yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

観世銕之丞師の舞囃子「三輪」in「第19回芦屋能・狂言鑑賞の会」@芦屋ルナホール11月16日

「第19回芦屋能・狂言鑑賞の会」の二番目に登場した演目。最も見応えがあった。以下に「三輪」の演者一覧を。

三輪明神   観世銕之丞
大鼓     山本寿弥(大蔵流)
小鼓     清水皓祐(大蔵流)
太鼓     上田慎也(金春流)
笛      左鴻泰弘(森田流)

地謡     藤井文雄 吉井基晴 上野朝義 大西礼久

観世銕之丞さんの謡が観世寿夫さんを彷彿とさせた。これはこの6月の京都観世会例会で『俊寛』を舞われた時にも持った感慨だった。嫋嫋とした中にも鋼を感じさせる謡。『俊寛』以外では、1月に京都春秋座での「能と狂言」で彼の『鵺』を観ている。渡辺守章氏の肝いりの会。観世寿夫さんと同志だった守章さん(気安く、すみません)にとっては、寿夫さんを偲ぶには甥御さんの銕之丞でなくてはならないんだろう。もちろんその期待に応えられた舞台だった。

とはいうものの、この「三輪」が一番好きかも。三輪明神が神楽の起源を語り、舞うところが切り取られて舞囃子になっている。厳かな舞いで始まるが徐々にテンポを挙げて、華やかな舞いに移ってゆく。お囃子が舞いを煽るかのように賑やかに加速度をつけて奏でられる。この掛け合いの部分、祝祭的で楽しい。観ている側も煽られて、思わず拍子をとってしまう。なんともいえないウキウキ感。それはこの演目の根底にある神と人との一体感を感じさせるからだろう。金春禅竹作といわれているのも頷ける。

銕之丞さん、このウキウキ感を軽やかさではなく、荘厳なしっとり感のある舞いに仕立て上げておられた。でもやっぱり華やぎの部分は思いっきり華やかに舞われていた。抑制の中にも解放感があった。

大鼓の山本寿弥さんはいつも山本哲也さんの後見をされている方。ご子息?ちょっと緊張気味だったかも。金春流太鼓型の上田慎也さんが良かった。前川光範さんといい、太鼓は金春流に限る?ウキウキ感を先導して煽り立てるのに一役買っておられた。

地謡の方では上野朝義さんは大阪天満宮での勧進能での『葵上』でシテをされていた。大西礼久さんは西宮芸文センターでの『船弁慶』で地謡方をされていた。吉井基晴さんはその社中会に寄せていただいた折に、仕舞を拝見している。とても力のある方だと強く印象に残った。ご子息方もお上手だった。

演者のみなさん方、お囃子方を除き主として大阪、そして阪神間で活躍される観世流の方々。京都観世流とはちょっと雰囲気が違った。だから、この後、能『千手』で山本哲也さんの大鼓を聴かせていただいた時、どれほどホッとしたことか。

芦屋ルナホールは何十年ぶりか。以前も小劇場の舞台に適した黒っぽい箱だったような。満員で、驚いてしまった。客層もいつもと違ってずっと若かった。

ちなみにこの日の演目と主たる演者を下に掲げておく。

• 舞囃子「敦盛」二段之舞・長山耕三
• 舞囃子「三輪」・観世銕之丞
• 狂言「文荷」・野村萬、野村万蔵、野村万之丞
• 能「千手」郢曲之舞・長山禮三郎、浅見真州、福王茂十郎ほか