yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

バレエ 『ドン・キホーテ』Don Quixote by ABT(アメリカン・バレエ・シアター)@メトロポリタン歌劇場5月16日

以下プログラムから。

<主要なキャスト>
Don Quixote Victor Barbee
Sancho Panza Kenneth Easter
Kitri Paloma Herrera
Basilio Ivan Vasiliev
Espada, a famous madador James Whiteside


Choreography by: Marius Petipa & Alexander Gorsky
Staged by: Kevin McKenzie & Susan Jones
Music by: Ludwig Minkus
Set by: Santo Loquasto
Costumes by: Santo Loquasto
Lighting by: Natasha Katz

セルバンテスの原作はほとんど原型を留めていない。原作の第二巻部を大きく膨らませたもの。ドン・キホーテの理想の女性、ドゥルシナは登場せず、その代りにキトリという女性がドン・キホーテが憧れる女性として主要部を占める。ドン・キホーテとその冒険譚ではなくキトリとその恋人、バジリオとの恋愛が中心となって、話が展開する。ドン・キホーテとサンチョ・パンサは刺身のツマというより、コミカルな役回り。恋人二人を後押しする後見人のような役割を担っていた。

Paloma HerreraはABTのバレエ歴が20年にもおよぶベテラン。顔と背中を見て40歳くらいかと思っていたら、まだ30代のよう。アルゼンチン出身だとのこと。技巧的には優れているのだろうけど、一本足で静止するところで二回ぐらついた。プリンシパルに当てられる激しい踊り、肉体的にはやっぱり限界に近いのかも。ただ、METには心強いファンがいて、激励すかのようにさかんに拍手をしていた。ちなみにこの日の拍手はオペラのときと違い、かなり頻繁に起きていた。驚いた。まるで大衆演劇の舞踊ショーの拍手なみの頻度だった。

相手役のバジリオを踊ったのはおそらくまだ20代と思われる若いダンサー、Ivan Vasiliev。Wikiに今当たったら、24歳とのこと。元ボリショイバレエのプリンシパルで、2012年からMETに移籍。もちろんプリンシパル。スタミナ満点。筋肉もりもり、しかもハンサムでさかんに拍手喝采を浴びていた。最後の第三幕でのパ・ド・ドゥはとくにすばらしかった。スタミナが半端ない。アクロバティックな跳躍には感嘆の声があがり、キメでは拍手の嵐。本人もいかにも楽しげで、余裕があった。相手のPaloma Herreraとの踊りではさりげなくサポートする感じも、なかなかよかった。

主役二人の副的な役割を担って花形闘牛士を踊ったJames Whitesideとその恋人、メルセデスとドライアドの女王を踊った Veronika Part。James Whitesideは長身を生かした伸びのある踊りだった。切れもとても良かった。Veronika Partはサンクトペテルブルグ出身。マリインスキーバレエからABTに移籍。もちろんプリンシパル。この日、前から16列目の席だったのだが、そこからもオペラグラスなしでも美人とわかるとびぬけた美貌。レターマンショーに出演時のyoutubeビデオをリンクしておく。この人も切れの良い踊り。とても優雅で彼女が主人公のバレエを見てみたい。

私の周囲の観客は圧倒的にロシア人だったよう。ミラノのスカラ座でもそうだったのだけど、ロシア語が飛び交う環境に少しとまどってしまった。舞台上のロシア出身ダンサーとは違って、私の右隣の観客はいたってそのあたりにいるおかみさん、おやじさん風だったけど。ただすぐ前の席は際立って品の良い美男美女の夫婦と12,3歳の娘さんだった。通路を隔てて下手にも上流階級とわかる老夫婦。ロシア人の踊り手ということで観に来ている下町風ロシア人とかなり裕福な階級の観客が混在していた。そういえば、西宮の芸文センターでも東京文化会館でもバレエの時がもっとも観客の層が高かった。

ロシアバレエの実力をあらためて認識させられた。それにしてもマリインスキー・バレエにしてもミハイロフスキー・バレエ、そしてボリショイ・バレエにしても、こんなにアメリカに引き抜かれて大丈夫なんだろうかと、ちょっと心配になった。