yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

劇団Patch公演 浮世戯言歌劇『磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜』高尾山地獄修業編@ABCホール 4月21日昼の部

「Patch stage vol.8」。すでにシリーズとして7回の公演をこなしている。この公演のサイトをここにリンクしておく。あのナベプロ系の劇団なので、至れり尽くせりの豪華版。チケットも6500円と高め。

リンクしたサイトに劇団Patchの由来が出ているので、借用させていただく。

「劇団Patch」
劇団Patchとは、演劇で大阪を元気にしたい!という大きな志のもと、関西を拠点とした様々なエンターテインメントを発信。
関西弁で一生懸命を意味する「必死のパッチ」にその名を由来。
2012年4月、3000名以上の中から厳しいオーディションを通過し
関西版 D-BOYS となる劇団Patchを結成!
結成から約半年で挑んだ旗揚げ公演「OLIVER BOYS」(作・演出 末満健一)は大盛況。
演劇活動以外にもテレビやラジオなどのレギュラーも持ち幅広く活動中。
今後さらなる飛躍を目指す。

道理で平日なのにいっぱいの客席。観客もいわゆる小劇場のそれとはちょっと異なった人たち。納得した。

以下が配役とスタッフ。

磯部磯兵衛役:井上拓哉
母上役:中山義紘
中島襄:星璃
高杉秀才:村川勁剛
花岡華男:吉本考志
平賀源内:三好大貴
宮本武蔵:竹下健人
団子屋の看板娘:鎮西寿々歌
先生:川下大洋(Piper)
熊本さん

剛林森男:近藤頌利
吉岡剣:有馬純
楠木勝:田中亨
サヤーテ:藤戸佑飛
小吉:尾形大悟
脇坂:山田知弘

七代目服部半蔵:竹村晋太朗

弁士:坂本頼光(声の出演)

「タレントの卵」もしくはすでに活躍している役者さんが多い(らしい)。最初、普通の小劇場の芝居と思って見ていたのだけど、なんか違うと思い始めたのが30分経過した頃から。2時間超えの長丁場。申し訳ないことに10分間程度居眠りしてしまっていた。こんなことは初めて。小劇場系のお芝居は大抵どこか「過激」で、眠くなることはあまりない。つまり過激度は低め。大衆化度は高め。おそらく劇団がというよりナベプロが、その路線を徹底させているのだろう。大衆化度が高めというのは、題材の選択にも。なんでも「少年ジャンプ」に連載されている人気漫画、「磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜」をベースにしているらしい。以下。

原作:仲間りょう「磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜」 (週刊少年ジャンプ連載)
脚本・演出:末満健一
音楽:和田俊輔

もっと詳しく解説しているサイトがあった。

大人気ギャグ漫画、『磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜』が、劇団Patchによってまさかの舞台化!
「なんでもかんでも舞台化すりゃいいってもんじゃない!」の声を振り切ってまさかの舞台化!
立派な武士になることを目指し、江戸の武士道学校で日々精進に励んだり励まなかったり、むしろ励まないことが多い青年・磯部磯兵衛。磯兵衛とその仲間たちのだらだらした生き様を描き出す。歌詞と言うのもおこがましい戯言の数々をメロディに乗せて、いざ歌劇つかまつらん!
こんなグダグダな舞台化があっていいのか?!あっていいのだ!!

「グダグダがあっていいのだ」には大賛成。元の漫画を読んでいないので、比較はできないけど、きっとグダグダなんだろう。最初から最後までそのグダグダを徹底させたのは「評価」?できる。あの、猿之助の『ワンピース』の不徹底ぶりにうんざりしたので特に。やたらと「仲間」たら、「平和」たらと言った謳い文句を打ち出されるより、潔く「グダグダでござい!」とブチ上げられれた方がよっぽどいい。グダグダでいい(エエ)加減さ満載という点では「天才バカボン」系の漫画なのかも。ミュージカル風にそれをアレンジしたのが今回の作品というのなら、なんとなくイメージが合った気がするんですが、いかがでしょう?

グダグダだからこそ、私のように途中居眠りしても、十分に話について行けた?
要するに、貫くテーマなり標語がない。主人公は本当の武士に憧れつつも、しんどいことを極力避けたいいい加減な男子。高尾山にある「武士道学校」での特訓でも失敗の連続。というか、いかに楽をして武士道を学べるかにのみ関心がある生徒がほとんど。その最たる例が全てをHow toもののマニュアルに頼る主人公、磯辺の親友の中島。彼らのみならず、その学校の生徒のほとんどが「いい加減野郎」。そこに飛びいる伝説の剣士達も、ヒーローとは到底思えないドジ野郎ばかり。唯一まっとう(?)なのは、先生とそのペット、くまモンもどきの熊本さん(タイムリー!)。この作品のキモは、いい加減さ比べのバトルにある?

このいい加減さを最もよく表しているのが、全員揃ってのダンス。ミュージカル様群舞。『ワンピース』にもこの手の群舞がいくつか登場したけど、漫画の舞台化で漫画の精神がよくわかるのが、この群舞のような気がする。私が『ワンピース』で一番気に入ったのが、「おかまの群舞」だった!

『ワンピース』ほどやたら舞台装置に凝っていないところもよかった。なんといってもベースが漫画なんですからね。キッチュに徹していたのはあっぱれ。こうじゃなくっちゃ。『ワンピース』の舞台のように豪華絢爛だと、逆に「これはないんじゃない?」と引いてしまう。その点ではこの『磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜』は正統派。ここを強調しておきたい。

「アフタートーク」なるものに参加したことは今までにそうはないのだけど、これが結構面白かった。舞台ではどこか貧相な感じだった(スミマセン)役者さんたち、Tシャツにジーンズだと大きかったんですよね、実際に。それにカッコ良かった。さすが数千人のオーディションの生き残りでした。ここにこの芝居の全てが表象されているのだと、へんに納得してしまった。虚構の舞台と等身大の役者とのギャップ。普通なら(というか今までの演劇なら)ここをなんとか埋めるところだけど、それをあえてしない。そこにこの演劇集団の目指すところがあるのかもしれない。そして、それは新しい領野でもある。