yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』@シネリーブル梅田 8月1日

 近いうちに上映が終了するだろうと考えて、慌てて出かけた。午後2時開演なので、立地の良いといえない「シネリーブル梅田」、おそらく観客数は少ないだろうと想像していたら、なんの、8割方入る盛況ぶり。驚いた。夏休みなので、教員が多かったのかもしれない。

この映画について朝日新聞の藤何某という記者が書いているレポがあるけれど、初めにイデオロギーありきという内容で、いただけない。もちろん監督のワイズマン氏に何某かの政治的意図があったのかもしれない。ただ、対象がそういうケチなドグマをする抜けるほどあまりにも巨大、しかも複雑だったのだろう。見事なまでにその意図はかわされてしまっている。この「攻防」を確認するのも、面白い。

図書館が[知の拠点]であるのは、アメリカの大学院にいた折に厭という程思い知らされた。大学図書館ではそれは当然なのかもしれないけれど、公共図書館がそれを意識的に担っているという事実に驚嘆させられる。『ニューヨーク公共図書館』と「対抗」できるのはおそらくBritish Libraryのみだろう。昨年、ロンドン大学図書館にこもっていた折には、残念ながら訪問する機会はなかったけれど。私の研究対象が日本の演劇だったので、ロンドン大図書館の方がはるかに文献を所蔵していたので。

この映画の優れているのは、図書館が単に「本」を提供するだけではなく、それにまつわる知的活動を支え、奨励し、そして定着させているのを、実際のケースを使って証明して見せていること。

以下のサイトに載った映画の概要がそのテーマを表現している。

moviola.jp

以下。

移民への英語講座からホームレスの住宅問題の議論、子どもたちの課外授業、ネット環境のない人たちへの機器の貸し出し、アフリカ系の描かれ方についての講義、高齢者住民のダンス講座……。映画には出てこないが、起業する人たちや芸術家のための資料や映像もふんだんにある。菅谷明子氏著『未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告―(岩波新書)』によると、世界初のゼロックスのコピー機はチェスター・カールソン氏がここに通って見つけた文献をもとに生まれたし、図書館で連日バレエの動画を見ていた移民男性は、のちにニューヨーク・シティ・バレエ団の専属振付師になったという。Libraryを「図書館」とだけ和訳することの限界とともに、彼我の差と羨望を感じる。

とにかく巨大な図書館。2015年2月現在、マンハッタン39箇所、ブロンクス35箇所、スタテンアイランド13箇所。その中核のブライアント・パークにある中央図書館は、今までに見た図書館の中ではもっとも荘厳なもの。ヨーロッパ古典ボザール様式だとか。その古めかしい外観に反して、「インターネットを積極的に活用した情報発信や数多くの教育プログラムを開催しており、ニューヨークにおける総合的な教育・研究機関として機能している」(Wiki)。

ワイズマン監督を突き動かした言葉が以下のものだとか。

図書館は民主主義のための偉大なる機関。恐らく、ある状況において最も民主的なのではないか。図書館は誰もが利用できるし、社会のどんな階層の人たちもやって来る。非常にお金のある人たちもいれば、とても貧しい人たちも、また中間層もみんな、秩序を乱したりしない限り、この図書館を活用している。そのうえ司書も、誰しもに平等に接するよう訓練されている。金持ちだからって特別な注意が払われることはないし、貧しいからといって注意を払われないこともない。

そう、まさにそうなんです。この開放感が日本の図書館とはまるで違う。それは大学図書館にもいえること。知の集積である本のアーカイブ、拠点が図書館。それを利用する者を拒まない。それを利用して何か行動を起こす人を応援する、支援する。この思想が徹底している。教育の一端を担っているという意識が強い。かといって、押し付けはない。このバランスが素晴らしい。実際に向こうの図書館の「洗礼」を受けないと、その決定的な違いというかギャップは日本の人にはわかってもらえないかもしれない。

この映画のワイズマン監督は確か80代後半。この言葉に感動する感性を持っていることに驚かされる。映画を撮り終えた直後にトランプ大統領が誕生したようだけれど、イデオロギー色が極力排されているのも、好感が持てた。

午後2時からの上映で、梅田駅からかなり遠いシネリーブル梅田に到達するまで、あまりの暑さによそうかとなんども思った。。司書、教員、学生が多かったような。夏休みですからね。それと、空中展望台(?)があるせいか、Chinese/ Koreaの団体客が劇場のあるイーストタワーを占拠(?)していた。