yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

山本周五郎人情時代劇 BSジャパン『めをと蝶』

山本周五郎シリーズ全12話の最終回らしい。たまたま見たBS。思わず見入ってしまった。俳優が(おそらく)有名タレントではなさそうなのがいい。全員、有名タレントなんて目じゃないほどの演技派だった。特に主演の小野ゆり子とその夫、上村良平役の山崎樹範。典型的「美男」、「美女」でないところが、特によかった!

番組のサイトから採取した情報が以下。

出演者
良平の妻・上村信乃    ……小野ゆり子
馬廻総支配助役・西原知也 ……石黒英雄
信乃の妹・文代      ……金澤美穂
上村家の乳母・ふじ    ……宮内かれん
大目付・上村良平     ……山崎樹範

あらすじ
信乃(小野ゆり子)は、慕い合う知也(石黒英雄)がいたものの、国家老・井巻の薦めで大目付・上村良平(山崎樹範)と夫婦になる。しかし、長男・甲之助を自分で育てることを許されず、常に難しい顔をして贅沢を好まない良平との生活に、どこかぼんやりと過ごすように。そんなある日、知也が良平の上役である井巻派の暗殺を企てたとして仲間らと捕まり、その後、内通者の助けで脱走。報せを受けた信乃は眠れぬ夜を過ごすが、そこへ傷を負った知也が現れる。不正を正そうとして謀られたと話す知也を思わず納戸へ匿い、密かに療養させ…。数日後、“汚名を晴らして必ず迎えに行く”と言い残し、知也は江戸にいる藩主のもとへ。しばらくして、知也は特赦となり、不正に関与していたことが明るみになった井巻ら重臣が失脚。上役の失脚により上村家の身辺が慌ただしくなる中、状況の把握できない信乃は、蝶の形にかたどった紙で器用に障子を繕うなど、これまでとは違う姿を見せる良平に戸惑いを覚える。そして、召し出しを受けた良平から巻き添えを食わぬようにと離縁状を差し出され…。

私が見たのは途中からで、信乃の長男が病気のところからだった。夫、上村良平の気難しさに、心が夫から離れてしまっている信乃。結婚前、思い思われる知也がいながら無理に嫁がされたので、初めから夫とは馴染んではいない。息子が病気でも世話することを赦されない生活。夫は彼女には関心が薄く、もっぱら出仕、そして出世のみを至上とする堅物。その中で、かっての恋人、西原知也が「謀反人」のカドで追われて上村家に、つまり彼女の許に逃げ込んでくる。それを匿い、追っ手から逃れさせる。知也は、「必ず迎えに来る」と言いおいて去って行く。

やがて知也たちの藩主への直訴が実り、信乃の夫の上役には切腹の沙汰が下る。
その前後から、蝶の形にかたどった紙で器用に障子を繕うなど、良平に今までの「気張った」態度と違った行動が見え始める。戸惑う信乃。徐々に夫の真の姿が見えてくる。母の愛が一方的に弟に注がれていたため、幼少期が孤独だったこと。彼の「硬さ」はそれを覆い隠すための鎧だった。それを知った時の信乃の衝撃と後ろめたさ。

夫の上村良平には藩から「追放」の沙汰が。良平は万が一を見越して、信乃に離縁状をわたしていた。信乃の妹は最初から彼女の味方で、知也が上村家を出るときにも助太刀をしてくれていた。良平が信乃に離縁状を渡したことを知った妹は、彼女に知也と一緒になるようように勧める。でも信乃は「夫婦というのは不思議なものね」と言って、暗に夫の良平とともにいることを仄めかす。

知也が約束通り信乃を迎えに来る。でも信乃の気持ちは固まっていた。彼女は知也の申し出を断り、夫とともに追放に甘んじることする。数日後、家を出る夫について、信州に同行する信乃の姿があった。

いかにも山本周五郎と思わせるのが、おそらくはこの「夫婦ってのは・・・」の箇所だろう。山本周五郎を大して読んだわけではないのだけど。「夫婦ってのは・・・」っていうところに、その行間に人情の機微がぶちこまれている。そういった「日本的」とでもしか言いようのない「情感」を出すのが周五郎の方法だと思う。西欧的に、もっといえば合理的に割り切れないのが人の情。それは愛だとか恋だとかを超越している。この最終場面でぽろぽろ泣いてしまった私も、やっぱり日本の人間なんだと、改めて認識してしまった。