yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

ベルリン7日目 ハンブルグ駅現代美術館

今日は日曜日。ほとんどの店が閉まっている。そういえばずっと以前にロンドンに行った折にも困ったことを思い出した。もちろん、今はそんなことはないのだけど。ここでは法律で決まっているようで、どうしようもない。

例のガレリアも他のデパートも閉まっているので美術館を回るしかない。ということで、現代美術のコレクションをもつハンブルグ駅現代美術館とベルリン絵画館に行く予定を立てた。現代美術館の方は中央駅のすぐそば、かってのハンブルグ駅の駅舎を改築したという。ホテルからも歩いて行けるので、建物向けて歩いて行った。が、着いてみるとものすごい人、人。団体のバスも何台か乗り付けている。おかしいと思い、案内の人に聞いたら、美術館などではなく、ドイツ連邦議会議事堂だった!

そのあと、駅をはさんで反対側にある現代美術館にやっとのことで、たどり着いた。結構距離があった。これで今日の歩数は確保できたよう。

コレクションはちょっと拍子抜け。「トランスアヴァンギャルディアの個人コレクターであるE・マルクスのコレクションを中心にしたもの」だという。ヨーゼフ・ボイス、アンディ・ウォーホル、ロバート・ラウシェンバーグ、ロイ・リキテンスタインの作品が主なものだけど、数は大したことがなかった。

以下は私の好きなリキテンスタインの作品。「Reflections on the Artist's Studio」。上部が切れていますけど。

ラウシェンバーグの「Stripper」。

アンゼルム・キーファーの「Lilith」は衝撃的だった。

この画家についてほとんど知らなかった。Wikiによると、「戦後ドイツを代表する画家であり、ドイツの歴史、ナチス、大戦、ワーグナー、ギリシャ神話、聖書、カバラなどを題材にした作品を、下地に砂、藁(わら)、鉛などを混ぜた、巨大な画面に描き出すのが特色である」とあった。絵の横についていた解説によると、この「Lilith」とはアダムの最初の妻で、アダムのもとから、つまり楽園から逃げ出し、他の男(悪魔)との間に多くの子を成したという。怒った神が、アダムの許に帰らないと子供たちすべてを殺すと脅したところ、彼女自身が子供を殺すとそれを跳ね返す。キーファーの作品では彼女が殺した子供たちの、脱ぎ捨てられた衣服が全面に立体的に描かれている。凄まじい烈女。神という最強の男性性に面と向かって対抗した女性の原型かもしれない。ドラマチックに描かれたこの衝撃的な事件が、「神話」としてでなく、現実としてみる者に迫ってくる。嫉妬に狂い、夫イアソンとの間にできた子供たちを殺したあのメディアを彷彿させる強烈さである。女性はその「産む」という性から生産性、豊穣の象徴とされることが多い。でもひとつ歯車が狂うと、破壊的な魔力を持つことがこの作品に暗示されている。「テリブル・マザー」ですよね。女という性のもつ二面性を描こうとしたのは画家が男性だから?

このアダムとリリスがあの『エヴァンゲリオン』に使われていたんですね。

展示でもうひとつ衝撃的だったのはハルム・ファロッキの「ゲーム」。アメリカ軍の中東での軍事作戦をゲームとして捉え、実際の映像とシミュレーション映像とを組み合わせた映像作品。現代おいては(そして近未来においてはさらに)戦争という生臭い事象も、そこから人間の有機性が捨象され、ゲームになってしまうということが肌身でわかる。これを前にすると、戦慄を禁じ得ない。

このあと、絵画館に行く予定だったけど、ポツダムプラーツで電車を降りたところで、気が変わり、結局ホテルに帰ってきた。かなり疲れが出てきた。ただ、今ネットにあたってみると、この絵画館をこそ優先させるべきだったことが分かった。主なところで、以下のコレクションを擁している。


アルブレヒト・デューラー『ひわの聖母子』(1506年)
ルーカス・クラナッハ『青春の泉』(1546年)
ハンス・ホルバイン『商人ゲオルク・ギーツェの肖像』(1532年)
ヤン・ファン・エイク『聖堂の中の聖母子』(1440年頃)
ロヒール・ファン・デル・ウェイデン『ミッデルブルグ祭壇画』(1450年頃)
ピーテル・ブリューゲル『ネーデルラントのことわざ』(1559年)
レンブラント・ファン・レイン『スザンナの水浴』(1647年)
ヨハネス・フェルメール『真珠の首飾りの女』(1660年−1665年頃)
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ『孤独な樹』(1822年)
アルノルト・ベックリン『死の島』(1883年)

フェルメールがあることは『地球の歩き方』情報で知っていたのだけど、それが「真珠の首飾りの女」だったとは!かなり後悔している。

ソニー・センターでは昨日撮り損ねたペガサスがやっと撮れた。

ついでに昼間のクリスマスツリー。こちらもとてもきれい。

6時からはオペラ、『セビリアの理髪師』を観劇予定。