yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

三島由紀夫著『絹と明察』 松岡正剛の千夜千冊1022夜

今までに読んだ三島論の中でもっとも示唆に満ちていた。2005年に書かれていて、いつでもネットで読めたのに、つい先ほどまで知らなかった。「千夜千冊」は関心のある本や関心のある人についての論評に行き当たったときに読む程度だったが、周りには結構ファンがいた。でも読んでいる箇所が違うと、「そうですか、そんなことも論じられているんですか」といった程度の反応を互いにするのみで、それ以上は発展したことがない。

今検索をかけたら、彼が三島を具体的に論じたのはこれだけのよう。三島のあのような最期を『絹と明察』(1964)を起点にして「考察」したものは他にない。ましてやこの作品が三島の最後のテーマ(と松岡が推察している)「日本人というもの」と「父親の問題」とを結びつけるきっかけを作ったなんて書いた批評家はいない。

彼自身の父親との関係を三島とその父との関係と重ね合わせて洞察したところは興味深かったし、感動的だった。感情が高ぶって、泣いてしまった。フロイトが問題提起して以来の永遠のテーゼであるこの問題、「父と子の関係」は女である私にはもう一つ分かり辛い部分もあり、そこは留保がつくのだけれど。でも三島にとって、それが終生にわたる課題だったのは理解できる。