yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

和歌(うた)の世界観を表現した羽生結弦選手のSP「秋に寄せて」グランプリファイナル in トリノ 2019年12月7日

あまりにも滑らか、あまりにも美しく、それはまさに日本の和歌(うた)世界を展開しているように感じた。しかもそれが能の舞——序の舞・中の舞・急の舞——と共振しているようにも感じた。能そのものは和歌的なものと漢詩的なもののハイブリッド(しかもそれは日本古典の属性)だけれど、羽生結弦さんの演技は、この曲に関しては和歌の色合いが濃いように思う。

和歌は漢詩とは違う。概ね流麗なひらかな表記ということもあるだろうけれど、漢詩の「カクカク」感はなく、滑らかで、柔らかくて、情趣に溢れている。あの羽生選手の美しい演技。まったく滞りなく、まるで水が流れるように演技する美しい肢体。それをみたとき、それがまさに和歌のひらかなのように思えた。そこに刻まれるジャンプ。そのジャンプも流れを止めるのではなく、それに区切りをつけるもの。滑らかさは損なわれない。和歌に時々まじる漢字のよう。

その流れを追って見る。スケートの技術に疎いので間違いがあればご容赦ください。

手の先まで細やかな情緒あふれる美しいイントロ。そして長い序の舞が続く。

4回転サルコーの後、右腕を体の上にかざして手の先を見る所作、そして手を下ろすのだけれどそれを目で追う。腕の所作ひとつひとつが流れるようにスムーズ、しかも溢れる想いを表現している。その思いはあくまでも流線型で表現されている。脚は腕と体の動きに沿っているけれど、違った向きが時折入る。これが素敵。

3回転アクセルの後激しいくるくると回る演技。この後の体の動きがえも言われず美しい。

曲調がドシン、ドシンと打ち付けるものに変わる。ここで4回転トウループ。どこまでも流れを止めないジャンプが美しい。そしてフライイングキャメルスピン。この後、華麗で確信犯的スピンが続く。よりドラマチックになったところで、シットスピン。

ここから中の舞で、完全に転調。そして続けて急の舞。

体全体を使っての動作が激しく、より速くなる、めまぐるしいモーション。そしてステップシークエンスと足換えコンビネーションスピンで終わる。

 

まさに羽生結弦ワールド全開だった。和歌的な世界。溢れ出す情緒、想いの丈が優しくも華やかに表現されていた。 

12月7日は羽生結弦さんのお誕生日。美しい人に美しい萩の花を!