yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『ハムレット』プレビューの際のベネディクト・カンバーバッチの「災難」

8月初めからロンドンのバービカン劇場での公演がスタートした『ハムレット』。プレビューの際の観劇ファンのマナーが悪く、カンバーバッチ氏の怒りを買ったとの『ガーディアン』の記事。以下がそのタイトル。
「Alas, poor Benedict! Fans filming isn't the only peril that could throw Cumberbatch」。サイトをリンクしている。

観客がスマホで「こっそりと」写真を撮ったのを彼が見咎めたため、舞台進行が中断するというハプニングが。新しいプロダクション。新しい演出。意気に燃えていた彼の思いに、軽卒な観客の行為が水を差したのだろう。気の毒。この繊細な戯曲、繊細な主人公を繊細な役者が演じる。そんな舞台だから、気がピンと劇場中に張詰めていたことだろう。そこで写真を撮るのは無神経の極み。日本語の記事もネットにあったのでこれもリンクしておく。

そもそもなぜこのような「事態」になったのか。その原因は彼のものすごい人気にある。劇場に生の舞台、それもシェイクスピアなんていう古典の舞台を観に行く人というのは、いくら舞台の本場イギリスでも限られた「人種」である。それが彼の「幅広い」人気のゆえに、今まで「シェイクスピア」にはあまりご縁のなかった人が劇場にやって来ていたということだろう。彼を「舞台俳優」としてではなく、ロック歌手をみるようにみている人たち。コンサート会場でのノリで舞台をみていたのかもしれない。

おそらくそれは去年のこの公演のチケット争奪戦のものすごさから推測できたことかもしれない。なにしろ発売日に全公演sold-out。演劇史上、初めてだったらしい。しかも劇場があの大きなバービカンにしてである。ウェストエンドのキャパの小さな劇場じゃないのに。

カンバーバッチを知ったのはhuluでみたBBCのテレビシリーズ『シャーロック』でだった。このブログ記事にもアップしている。あの衝撃は忘れられない。まったく新しい解釈。なによりも時代が現代に移され、最新のハイテク、IT機器を駆使して謎を解明して行くというのが、斬新だった。その斬新さにカンバーバッチの演技がみごとにマッチしていた。日本でも濃いファンが大勢いて、『ユリイカ』(2014年8月臨時増刊)が特集を組んだ。この特集号、専門ではない分野での本を増やすのが嫌なので、図書館で予約したのだけど、なんと三ヶ月も待たされた。さまざまなバックグラウンドの人たちがオマージュ記事を書いていて、彼の人気ぶりのほどとその浸透ぶりに驚いたものである。日本でこれだから、本国ではさぞかしと思っていたら、ヤッパリ。今回の「事件」がそれをよく表している。

それにしても残念。ロンドンにいれば、なんとしてもチケットを手に入れただろうから。舞台は一回限り。旬の時にみておかないと、同じものは二度と観れない。彼は「映像化」を考えているようだけど、映像と生の舞台との間には超えられないギャップがあるんですよね。