yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

松緑主演「髪結新三」『梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)』@歌舞伎座10月19日

二世松緑の追善公演ということで、彼の孫の四代目松緑が主役の新三を張った。通しで2時間を超えていた。かなり疲れた。「歌舞伎美人」から構成、配役、そしてみどころを。

序 幕 白子屋見世先の場
    永代橋川端の場
二幕目 富吉町新三内の場
    家主長兵衛内の場
    元の新三内の場
大 詰 深川閻魔堂橋の場

配役
髪結新三 松 緑
白子屋手代忠七 時 蔵
下剃勝奴 亀 寿
お熊 梅 枝
丁稚長松 左 近
家主女房おかく 右之助
車力善八 秀 調
弥太五郎源七 團 蔵
後家お常 秀太郎
家主長兵衛 左團次
加賀屋藤兵衛 仁左衛門
肴売新吉 菊五郎

みどころ
◆髪結のいなせな風情と悪党ぶりを生き生きと描く傑作
 主人を亡くしてから身代が傾いてきた材木問屋の白子屋では、美人と評判の高い一人娘のお熊に持参金付の婿を迎えることが決まります。しかし、実はお熊は手代忠七と深い仲。この事情を知った髪結の新三は、忠七を騙してお熊を誘拐し、身代金をせしめようと企みます。新三は永代橋で忠七をうちのめし、お熊を自分の家の押入れに閉じ込めてしまいます。困り果てた白子屋は、お熊をとり戻そうと乗物町の親分弥太五郎源七に助けを求めますが、逆に新三から身代金の少なさをなじられ追い返される始末。そこで今度は源七に代わり、老獪な家主の長兵衛が乗り出し、まんまと新三をやり込めますが…。
 初鰹の売り声をはじめ、江戸の下町風情を鮮やかに伝える河竹黙阿弥の代表作です。二世尾上松緑追善狂言の舞台をご堪能ください。

隠し味に使われているザ・エロティックがおもしろい作品。上方のそれとは違った江戸ならではのもの。そこに匂い立つ独特の華やぎ。世俗(vernacular) にどっぶり漬かった世界を描いているのに、どこかにそれを突き抜けた高みを、それをアプリシエイトするまなざしを感じさせる。「悪」のしたたかさを描きつつ、そこに一抹のいなせさ、美学(これぞ江戸前)を加味するのを忘れない。こういう世界というか価値観は私のような上方人間には違和感があるのだけど、でも羨ましかったりする。

松緑の新三はそりゃ現菊五郎や故勘三郎に比べれば、「軽い」感じは否めなかった。でも彼が演じた役の中では、『暗闇の丑松』の丑松に次いで良かった。父祖のもち芝居、それを引き継いで行くことの重みを彼は分かっているんだと思う。他の役者では出せない色を出そうとしているような気がした。そしてそれは成功していたように思う。

そしてやっぱりというか、時蔵が良かった。彼の立ちはあまり見たことがなかったのでもうけもの。ご子息の梅枝との絡みも面白かった。梅枝、背が高いのを低く見せる工夫がよくできていた。背が高いと女形をやるのは大変。彼といい、右近、新悟といい、今の若手女形は背が高い人が多い。

劇場でちょっと気になったこと。先月にもあったのだけど、大向うさんのかける「屋号」が頻繁に間違っていた。時蔵に「大和屋」とかかったのには、完全に鼻白んでしまった。