日曜美術館での特集である。展覧会のホームページをリンクしておく。展覧会概要が読める。こちらの展覧会のタイトルは「印象派を超えて―点描の画家たち@国立新美術館 クレラー=ミュラー美術館所蔵作品を中心に」である。
日曜美術館がサイトに載せている情報は以下。
オランダにあるデ・ホーヘ・フェーリュウェ国立公園、その広大な自然の中に、世界中から美術ファンが足を運ぶ美術館がある。クレラー=ミュラー美術館。270点にのぼる世界最大規模のゴッホのコレクションを誇るヨーロッパ屈指の美の殿堂だ。 この美術館を作ったのは、一人の女性、ヘレーネ・クレラー=ミュラー夫人。夫の資産を背景に1万点以上の作品を収集した。そのコレクションには大きな特徴がある。19世紀から20世紀初頭にかけて、美術界に革命をもたらした画家たちの作品が中心になっているのだ。黄色と青を中心に激しい色彩で、感情や精神の高まりを表現したゴッホ、点描技法という革新的表現で印象派の色彩に挑んだスーラ、そして色彩の抽象的リズムで独特の世界を築き上げたモンドリアン。当時、まだ評価の定まっていなかった画家たちの斬新な表現に共感し、ヘレーネみずからも同時代の美術を研究、支援を続けたのである。 豊かな自然環境に恵まれたクレラー=ミュラー美術館を舞台に、ヘレーネが収集を続けたゴッホ、スーラ、モンドリアンにスポットを当て、色彩の革新を成し遂げた傑作の数々を紹介、さまざまな苦難と試行錯誤の末にたどり着いた美の秘密に迫る。
会期は2013年10月4日(金)〜12月23日(月・祝)で、あと広島、愛知と巡回する。
以上の情報から展覧会のあらましはほぼ想像がつく。点描法については、ゴッホやスーラよりずっと以前の17世紀のオランダの画家、フェルメールも作品で試みていた。手法が違ってはいるようだけど。でも光をどのように画面に表現するかということで点描法を用いた点では共通している。そういえば、ゴッホもオランダ出身だった。
興味深かったのはジョルジュ・スーラの作品《ポール=アン=ベッサンの日曜日》の解説だった。気の遠くなるような点のそれも補色同志の組み合わせの集積で画面に光の濃淡のみならず動きをも描き出すという説明に、今までほとんど興味がなかったスーラの絵が俄然いきいきと見えた。スーラはロンドンのナショナル・ギャラリーを始めアメリカのいくつかの美術館でみたが、モネ等の印象派に比べると「地味」な感じで、そうインパクトは感じなかった。ところが解説を聴いたあとで大写しになったこの絵をみると、たしかに雲は画面左から右へ動いているようにみえるし、水面には光が反射してきらきらと水滴まで見えるようである。欧米の美術館ではギャラリー・ツアーやトークが毎日行われているので、それを利用するとこのような「中に踏み込んだ」解説が聴けて、鑑賞が一人でみるのとは違って面白くなる。「日曜美術館」の意味もそこにあるのかもしれない。
ギャラリー・ツアーといえばアメリカのワシントンDCのものがもっとも印象に残っている。というのもそれでモンドリアン、ポロック、リキテンシュタイン、ジャスパー・ジョーンズ、マーク・ロスコなどの現代美術作品に初めて出会って衝撃を受けたから。解説がなかったらそれほどでもなかったかも。ギャラリー・ツアーの効果がもっともあったのが、モンドリアン作品だった。絵を前にして、「こんなん、子供でもかけるじゃない」なんて不遜なことを考えていたけど、その解説を聴いて、作品のすばらしさが初めて理解できた。似たような絵はそれ以降あちらこちらの美術館でみたけど、オリジナルのモンドリアンの絵を超えているものはなかった。ポロックがそうであるように。
そのモンドリアン、発表当時は世間からはまったく無視され、困窮にあえいでいたという。そこに手を差し伸べたのがヘレーネ・クレラー=ミュラー夫人だったという。彼女には彼の絵の革新性がよく分かっていたのだ。だから、今回の展覧会も「モンドリアンの部屋」があるようである。
そういえば、オランダには最高傑作の絵画を生み出す文化的な土壌/背景がある。ファン・ダイク父子、フェルメール、レンブラント然り。そしてゴッホにモンドリアンと、どの人も世界絵画史のトップに来る画家ばかりである。
今回の展覧会、今年8月に「アメリカン・ポップアート展」をみた国立新美術館でのものなので出かけたいけど、1月の浅草歌舞伎、花形歌舞伎まで東京に行く予定はないので、愛知展(2月25日から4月6日)まで待たなければならないだろう。