yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

市川月乃助改め二代目喜多村緑郎 襲名披露「九月新派特別公演」@大阪松竹座9月23日昼の部

ある程度期待して出かけたのだけど、がっかりだった。新派を見るのは久しぶり。2012年11月に南座で『滝の白糸』と『麦秋』を見たきり。記事にしているので、リンクしておく。

このたび喜多村緑郎を襲名する月乃助は2015年9月に、これまた南座で『あらしのよるに』で見たのが最後だった。そういえば今回『振袖纏』で主役を演じた松也も出ていたっけ。口上で松也がそれに言及していた。月乃助は今までにも何回か新派公演で見ている。ゲストというより、座員という感じだった。今度それが現実になったわけである。

月乃助を「応援」する形で彼の元の巣(?)である澤瀉屋からも助っ人が。春猿、猿也。予想通りというか、この二人がダントツで光っていた。演目は『振袖纒』と『深川年増』。以下、松竹のサイトから借用した配役一覧。

『振袖纒』ふりそでまとい)
川口松太郎 作/成瀬芳一 補綴・演出

芳次郎:尾上松也
お喜久:瀬戸摩純
彦兵衛:立松昭二
おつね:伊藤みどり
番頭竹蔵:田口 守
鳶国松:市村新吾
お徳:市川春猿
藤右衛門:市川猿弥

『深川年増』
北條秀司 作/大場正昭 演出
三十助:月乃助改め 喜多村緑郎
およし:英 太郎
仙兵衛:佐堂克実
お国:尾上徳松
おちよ:山吹恭子
貴婦人:英 ゆかり
小間使:鴫原 桂
伊之助:市川猿弥
おきん:水谷八重子

『振袖纏』の方はともかく、『深川年増』では半分くらい寝てしまっていた。かなり退屈した。いずれも芝居進行のテンポがスロー。加えてオチがあらかじめ予想できる。つまり予定調和的なプロット。伏線といってもそれが本筋を引き立てるほどの過激さがない。齟齬をきたすことで、芝居の光景がよりドラマチックになるという、そのワクワク感がまるでない。そういえば芝居自体が過激さとはおよそ無縁だった。テーマは私から見ると「ない」に等しい。いずれもがいわば家庭劇。ちょっとした波乱があるけれど、最終的にはうまく収まる。問題があっても、それがいかにもという感じで収束する(させられる)。「家庭内部のことだから、いかなる『事件』も愛情でもって解決できる」という前提の上に成り立っている。

もちろん家庭を舞台にした家庭劇が悪いというわけではない。「家庭」ほど、実際は「おぞましい」ところはないかもしれないから。向田邦子のドラマを見ればそれがよくわかる。仲良く暮らす家族の中に恐ろしい深淵が潜んでいることが描かれているから。

新派主宰者の水谷八重子も波乃久里子も70代。英太郎も然り。新しく入る月乃助が40代。英太郎は80歳!若手を入れてもおそらく平均年齢は高い。おそらくそれで芝居の演目、内容ともに「古い」ものが多くなるのだと思う。観客も演者と合わせて年齢はかなり高め。一緒に行った友人、「(お客さんの)背が低いね」。たしかに。旧世代の人が多いからだろう。私から見ると「たるい」の一言だったけど、それでも「しんみりしたね」という感想が聞こえてきたとか。

観客に合わせるとなると、こういう芝居も意味があるのかも。また新派は新派の存在意義があるのかも。私は多分二度と新派芝居は観ない。