yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

松緑の弁慶がカワイイ 御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)in「芸術祭十月大歌舞伎」@歌舞伎座10月21日昼の部

この狂言もおそらくは天皇皇后両陛下即位の礼を寿ぐという意味が込められた出し物だと思う。どこまでも明るく、めでたく、楽しい舞台に仕上がっていた。下書きで書いていたのに、一ヶ月近くすぎてのアップ。情けない。以下が公式サイトからの概要と演者一覧、それにみどころ。

初世桜田治助 作

利倉幸一 補綴

武蔵坊弁慶    松緑
斎藤次祐家    彦三郎
源義経      坂東亀蔵
鷲尾三郎     松也
駿河次郎     萬太郎
山城四郎     種之助
常陸坊海尊    片岡亀蔵   

富樫左衛門    愛之助

 

荒事の豪快さに満ちた、もうひとつの勧進帳

 山伏に姿を変えて奥州平泉を目指す源義経一行は、加賀国安宅の関で、関守の富樫左衛門と斎藤次祐家らの詮議を受けます。弁慶の忠義に心打たれた富樫は、義経一行と見破りながらも通過を許しますが、斎藤次の疑いは晴れず…。
 弁慶が番卒の首を天水桶に投げ込み、金剛杖で芋を洗うような動きを見せることから「芋洗い勧進帳」とも呼ばれ、勇猛な弁慶が稚気に富んだ泣き姿を見せるなど、大らかさにあふれる荒事のひと幕です。

2014年3月、京都南座でこの作品を見ている。そのときの弁慶も今回と同じく松緑、義経を梅枝、そして冨樫が亀三郎(現彦三郎)だった。記事を残していないので、おぼろげな記憶を辿ってみると、松緑と梅枝の「組み合わせ」が初々しかった印象が残っている。そのちょうど1年前に新橋演舞場でこの二人の『暗闇の丑松』を見て、いたく感動していたところだった。現代劇、古典イキが合っているというか、相性がいいのだと思う。

義経を演じたのが坂東亀蔵。ちょっと大人びた義経だった。亀蔵は好きな役者。とてもすっきりとした役者ぶりで、兄上の坂東彦三郎ともども独自の世界観を展開している。もう一人の「亀蔵」、松嶋屋の亀蔵とは真逆の芸風ですけどね。

人口に膾炙した「勧進帳」を思いっきり断片にバラし、それぞれの場面のハイライト部のみを過剰に膨らましたもの。だからあの弁慶と冨樫の息詰まる掛け合いを期待したら肩透かしを喰う。プロットのみを拝借、それを祝儀的というか祝祭的な狂言に変換してしまっている。

この祝儀版勧進帳のハイライト部・クライマックス部は最後の弁慶の立廻り。番卒たちの首を引きちぎり、それを巨大な天水桶の中に投げ込んでゆく。最後はその天水桶に乗っての見得。豪快であると同時に、コミカル。それがこの祝儀版勧進帳の身上なのだろう。とことん崩し、最後まで「不真面目」。でも楽しい。