以下、「歌舞伎美人」サイトからの引用。
市川猿之助宙乗り相勤め申し候
<配役>
流星 猿之助
織姫 尾上右近
牽牛 巳之助<みどころ>
四人の雷たちの騒動を一人で踊り分ける軽妙洒脱な舞踊
七夕の夜、年に一度しか会うことのできない牽牛と織姫が今宵の逢瀬を喜んでいます。ところが、その大事な一時を過ごしている二人のところへ、流星が同じ長屋の雷夫婦が喧嘩を始めたとご注進にやってきます。その夫婦喧嘩の始まりは、先日端唄の師匠の家に落ち、帰ってきてから聞き覚えた端唄ばかり唄う亭主雷に、女房雷があきれて悪口を言ったこと。亭主雷は怒って出て行けと言い、つかみ合いの喧嘩になるところに止めにはいった子雷、姑雷もからんでの大騒ぎだと話します。その様子を語り終えると流星は、牽牛と織姫に床入りを促すと遥か虚空へ駆け去って行きます。
七夕の夜を舞台に、季節感あふれる一幕をお楽しみください。
昨年の3月の「花形歌舞伎」(於京都南座)でも見ている。その時は
流星 坂東 巳之助
牽牛 中村 隼 人
織女 尾上 右 近
という配役だった。
巳之助が四役演じたのだが、今回は先輩の猿之助が四役、巳之助は牽牛役に回っている。四役の演じ分けがおかしく、滑稽な舞踊劇。舞踊の達人が演じないと滑稽味が薄くなる。巳之助も猿之助もその点では互いに遜色がなかった。
今回の猿之助の雷四役演じ分けの中では姑役の外し方が良かった。ぐっと襟を抜いて、よたよたと歩くところが秀逸。彼のコメディセンスが生きていた。巳之助の四役は赤子が面白かった。二人ともに夫婦の喧嘩の場面が、その時代を超えたものであることを示している。その「下世話さ」がいかにも庶民のサマを表していた。もちろん現代でも、その辺に転がっている話。天上界の牽牛/織姫の恋物語といかにも下界の夫婦のような雷の夫婦喧嘩が対比されているところに、これを作劇した人の遊びココロ、洒脱さが窺える。
牽牛役の巳之助、織姫役の右近ともに、その初々しさがこの役にぴったり。中でもツンとすました感じで舞台の上手に座り、雷夫婦の喧嘩を見ている牽牛の巳之助に、「クスッ」としてしまった。右近は綺麗で品がある。これ以上の天女役はいないだろう。こちらも大真面目なのが逆におかしい。
最後の流星の宙乗りは去年の花形歌舞伎にはなかったもの。猿之助のサービス精神の表れ。こんな軽やかな舞台だと、若い観客層を開拓できるに違いない。