yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

シネマ歌舞伎『怪談牡丹燈籠』@なんばシネマパークス 12月17日

シネマ歌舞伎の『怪談牡丹燈籠」は二回目。玉三郎と仁左衛門の「伝説コンビ」の二人が演ったのは彼らが常套の「美しい男女の恋愛」などとはほど遠い、下層の夫と妻の話である。玉三郎はこの長屋丸出しのおかみさん役をこれ以上説得力がないほどの迫真の演技で魅せてくれた。対する仁左衛門も、このちょっとお調子乗りの、でも憎めない男のそこはかとない色気を描出するのに成功していた。やっぱり息の合ったコンビネーションでない限り、ここまでの阿吽の息は不可能だっただろう。これが「シネマ歌舞伎」という形で保存されていることに、本当に感謝である。保存されているからこそ、私のように二回でも観れるわけだから。

私が歌舞伎にはまったきっかけが京都南座で観た『怪談牡丹燈籠』だった。伴蔵と新三郎を三津五郎が二役で演じ、お峰とお露を時蔵がこれまた二役で演じた。この歌舞伎の斬新な演出にぶったまげた。

斬新さでは私が観た『怪談牡丹燈籠』には及ばないのかもしれない。でも玉・孝コンビの復元という意味では、これ以上望めない無敵さ。その取り合わせの妙に、なんども頷きながら観ていた。もっとも秀逸だったのは、玉三郎が馬子久蔵(三津五郎)から亭主がお国に入れあげている顛末を聞き出すところ。玉三郎という人は超俗的なひとだけど、この場に関しては下世話の極み。それをまたみごとに演じるんですよね。ホント、脱帽。彼の中には数えきれない「引き出し」があるんでしょうね。

仁左衛門も玉三郎と互角の「闘い」をしていた。そこは昔からのおなじみ。特別に構えなくとも、おのずと息は合ったに違いない。仁左衛門はいっとき身体の不調でさえなくみえるときもあったけど、それでもやっぱり孝夫は孝夫。こちらの予想以上のものをみせてくれる。とくに今月は玉三郎との取り合わせだったので、より華やいでみえた。このひとの色気は、上品な中にどこか危険な匂いがするんですよね。『四谷怪談』の伊右衛門こそまさにはまり役だろう。この伴蔵もその点では外れがないことは、初めからの予想通り。

以下、松竹のサイトから拝借した配役、概説。

上演月:2007年(平成19年)10月
上演劇場:歌舞伎座

原作:三遊亭円朝
脚本:大西信行
演出:戌井市郎

配役
伴蔵:片岡 仁左衛門
三遊亭円朝/船頭/馬子久蔵:坂東 三津五郎
萩原新三郎:片岡 愛之助
お露:中村 七之助
女中お竹/酌婦お梅:中村 壱太郎
お米:中村 吉之丞
お国:上村 吉弥
飯島平左衛門:坂東 竹三郎
宮野辺源次郎:中村 錦之助
お峰:坂東 玉三郎

概要
三遊亭円朝の傑作『怪談 牡丹燈籠』は、明治25年(1892)に三世河竹新七の脚色により歌舞伎座で上演され、空前の大当たりとなりました。以来、人気演目として今日に至っていますが、シネマ歌舞伎にもなった中国の昆劇『牡丹亭』もその下敷きとなったと言われています。今回上映致しますのは、平成19年10月の歌舞伎座公演の舞台映像で、台本は、昭和49年(1974)年に大西信行氏が文学座のために書き下ろしたものです。言葉は口語に近く、人物像もより深く掘り下げられた、笑いどころも満載の、現代版『怪談 牡丹灯籠』になっています。

伴蔵とお峰は、18年ぶりに仁左衛門と玉三郎が演じ、イキの合った絶妙な夫婦のやりとりを見せています。そこに、萩原新三郎(愛之助)とお露(七之助)、宮野辺源次郎(錦之助)とお国(吉弥)の二組の男女の物語が重なり、幽霊よりも怖い人間の業の世界が展開してゆきます。カラン、コロンという下駄の音を響かせ牡丹燈籠を手に現れる、お露とお米(吉之丞)の二人の幽霊の怖さとおかしみも見どころです。また、この大西本は、原作者である円朝が舞台にも登場して高座で『牡丹燈籠』を「噺す」という趣向をとっており、こちらも三津五郎の力演によりたっぷりお楽しみいただけます。