yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『おしてるや』真紅組@近鉄アート館 4月23日昼の部

今年の1月に見て感動、感激した「真紅組」の『ハイ・ライフ』。今回の公演も真紅組のものなので期待度マックスで出かけた。

残念だったのは、『ハイ・ライフ』で迫真の演技を魅せてくれた(Bug役の)木所亮介さん、(Billy 役だった)成瀬トモヒロさんの二人が今回は参加していないこと。今回は総勢20人弱もの役者さんたちが舞台狭しと駆け回るもの。登場人物が四人だった『ハイ・ライフ』とは全く様相が違っていた。ただ演出はあの時と同じ、諏訪誠さん。それに『ハイ・ライフ』でDickを演じた永督朗さん、Donny を演じた久家順平さんは加わっていた。

以下が役者一覧とスタッフ。そして芝居概略。残念ながら配役表を紛失してしまったので、誰がどの役だったのかわからず。

古田里美、野村ますみ、阿部遼子、山本美和子、杉本レイコ、中村ゆり(魚クラブ)、福田真紀子、松本祐子、Elm、たもつ(シアターOM「うしとら」プロジェクト、八田亜哉香、にん(音声劇団五里夢中)、成瀬サキ(ナルセケ)、橘耕作(空∞羽)、おかだまるひ(閻活)、高島理(mannequineko)、DEW、北島顕、浅雛拓、鈴木康平、高口真吾、久家順平(舞夢プロ)、永督朗(劇団明朗会計)、他

作  阿部遼子
演出 諏訪誠

大坂夏の陣」で、一面焼け野原となった大坂の町。
太閤様が愛した城も町も人も、全てなくなってしまった。

しかし、何もなくなった大坂の町で、
なくならなかった「もの」があった。

生きるために、金のために、
使命のために、意志を継ぐために…
それぞれの想いを胸に、集まってきた老若男女。

「おもしろそやし、やってみるか」

果たして、こんな奴らで無事に堀はできるのか?
道頓堀にまつわる男たちと女たちの、
ちょっとおかしな「ど根性物語?!」

この解説にあるように、大坂夏の陣後の大坂の町の様子が背景。ほとんどの人間は着のみ着のままで逃げたのだけど、呼びかけに応じた人が再び戻ってきた。町の再興を夢見て。それを陰ながら支えたのが松平忠明。家康の命を受け、大坂再建に派遣された人物。百姓などをうまく使って、道頓堀を完成させたという話がベースになっている。この辺りの歴史がWikiにあった。以下。

幸田成友によると、1612年(慶長17年)に南端が堀止になっていた東横堀川と西横堀川を結んで木津川へ注ぐ堀川の開削が開始され、久宝寺(摂津国住吉郡平野郷)の安井道頓(成安道頓)が新川奉行に任命された。しかし、大坂の陣で道頓が戦死したため、従弟の九兵衛(安井道卜(どうぼく))や安藤藤次(平野藤次)らが引き継ぎ、1615年(元和元年)に完成した。当初は新堀・南堀川・新川などと呼ばれていたが、大坂城主の松平忠明が道頓の死を追悼し、また、相当な私財が投じられたことや功績を鑑み「道頓堀」と命名した。
「大坂濫觴書一件」では、九兵衛(道卜)が合戦後の工事再開の認可を受けた際、徳川氏からの人夫提供の誘いを断り、久宝寺から百姓を呼び寄せ、自らの手で工事を完成させたとあり、安井家の富豪のほど、また当時の町人の心意気を偲ばせる記述となっている。この開堀では両岸の開発も行われ、八町が建設された。「九郎右衛門町」、「宗右衛門町」などの人名のついた各町は安井家出入りの百姓で、この時開発の衝にあったものの名に因んだものである。

いわゆる大文字の歴史の叙述からは外れている人間の営みを描くというのが主眼になっているのだろう。漏れたところをすくい取るというのを、そのままストーリー仕立てるという目論見はわかる。でも、面白くなかった。あまりにも見え透いた内容だから。ドラマツルギー的にも魅力が乏しい。

歴史考証なんて難しいことを言いたくはない。でもやっぱり「ちょっと違うんじゃない?」と思ってしまうのは、歌舞伎という伝統芸能を我々が同時代的に見ることができるから。さらに、大衆演劇というジャンルに、伝統を生かしつつそれを現代化する工夫を見ているから。どっちつかずは見るのが辛い。映画の『さくらん』のようにそれで成功していればいいのだけど、中途半端。燃焼度から言っても燃え(萌え)ない。これで萌える人はよっぽど寛容な人でしょう。

殺陣、群舞ともに大衆演劇のそれにははるかに及ばなかった。殺陣はともかくとして、群舞。もう少し古典舞踊の稽古をしてほしい。西洋のダンスというのにはあまりにも下手、また日本の舞踊の素養も全くない。ダンスよりも、日舞の研究と稽古をもっとしてほしい。そこで客を白けさせてしまったら、ダメでしょ?

もっといけなかったのが、ヒューマニズム的なオチがここかしこに仕掛けられていたこと。そんなの、「牧師さん」の説教を聞いていればいいわけで、「ことさらぶち上げられても」というのが私の正直な感想。

この「近鉄アート館」、以前にも一度来ているのだけど、その時も迷い、またもや今度も迷ってしまった。ハルカスビルの方ではなく、ウィング館の8階にある。この劇場、造りが素晴らしい。シェイクスピア劇の舞台、あるいは能舞台のように舞台がせり出している。演者は三方から見られる仕掛け。全体に黒っぽいのは海外の小劇場によくある内装。客席は階段状になっていて、どこからもよく見える。渋谷のコクーン劇場よりずっと見やすい。また迫力もある。ここで三島由紀夫の「近代能楽集」の作品を見たいと思った。以前に「班女」と「葵の上」を、阿倍野近鉄百貨店内の劇場で見たことを思い出した。