テレ朝の連ドラ「緊急取調室」にハマりました。再放送で見たのですが、当分新シリーズのリリースはない?
新趣向の刑事もの
二週間前の再放送で感動。いわゆる2時間ドラマの真逆をゆく内容、構成にまず驚くこと頻り。今までになかったスタイルの刑事もの?長さも46分と短い。
取調官と被疑者との間の心理戦
「相棒シリーズ」も然りだし、最近ではこういうスタイルが主流になりつつあるんでしょうか。50分という限られた時間内に事件発端から解決までを納め、なおかつそこに取調官と被疑者との間の心理戦、微妙な駆け引きを展開させるなんて、今までの刑事ドラマにはなかった趣向だと思います。アメリカのシリーズ物の刑事ドラマは、ほとんどが1時間に収められていて、心理戦の面白さが「売り」になっているけれど、日本でもようやくその手のドラマが出てきたんですね。日本人のどちらかというとウエットな情の文化にはこういう西洋型の理の勝ったドラマはそぐわないって常々感じていたので、これはとても新鮮な感動でした。
真壁と梶山の近くて遠い仲?
初めて見たのが第三話で、そこでの主役、真壁有希子(天海祐希)とその上司、梶山勝利(田中哲司)との間の微妙な空気感に、テレビにしては珍しい高度な心理の駆け引きがよみとれて、「このドラマ、いける!」って思わず叫んでしまいました。もちろん、即お二人のファンになりました。初見です。天海祐希さんの元宝塚男役というのをしのばせる男前感、その男前のファサードにほぼ隠れてはいるけれど、時折顔をのぞかせる柔。硬派にチラ見える軟派面。ワクワクでした。もっとワクワクしたのが、真壁有希子と梶山勝利との水面下での戦い。田中哲司さんのあの何を考えているのかわからない無表情に、チラ見える優しさ。この方の演技力も並ではありません。このふたり、「チラ見え」の勝負なんですよね。できる上司とできる部下との勝負のみならず、男前の女性と冷徹を売りにしている男性との間の勝負。戦いつつも、相手の弱点、「不利」なものをどこかで思いやっている。でも簡単に手のうちは明かさない。ただ、勝負どころではそれを相手にぶつける。戦友であって、仲間ではない。ましてや恋人でもない。でも、見ている側は二人の間の引力を否応なく感じちゃうんですよね。この引力がワクワク、ドキドキさせる素になっているわけで、にくい!
優れた脚本
脚本は井上由美子さん。ホント、すごい脚本です。Wikiで見ると、神戸のご出身。向田邦子賞を獲っておられる。ここまでレベルの高いドラマを書いておられるのだから、向田邦子もあちらできっと喜んでおられるでしょう。
Gender Consciousness!
女性脚本家ならではのジェンダーコンシエンスがきちんとはめ込まれていて、それにも感心。紅一点でキントリに所属している真壁有希子。その有希子におおっぴらに、あるいはさりげなく浴びせられる差別発言。こういう微妙な設定は女性脚本家が女性の視点で見ることで初めて可能だったのだと思います。日本ではセクハラ発言は深く浸透していて、男はそれに気づかないし、配慮もしない。そこのところをきちんと抑えているのはすごい。仲間内でも、意識しないでセクハラ発言をしてしまう。その雰囲気が手に取るようにはっきりと描き出されていました。
脚本家、井上由美子さんと天海祐希さんとの強いタグを感じたのですが、プロデューサー陣にも女性が三人入っているんですね。女性の女性による女性のための?ドラマ感が強かった。もちろんそれが可能なのは、優れた男性の役者陣が揃っているからでもありますが。