午前のデイトレで、目標金額以上をゲインできなかったら行かないつもりだった。運良く9時40分の時点でクリアできたので、急いで用意をして出かけた。前日は午前の最初の取引で上手く行ったのに、その後で仕掛けた株で損を出し、それをプラスにするため、午後2時過ぎまでPC前を離れられなかった。デイトレはものすごい集中力を必要とされるので、かなり疲れる。これを楽しめるようになればしめたものでしょうけどね。
劇場に着いたのが開演30分前の11時半。ずらっと入り口前に人が並んでいると思いきや、誰もいなくて拍子抜け。もちろん劇場内では正規の席はほとんどが予約か早朝から並んだ人たちによって確保されてしまっていた。でも補助席はまだ埋まっていなかったので、比較的観やすい上手席が取れた。やれやれ。去年の朝日の千秋楽公演では立ち見どころか札止めだったんですからね。
たつみ演劇BOXで『法界坊』を観たのは、今年元旦の梅田呉服座公演が最初。記事にしている。その後、若丸さん、良太郎さんをゲストに迎えての9月の京橋羅い舞座公演が二度目。これも記事にしている。今回が三度目になる。
配役は以下。1 月とはお組、番頭の役が替わっていた。
法界坊 たつみ
道具屋甚三郎 ダイヤ
要助(実は吉田松若) 瞳太郎
お組 小龍
大坂屋 愛餓男
永楽屋女将 京香
番頭 龍子
吉田の元の上司の侍 宝良典
今まででいちばん破天荒で、面白かった。とにかくたつみさんの暴走が止まらない。(いつものことながら)ダイヤさん、愛さん、小龍さんがさんざん手こずらされていた。オカシサ五割増し。とにかく圧巻だった!お客さん大喜び。
構成が実に緻密。たつみさんの「つくりあげる」お芝居は歌舞伎のアダプテーションであれ、先代、先先代から受け継いで来た古典であれ、現代の観客の嗜好に合うように構成は組み変えられ、台詞も大幅に変えられている。とても良くできているといつも感心。この『法界坊』も例外でない。そこにたつみさん十八番のアドリブが加わるので、喜劇の場合、一層そのおかしさに弾みがつく。この日も暴走が止まない。いたずらっ子のように目を輝かせてやりたい放題。とくに(台本にはおそらく無い)一人喋りを延々とやるところ、相手を完全に無視しているので、相手も突っ込みようがない。非難の目線を感じると、「最後だからおもいっきりやってやる」とかなんとか仰っていたような。
勘九郎(故十八代目勘三郎)の聞き書き『歌舞伎ッタ』の中に、勘九郎の舞台を製作・監督した串田和美が、「(監視しておかないと勘九郎は)暴走するので、つねに舞台を見張っていた」というようなことを言っていた。もちろんそれは二人の近しさをアピールするという意味もあったのだろうけど、実際にそういう「心配」もあったかもしれない。先代勘三郎は江戸と上方の「ハーフ」ですからね。その息子の勘九郎にもそのDNAが受け継がれていた。客を笑わせるのが役者の(とくに上方役者にとっては)快感で、それに弾みがつくとどんどん前に行ってしまうのだそうである。たつみさんもまさにそうだった。楽しくて仕方ないとういう感じ。われわれ関西の人間にはそういう笑いこそツボである。
たつみ版『法界坊』、歌舞伎を真似ていると見せかけながら、それを外しまくっているのが、最大の売り物。1月の呉服座ではこれを元旦に乗せたのだから、新開地公演でも千秋楽でなく月初めにこれを持ってきた方が、たつみ座長と劇団の「方針」というか方向性が観客にはっきりと示せたのではないだろうか。そこが残念。というのも帰り際、多くの客(初めての客と思われる人もいた)が、「芝居が良かった!」と囁き合っていたから。 知名度が高くない場合、最初に劇団の売り狂言をぶつけた方が、インパクトが強く、即観客にアピールできると思う。
大入りが30枚ちょっとだったらしいのだが、納得行かない。九州(系)劇団がそこそこ入れているのは、ゲスト日を何回もつくり、その上呑み屋営業をかけまくっているからに違いない。たつみさんはそういうことはしない。そこがスゴイ!すばらしい!あくまでも芝居、ショーのクオリティの高さで勝負しようとしている。そのために自身と座員の精進を怠らない。その劇団が集客できないはずはないんですよね。
ラスト 喧嘩上等
アンコール 晴れ舞台/バンビーノ