yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

フジテレビ『鬼平犯科帳スペシャル 泥鰌の和助始末』@1月4日

昨年末に知って以来、楽しみにしていた。ただ、この「泥鰌の和助」は第一シリーズにも入っていたもので、その時和助を演じたのは財津一郎だった。財津一郎はこれ以外にも第三シリーズに他の役柄で入っている。今回の新シリーズで和助を演じた石橋蓮司は、第一シリーズの「蛇の平十郎」では平十郎というおそろしい盗賊親分を演じて秀逸だった。今回の「泥鰌の和助」では和助といういわば「盗賊親方の鑑」のような役どころになっていた。なにしろ第一シリーズから第五シリーズまでのDVDをアマゾンで買ってしまい、全部見終えているので、このシリーズとはすっかりなじみ(?)になっている。このシリーズ好みの役者が当然何度も登場するのは、納得できるのだ。一癖ある、いわゆる演技達者の人をそろえている。原作を変えるのを良しとしなかった池波の意向をくみ、役者にもそれ相応に演じられる力のある人を選んでいるので、見応えがある。歌舞伎、新国劇、新派といったいわゆるオールドスクールに属する役者はいうにおよばず、新劇でも芸達者のみを引き抜いている。それが「鬼平シリーズ」をあれほどまでに長く続けさせた所以だろう。

以前にも書いたが、それ以上に脚本、演出に池波の息のかかった人たちをそろえ、彼らが意気に燃えて全力を出しているのがよく分かる。第一シリーズが放映されたのが1989年から1991年にかけてなので、実に20年以上が経過している。いっとう直近が第九シリーズの2001年ということらしいので、それからもすでに10年以上経っていることになる。

以前のシリーズでの常連役者は以下である。Wikiから拝借した。

与力
• 佐嶋忠介:高橋悦史(第1シリーズ〜第6シリーズ、以後代役なし)
• 天野甚造:御木本伸介(第1シリーズ〜第6シリーズ、以後代役なし/萬屋版でも同じ役を務めている)
同心
• 酒井祐助:篠田三郎(第1シリーズ)→柴俊夫(第2シリーズ)→勝野洋(第3シリーズ以降)
• 木村忠吾:尾美としのり
• 沢田小平次:真田健一郎(第1シリーズ〜スペシャル版 『引き込み女』、以後代役なし)
• 村松忠之進:沼田爆
• 小柳安五郎:香川照之(第1〜2シリーズ)→谷口高史(スペシャル版 『雨引の文五郎』以降)
• 小野十蔵:柄本明(第1シリーズのみ/『蛇の眼』『血頭の丹兵衛』『むっつり十蔵』に出演)
• 松永弥四郎:宮川不二夫(不破三四郎→不破龍彦と改名)
• 山田市太郎:小野田真之(三ツ矢真之→辻政宏と改名)
• 竹内孫四郎:中村吉三郎
• 山崎国之進:中村吉次(現・中村吉五郎) 
• 原田一之進:木村栄(第5シリーズ〜)
• 同心:中村吉弥
• 同心:中村吉六
密偵
• 相模の彦十:三代目江戸家猫八
• おまさ:梶芽衣子
• 小房の粂八:蟹江敬三
• 伊三次:三浦浩一
• 大滝の五郎蔵:綿引勝彦
親族
• 長谷川久栄(平蔵の妻):多岐川裕美
知人ほか
• 五鉄の亭主・三次郎:藤巻潤
• おとき:江戸家まねき猫

今回もおなじみの与力、同心、そして密偵たちが顔をそろえていたのがうれしい。ただし、何人もの重要な役者さんたちがすでに鬼籍に入っている。高橋悦史、御木本伸介、江戸家猫八(先代)といったなくてはならない人たちである。そして、昨日見終わってから「あれっ」と思って確認したのが池波の信任が厚かった新国劇の真田健一郎のことだった。やはり亡くなっていた。2008年だった。ほんとうに残念。

おまさ、粂八、伊左次、大滝の五郎蔵、そして五鉄の亭主もそのままに再現(再演)である。平蔵の妻役の多岐川裕美が(美しさも)そのままなのも、うれしい。同心役も真田以外はほぼそのまま、特にお茶目なうさ忠こと木村忠吾役の尾美としのりと料理好きの原作にはない村松忠之進役の沼田爆がそのままだったのはうれしかった。新たに、小林金弥役で三代目中村歌昇(現・三代目中村又五郎)(第7シリーズ〜)入っていた。

このおなじみさんたち、どの人も大が三つも四つもつくほどの「贔屓」なのだが、なかでも猫八さんと綿引勝彦にはいつも舌を巻いていた。二人ともまったく違ったタイプで、猫八は天性の役者、それもちゃきちゃきの江戸っ子という感じ。それに対して綿引勝彦は江戸っ子でも知性派である。

そしてなによりも!誰よりも!吉右衛門である。いささか齢を重ねた感はあるが、それでもまさにはまり役。第一シリーズでの鬼平が被ってくる。先日東京遠征をした折に国立劇場で『鬼一法眼』を彼の主役でみたけれど、どちらかというとこの鬼平の方が彼のニンに合っているのでは。なんて、勝手なことを考えながら観ていた。

以前のシリーズより画質も格段に良くなっている。また撮影の仕方、特に照明はさすが松竹撮影所自体の技術が上がったこととテクノロジーの進歩により以前のものよりもレベルが上がっている。とくに町の風情、討ち入りの場の構成等、すばらしかった。一つ難点は長過ぎたこと。もとのシリーズのように1時間以内に収めた方が劇自体としてはるかにインパクトがあったと思う。

以下がネットに出てきた読売の記事である。

中村吉右衛門主演の人気時代劇シリーズの新作「鬼平犯科帳スペシャル 泥鰌の和助始末」が年明け1月4日午後9時からフジテレビで放送される。
 「鬼平犯科帳」は、江戸時代後期、盗賊たちから「鬼の平蔵」と恐れられた長谷川平蔵を描く池波正太郎の人気小説を原作にしたドラマ。1989年から連続ドラマが始まり、2005年からはスペシャルドラマが放送されてきた。今回の放送は、11年9月以来となる。
 新作は、盗賊の惣七(寺島進)に、盗みの計画を持ちかけた大工の和助(石橋蓮司)と平蔵(中村)との30年前の物語を軸に、人情味あふれる人間模様をつづる。第1シリーズでもドラマ化された作品。