。1年生のゼミではアメリカの小学生向けオンライン投資教材を使ってのゲーム「持ち金の10万ドルをアメリカ株に投資、どれほど増やせるかの競争」を学生にしてもらった。株式の仕組みだけではなく、その背景を知ることにより、基本的な経済知識を学習するのが目的だった。もちろんニュースなども英語のもの。使われる用語を調べるだけでも、かなりの学習量。投資先を選ぶのには、Yahoo.com/financeで会社のプロフィールを調べなくてはならないので、これも経営、経済の勉強になる。小学生用教材なので、非常にシンプルで業績等を調べるなんてことは、深くはできなかったけれど、それでも今までとは違った教育風景を感じ取ってくれたのではと考えている。学生たち、あまりにものカルチャーギャップに戸惑いの方が大きかったけれど。経営学部なのに、その時知る限りこういう授業はなかったようである。「なんで門外漢の私がやるの?」と残念だった。
昨日の『DIAMOMD online』の記事にこのタイトルにした語が入っていて、膝を打った。曰く、「日本人は『投資』を知らなさすぎる藤野英人×奥野一成「教養としての投資」対談」(8/10(月) 6:01配信)
ここでの奥野氏の主張「本来、投資は一般教養であるべきだと思うのです」というのは非常に頷ける。東京証券取引所が野村証券と米国の大学とで、日本と米国をはじめ世界各国の経済知識に関するアンケートを実施した結果、米国では、金融リテラシーを高めるために、中学・高校でファイナンス教育を取り入れる動きが進んでいることがバックにある。そうそう、私が使った例の教育用の株資産ゲームも「級」が付いていて、小学生から高校まで段階ごとに難易度が上がる仕組みだった。
対する藤野氏もこれに同意。「米国株投資をはじめとしたグローバルな投資の世界において、日本人のヒーローが非常に少ない」という嘆きを述べておられる。グローバルな投資信託も外国勢に乗っかったものが多いという。私は「人任せ」の投資信託はしない主義なので、その辺りの事情はあまりわからないけれど、でも「さもありなん」とは感じる。
この「日本人」枠で、一人だけ例外の投資家が、ダン高橋さんである。何度も動画をアップさせていただいているけれど、それぐらい衝撃を受けた。ほぼ毎日見ていた「日経モーニングサテライト」を見る必要がなくなった。(ハーバード出を売り物にしている)パックンこと間抜けな芸人をコメンテーターに起用したのが失敗だし、番組に出てくる色々な「専門家」よりも、ダンさんの方がはるかに世界経済の現状、これからの展望、予測が的確。こういう怪物がおられたんだ!
10歳まで東京で過ごし、その後家族と渡米。コーネル大学*1を「Magna Cum Laude」(首席グループ)で卒業。そういえば雅子皇后陛下もこのタイトルでハーバードを卒業されていた。その後モルガン・スタンレー社に就職、投資経験を積んだ後、パートナーと投資ファンドを立ちあげた。米国の「トップ100シーリズ」で「投資家トップ100」に選ばれている。
ファンドの自己分を売却してから日本にこの1月に「帰国」(国籍は日本とのこと)。SNSでの情報発信をされている。(日本人に)投資のノウハウを教育するという、強いミッションを持っておられる。
1月以来ほぼ毎日2本動画をYouTubeにアップされている。一本は世界の政治、経済、金融情勢を海外ニュースを元に解説したもので、もう一本が資産運用の方法の解説になっている。彼の信条は「データとチャートからすべてが読める」だと思う。世界情勢について、例えばコロナ感染者数の世界動向もデータとチャートから現状を分析、今後を予想されている。新聞(日本の日経も含めて)を10紙以上読み、そこからの分析であり、その集中力と分析力に常々圧倒されている。日経番組に出演する「トップアナリスト」たちより、ダントツに精緻・精確な分析力。いつも「アタマ、イイ!」と叫びながら見ている。アメリカのCNBC(経済に特化した局)に何人もの名物コメンテーターが出ているけれど、ダンさんの予測の方がはるかに的確だと思う。政治的にニュートラルな姿勢もいい。
ここ数ヶ月は別に英語版をアップされている。チャンネル登録者はすでに19万人を突破。先日の動画では日常生活がアップされていて、まるで禅僧のような生活ぶりに「さすが!」と感心した。とてもストイックなんですよね。
彼が提唱しているのは投資を長期と短期に分けること。長期的投資については6月28日に、短期投資については7月1日に上がっている。
長期のスクリーンショットを撮ったのが以下。
ここでいう「長期積立投資」とはリタイアするまでの資産運用をさしていて、毎月決めた額を決めた投資先に淡々と投資するということ。収入の70-90%をここにある配分で投資続けるということである。数十年あれば、すごい増え方をしているはずである。ただし、日本株にはこれは当たらない(なかった)だろうけれど。アメリカ株をはじめとする海外投資先では、何(十)倍かのリターンがあったはず。
それと、ダンさんのいう「短期」は、デイトレのことではなく、「ポジションを短期に取る」ということ。だいたい1ヶ月から3ヶ月だとのこと。最近では金・銀・ビットコイン、金融株のETFを勧められていて、見事に当たったようである。ダンさんのテクニカル分析がすごいの一言。チャートの読み方は今までに「出会った」チャート分析中、最も数学的である。彼がよく使われるのはMACDやストキャスティックスなのだけど、その算出数式をきちんと解説されている。つい最近はRSIの解説と使い方に感心した。文字通り目を瞠かれた。またETFの比較も非常にためになった。もっと早くに知っておけば過去の死屍累々の失敗が防げたかもである。
こういう教育は日本では教育現場でなされていない。だから最初にあげたように、「投資」と貯蓄の区別もつかない人が多くいるのだろう。また投資と投機の区別がつかない人も。子供に金融リテラシーをつける教育が必要だと思う。
*1:コーネル大学はアメリカ東部のトップエリート校であるアイビーリーグ8校(ブラウン、コロンビア、コーネル、ダートマス、ハーバード、ペンシルベニア、プリンストン、イェール各大学)の一つ。